不動産業界は、一般的に、プロとそれ以外との情報格差が大きい業界と言われている。その一因として、相場観を掴むのが難しいということが挙げられる。例えば、株式であれば、売買手数料に差はあるが、ある特定の銘柄の株価は日本どこでも同じだ。
しかし不動産の場合は、地域、広さ、築年数など色々な要因によって価値が大きく異なる。同じ物件であっても、不動産に対して思い入れ等があると不動産の価格が大きく乖離する可能性がある。
そこで、今まで、不動産の相場観は、積み上げられたキャリアによって形成される暗黙知のようなスキルと見なされていたが、それをテクノロジーによって捉えようという動きがある。
その代表的な取組みは、ビッグデータ・人工知能(AI)を使い不動産価格を査定しようというものだ。
今回はビッグデータやAIがどのように不動産業界で活用され始めているかを紹介する。
ビッグデータとは
ビッグデータとは、一般的な定義が存在するわけではないが、文字通り考えると「非常に大きなデータ」となり、ビッグデータビジネスについてはデータ処理技術の進歩に伴い可能になった、「非常に大きなデータを用いてある問題の解決や、業務の付加価値向上、もしくは業務を支援する事業」と考えられる。
例えば、あるパソコンメーカーでは、コールセンターに寄せられるお客様の声を収集し分析、それによって現在商品にどんな問題が発生しているのか。また、これからどんな問題が商品に起こりうるのかを予想している。
多様かつ膨大な情報を利用することにより、物事の動きを予測したり、仕組みを分析したりすることができるわけだ。活用されている範囲は、市場分析や自動運転、インフラ整備など幅広い。統計学や情報処理などの科学技術を集めた人類の叡智といえよう。
ビッグデータの活用をさらに推進する存在がAIだ。Artificial Intelligenceの略で、日本では人工知能と呼ばれる。人間のような知覚や判断力を備えたロボットといった意味で使われることが多い。
金融商品を中心とした資産運用では、あらかじめ設定した条件どおりに自動取引を行うAI運用が実用化されている。金融とテクノロジーを組み合わせた「FinTech(フィンテック)」という言葉も浸透してきた。そして近年、不動産業界で頭角をあらわしているのが、ビッグデータとAIを使った不動産価格の分析サービスだ。
ビックデータとAIを使った不動産査定
不動産価格は、相場観等はあるが、最終的な売買価格は買い主と売り主の2者間で決まるので、事前に完璧に予想するのは難しい。
とはいえ、ひとつふたつの売買事例を見ても、その地域、その広さ、建物付きの場合はその築年数、などの適正な相場価格なのかは判断できない。無数のデータを考慮しなければ、参考にすべき案件なのかどうかが分からないわけだ。そこで力を発揮するのがビッグデータとAIである。
過去の様々な売買取引データ(ビッグデータ)をAIが学習していき、参考価格を表示したり、不動産投資のシミュレーションを行ったりするサービスは2015年ごろから次々に生まれている。地図上に参考価格を表示するもの、経年劣化や空室率などを含めた投資利回りを計算するもの、売却査定と賃料査定をリアルタイムでできるもの、さまざまなものがある。
このように最新テクノロジーを用いた不動産サービスは「不動産テック(Real Estate Tech)」と呼ばれている。
これからの不動産投資にはテクロジーの利用が欠かせない
不動産の価値をビックデータから見積もるためには、大量のデータと高性能のコンピュータを用いた分析が必要となる。そういった不動産価格の査定を行う、不動産テックサービスは、近年続々と登場している。既に不動産投資を行っている人も、これから不動産投資を始める人も、積極的に活用していきたいところだ。 (提供: みんなの投資online )
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