部下が育たないのは上司の声がけに問題あり
「なんでこんなこともわからないんだ!」
……部下に対してつい言ってしまいがちなこんなセリフ。だが、ここでイライラしたところで、部下が育つわけではない。
では、どうすればいいのか。
自ら考え、動く部下を育てるには「質問」が有効だと語るのは、営業マン育成などを手がけ、『
仕事を円滑に進めるには、まず上司が部下に質問しなさい
』などの著書もある青木毅氏。その「質問のコツ」をうかがった。
部下の相談に「最悪の対応」をしていませんか?
「あ~、わかった。じゃあ、こうしておいて!」
「えっ? なんで、こんな簡単なことがわからないの?」
「まあ、大変だけどやるしかない! 必ず結果は出る!」
上司であるあなたは、部下との会話のなかで、このような言葉を発していないでしょうか?
部下からの仕事の相談に対して、丁寧に答えることなく、一方的に指示を出す。部下をバカにしたような言葉を発して、経験に基づく考えを押しつける。あるいは、相談してきた部下を精神論だけでただただ励ます……。
仕事をうまく進められず相談を持ちかけた部下にとって、上司からこのような言葉を返されては、気持ちがゲンナリするばかり。当然、モチベーションも上がらず、結果を出すこともできません。
「コイツはダメだ」と嘆いたところで、部下は育たない
より具体的には、こんな会話になっていないでしょうか?
上司「今週はどうだった?」
部下「はい。目標の5件中、結果は3件です」
上司「なるほどね、何で2件決まらなかったの?」
部下「はい。先方も忙しくて時間をあまり取ってもらえず、詳しい案内ができなかったんです」
上司「なるほど。それで?」
部下「決まってはいないのですが、検討はしてくれるということです」
上司「そうか。検討するっていうのは弱いな。わかってるか?」
部下「あ……はい……」
上司「なぜ、そう言われるかわかるか?」
部下「いえ……」
上司「検討すると言われたときの対処を準備していなかったからだよ。前も言っただろ」
部下「あ……はい。すいません……」
上司の役割は、ズバリ、部下の育成にあります。「目標を達成し続けることにコミットし、そのための手段や方法を考え続ける部下」を育てていかなければいけません。「こいつはダメだな……」などと嘆いていても仕方ないのです。「仕事のできない部下だ」と感じるのは、上司であるあなたの責任だからです。
質問のコツは「興味や好意を持つこと」
部下自ら考え、動ける社員にする。そのために必要なのは、上司から部下への質問です。そこで求められるのが、上司の質問力です。
「現状を詳しく教えてくれるかな?」
「君はどうしたらいいと思う?」
「なぜ、そう思うの?」
このように、まずは部下に興味や好意を持ち、それを示す質問をしてみましょう。
そして質問を積み重ねることで、部下の現状や欲求、課題を浮き彫りにしていくのです。
部下の考えていることに共感したうえで質問し、アドバイスを与えていけば、部下は深く納得してくれます。上司からの質問によって、部下は自分なりの思いや考えを吐き出し、気持ちが整理されていくからです。
そして具体的な解決策までを共有し、部下自身が行動していくように促すのです。
これが「質問型コミュニケーション」だ
このような質問を中心にした会話法を「質問型コミュニケーション」といいます。
上司「今週はどうだった?」
部下「はい目標の5件中、結果は3件です。」
上司「なるほどね。決まった3件はどんな感じだったの?」
部下「はい、●●という理由で決まりました」
上司「いいね。何がよかったんだと思う?」
部下「はい、お客様の課題をしっかり聞けたのがよかったと思います」
上司「なるほど。それは大切だよね!素晴らしい!ぜひ、そのまま継続してくれよ」
部下「はい、わかりました!」
上司「じゃあ決まらなかった2件はどんな感じだったの?」
部下「はい、先方も忙しくて時間をあまり取ってもらえず、案内が詳しくできませんでした」
上司「なるほど。それで?」
部下「はい、決まってはいないのですが検討はしてくれるということです」
上司「なるほど。じゃあ今後この2件はどうしたい?」
部下「はい、ぜひ契約していただきたいです」
上司「そうだよな。じゃあ、そのためにどうすればいいと思う?」
部下「それが……また忙しいから時間がないと言われないか心配で……」
上司「そうだよな。じゃどうすればいい?」
部下「そうですね……」
上司(※部下が答えを導き出すまで待つ)
部下「そうか!やっぱり、忙しいと言われたときの対処を準備していなかったからかな~と思います」
上司「なるほどね。確かにそれはそうだよね。やっぱり事前準備って大切だよね。じゃあ、どう準備すればいいと思う?」
部下「そうなんですね。それが……あまりいい方法が思い浮かばないんです……」
上司「そうか、じゃあいい方法があったらどうだ?」
部下「知りたいです! ぜひ教えてください」
上司「それはね。●×●×ということなんだよ」
部下「なるほど。ありがとうございます!」
上司は部下の「サポーター」であることを忘れない
このOK事例のように、上司の価値とは、部下が目標を達成し続けるために、常に気づきを与える存在であることにあります。部下の達成のサポートと言い換えてもよいでしょう。
部下によっては、問題や課題そのものに気づけていない人がいるかもしれません。上司であるあなたと比較すれば、キャリアもスキルも足りないのですから、仕方のないことです。だからこそ、質問を重ねて、部下が気づけていない、導き出せていない問題点に到達させなければいけないのです。
部下の育成=上司の質問。“目標を達成し続けることにコミットし、そのための手段や方法を考え続ける部下”を育てるには、質問こそがすべてなのです。
青木 毅(あおき・たけし)質問型コミュニケーション協会代表理事
(株)リアライズ代表取締役。一般社団法人質問型コミュニケーション協会代表理事。
飲食業・サービス業・不動産業を経験後、米国人材教育会社代理店に入社。セールスマン1000名以上の中で、5年間の累計業績1位の実績を上げる。1997年にリーダーシップ部門代理店へ移籍。98年には個人・代理店実績全国第1位となり、世界大会で世界大賞を受賞する。2002年に独立し、(株)リアライズ(本社: 京都府)を設立。企業経営者・幹部・個人に対する人材育成・能力開発・コーチングなどのコンサルティング・研修・講演などを行う。08年、質問型コミュニケーション(コーチング)を開発し、大阪府職員、大阪府警の要請を受けスタート。さらに08年、自身の営業ノウハウの質問型営業を開発。質問型営業のコンサルティングでは3カ月で実績を確実に上げるということで評判を得ている。15年、一般社団法人質問型コミュニケーション協会を設立。社内・一般向けに質問型コミュニケーションの普及をスタート。主な著書に『「3つの言葉」だけで売上が伸びる質問型営業』『3か月でトップセールスになる 質問型営業最強フレーズ50』(どちらもダイヤモンド社)、近著に『図解 新人の「質問型営業」』(同文舘出版)がある。(『
The 21 online
』2017年05月02日 公開)
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