気がついたときは、時すでに遅いことも。現役時代にたくさんの収入を得ていた人が、なぜか老後になって「お金の苦労」をしているケースが散見される。自分の思い描いていた老後とかけ離れてしまったことが原因だが、そうならないように気をつけるポイントを紹介しよう。
2つのアクシデントで資産残高が「一気に減った」Aさんの事例
思いもよらぬアクシデントから、徐々に坂を転がり落ちてしまうように「お金の不安」にたどり着いてしまったAさんの事例を紹介しよう。
大手企業に勤めていたAさんは毎日忙しく過ごしていた。仕事は営業職で、バブル期の会社員だったため、収入も確実に増えていた。夜の接待も盛んな時期であり、いわば「一日中仕事漬け」の毎日だった。
順調に会社員としてキャリアを積んでいたAさんだが、バブル崩壊後の景気低迷も経験し、収入の上昇幅も抑えられるようになり、数年たった55歳のころに第一のアクシデントが発生した。三大疾病の一つ「がん」に罹患してしまったのだ。
幸いにもステージが進んでいなかったが、定年間近ということもあり、早期退職の決断をした。そして60歳を迎えるころ、更なるアクシデントが発生する。それは「父親の死亡と、それに伴う債務の相続」である。
当時のAさんには「相続放棄」という知識がなくて、父親のプラスの財産に気をとられてしまい、ついつい債務も相続してしまったのだ。
その2つのアクシデントにより、お金に困るようになるAさんだが、その困りごとを誰にも相談することもできずにいた。仕事をバリバリしてきたプライドから、自分に訪れたお金の不安に、面と向き合えなかったのである。
1つ目のポイントは「健康維持」
Aさんが大きく躓くきっかけとなったのは、やはり健康面でのアクシデントだ。ありがちなのは、健康診断で「要経過観察」とされても、本人が全く気にせずにいたら、ある日大きな病にかかってしまうケースだ。忙しすぎて病院に行けないという仕事熱心な人は、やはり体のことを気にしておく癖をつけて欲しい。
それとさらに気を付けて欲しいのが、高額療養費制度での自己負担額のことである。高額療養費制度とは、ある月に自己負担した医療費が一定以上の場合、申請によって自己負担限度額が一定以下に抑えられるという制度である。
ただ、高額療養費制度の自己負担額も「高所得の人は低所得の人よりも多く負担する」ようになっており、同じような治療を受けても、収入が多いと、自己負担する額も増えてしまう。
この制度を活用できたとしても、毎月数万円の治療費がかかると、その負担は決して軽いものではないのである。
さらに丁度そんな時期に、例えば大学進学費のような、ライフプラン上で大きなお金が必要になっていたとしたら、病気の治療費のことだけに気を取られてもいられない。
いつ病気になるかわからないから気にしないとか、大きな病気になるのは運が悪いんだ、という意見もあるが、やはり、健康を極端に害さないことが下流老人を防ぐ条件であることは間違いない。
2つ目のポイントは「お金の知識」
このAさんが困窮してしまった2番目の原因は「お金の知識が少なかった」という点にある。相続放棄という制度を知らなかったのは悔いても悔やみきれないと本人が言っていたことからもわかる。
また、家計管理にも課題があると言えるだろう。バブル期を経験した世帯にありがちなのが、一度慣れてしまった生活水準を落とすことに抵抗感があるという点だ。世帯の場合は、稼ぎ手の収入が少しずつ減っていったとしても、その変化に合わせた生活費に意識的に変えるのは、やはり難しいと言える。なぜなら、生活(費)とはまさに生活習慣に基づくもので、外食が多い世帯が急に「家ご飯」中心にはできないからだ。
お金の常識(リテラシー)を、収入が多いか少ないかに関わらず、なるべく早いうちに身に着けておくことで、あなたが下流老人化しそうな時の、一定の歯止めになるのではないかと思うのである。
3つ目のポイントは「人との繋がり」
色んな事情で自分にピンチが訪れたときに、相談できる相手が多いか、少ないかは非常に重要である。相談窓口(相手)を多く持つことで、多様なアドバイスを得ることができる可能性が高まる。そんな多様な情報が、あなたを再び上級老後への道に連れ戻すきっかけになるかもしれないからだ。
石川智(いしかわ さとし)
ファイナンシャル・プランナー 終活アドバイザー
オフィス石川代表。1966年高知県生まれ。トヨタ系ディーラー、外資系保険会社の営業職を経て、2010年ファイナンシャル・プランナーとして独立起業した。一般消費者向けの相談業務だけでなく、「障害者とお金」「高齢者とお金」「終活」をテーマに広く講演活動を行っている。ライフワークとして「地域福祉とライフプランニング」に取り組んでいる。
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