NISAはISAの日本版

NISAは、イギリスのISAの日本版として創設されました。但し全く同じものではありません。共通点としては、株式や投資信託が購入対象であることや、配当・分配金・譲渡益が非課税であることなどです。一方、ISAでは預貯金や公社債も購入出来ますがNISAではできません。また、ISAには運用期限が無いこともNISAとは異なります。ISAはイギリス国内に居住している人であれば国籍に関係なく誰でも口座が開けます。そのため、利用者も多く、イギリスの金融市場では20兆円以上を動かしていると言われています。
またISAの利用層も広く、利用者の半数以上は年収2万ポンド未満(約300万円未満)と言われており、少ない資産でも運用できるという利点が既に広く支持されていると言えます。日本でこのISAをアレンジして導入しようというきっかけになったのは、2013年末に証券優遇税制が終了したためです。但し期間が平成26年1月1日から平成35年12月31日とされており、投資額も年間100万円が上限とされています。NISAを導入した目的は国民が預貯金やタンス預金として保有しているマネーを、リスクマネー市場で活用させることで市場の活性化と企業活動の活性化を期待することにあります。しかし参考にしたイギリスのISAに比べると、NISAにはいくつかの問題点が指摘できます。それらについて見ていきましょう。

①対象商品の違い

日本のNISAはイギリスのISAに対して対象商品が少なく、上場株式、公募株式投資信託、上場投信(ETF)、上場不動産投信(REIT)、新株予約権付社債が対象となります。一方、イギリスのISAには株式型ISAと預金型ISAがあり、前者には株式、公社債、投資信託、保険などが含まれ、後者には預金・MMFなどが含まれます。特にイギリスでは預金型が人気です。しかし日本では預金の金利が低すぎるため導入の意味がないと考えられています。ATMの手数料で消えてしまうような金利を非課税にしてもインパクトがないためです。また、イギリスでは株式型ISAと預金型ISAの2口座を持つことが可能です。ちなみにイギリスの居住者であれば、株式型ISAは18歳以上、預金型ISAは16歳以上から口座を開設することが可能です。

②投資限度額の違い

日本のNISAもイギリスのISAも投資金額に限度が設けられています。これは個人向けに用意された少額投資の非課税制度だからです。しかし日本のNISAが年間の購入額に100万円の限度を設けているのに対し、イギリスのISAでは株式型と預金型の口座への拠出額の合計を年間で11,520ポンド(2013-2014課税年度)の限度としています。ISAの限度額は拠出額であり、例えば株式型で購入した商品の売却代金は、株式型口座内で他の商品を購入する代金として利用する事が可能です。その理屈は、売買で得た代金は、新たに資金として拠出したわけではない、ということになるからです。ところが日本のNISAでは、株式などを売却して得た代金はNISA口座の外、例えば証券総合口座などに払い出されます。従って、その代金を利用してNISAで株式などを購入すると、購入額の合計にカウントされてしまいますので、注意しなければすぐに年間の100万円限度額を満たしてしまいます。

ところでイギリスのISAの限度枠は11,520ポンドと中途半端な数字に設定されているように見えますが、これは12で割り切れる数字にするためです。というのも、ISAでは積立投資として毎月一定の金額を購入していくシステムも用意されているためです。また年間拠出額はその年の消費者物価指数(CPI)に連動されていますので変動します。ちなみにこのところインフレ傾向にあるイギリスの限度額は年々上昇傾向にあります。

③運用期間の違い

日本のNISAの非課税期間は5年です。但し非課税終了時に保有している株式や投資信託を翌年分のNISA口座にロールオーバーすることができます。ただ、注意が必要なのは、ロールオーバーした株式や投資信託はロールーバーした先のNISA口座では購入額にカウントされることです。さらに忘れてはならないのは、現行法においてはNISAで株式などを購入できるのは2023年末までで、運用できるのは2027年末までであるということです。一方、イギリスの株式型ISAには運用機関の制限が無く恒久化されています。さらに異なる金融機関への口座移管も可能であるため、金融機関も口座獲得のため、常にキャンペーンに熱心でいる、という状況があります。

④配当や分配を再投資できるかどうか

NISAもISAも、それぞれの口座で保有している株式の配当金や投資信託の分配金に税金が掛からないことは同様です。ところが、それらの配当金や分配金を再投資できるかどうかが異なってきます。NISAの場合は、NISA口座で保有している株式や投資信託の配当金や分配金は、NISA口座以外の証券総合口座などに振り込まれます。そのため、これらの配当金や分配金を再投資しようとすると、NISAの購入額として加算されてしまうのです。分配金再投資型の投資信託も同様です。確かに自動的に投資信託の買い付け代金に使われますが、これも一端はNISA口座以外の口座に支払われますので、やはり購入額に加算されてしまうのです。

一方、イギリスの株式型ISAの場合は、ISA口座で保有している株式や投資信託の配当金や分配金は、ISA口座内の現預金とされるため、これらを使って新たに株式や投資信託を購入しても、これは新たに拠出したとは見なされません。すなわち、拠出限度額には含まれないのです。この考え方の違いは、日本のNISAを不自由なものにしていると言えるでしょう。

NISAもISAの様に進化する可能性あり

以上の様に、日本のNISAはイギリスのISAに倣って導入された制度ですが、まだまだ使い勝手が悪い部分があります。とはいえ、イギリスのISAは1999年に導入され、長い年月をかけて進化してきた制度です。運用期限が恒久化されたのも、導入後7年を経てからで、導入当初は10年間の時限措置でした。このことを考えると、日本のNISAも、まだまだこれから進化していく可能性がありますし、期限も延長もしくは恒久化される可能性があるといえるでしょう。

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