ソフトバンクの孫正義社長がIT分野のベンチャー企業などに投資する10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を設立したと正式に発表した。最大出資者となるサウジアラビアの公共投資ファンド(PIF)との最終調整後、リヤドで発表した。

出資したのは日本、サウジアラビアのほか米国、台湾、アラブ首長国連邦など国際的で、ファンドへの出資は930億ドル(約10兆4000億ドル)余り。今後6カ月で1000億ドル(約11兆1000億円)規模に引き上げる。

1億ドル超をAI、IoTなど先端技術開発に投資

ファンドは、孫社長が昨年10月PIFとの交渉で設立に合意し、11月にトランプ米大統領との会談500億ドルを投資して米国で5万人の雇用を創出すると約束して1歩踏み出した。今回の正式発表で、成長が期待される人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)など、最先端技術への投資額では世界最大規模となる。

出資を約束した企業は、PIFが450億ドル、ソフトバンクが280億のほか、アブダビ系ファンドのムバダラ開発公社が150億、Apple、クアルコムがそれぞれ10億ドル、富豪のオラクル創業者ラリー・エリソン氏10億ドル、鴻海(ホンハイ)精密工業と傘下のシャープがそれぞれ10億ドルなど。

ファンドの拠点は英領ジャージー島に置き、1億ドル超の投資は同ファンドを通じて行うという。ソフトバンクの戦略金融部門トップでウォール街出身者のラジーブ・ミスラ氏が運用責任者となる。

孫社長は「すでに30社近く出資予定」というように、すでにインドの決済ベンチャーであるペイ(TM)や米衛星通信ワンウェブなどへの出資が計画されている。

サウジとのファンド創設交渉は難航

孫社長はAI、ロボット、バイオ技術といった変化の速い分野への早期投資に意欲をにじませていた。サウジアラビアは石油依存脱却を最優先して、両社提携によるファンド創設交渉は必ずしも順調ではなかった(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。

投資支出の決定についてPIFは拒否権を要求、これが最後までネックとなった。最終的に双方が歩み寄り、ソフトバンクが一定の規模の出資案件に関してサウジ側の拒否権を認めることで決着した。

ソフトバンクグループは、2017年3月期(前期)決算で過去最高となる1兆4263億円と、アナリスト予測を上回る連結純利益を計上した。投資回収益は7600億円に上るように、大きな原動力は投資である。今後は「ビジョン・ファンド」を通じて、収益拡大を目指すとブルームバーグは報じている。

孫社長はソフトバンクの目指すものについて、「今後、ソフトバンクの100億円以上の新規投資は原則ビジョン・ファンド経由になる」などと語っている。(長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)

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