まずはメールチェックの時間を決めよう

メリハリ,時短仕事術
(写真=The 21 online)

日々の仕事を進めるうえで大事なのが、段取りや優先順位のつけ方など「時間」に関する習慣だ。自分の仕事をスムーズに進めるだけでなく、チームの生産性を上げることも求められる。業務効率化のプロである藤井美保代氏にアドバイスをいただいた。

「やること」より「やらないこと」を決める

仕事が速い人と遅い人の差は、ちょっとした習慣に表われます。では、できる人はどういった習慣を持っているのでしょうか。

第一に、「やらないことを決めている」のが大きな特徴です。人に任せても良い仕事を自ら抱え込んだり、重要性・必然性のない仕事を慣例だからと漫然と続けたりするのはやめましょう。

「やらなくていいこと」は、日々の業務のあらゆるところに潜んでいます。たとえば、慣例として続けている定例会議は必要なのかどうか、またそうした社内会議のための資料を人数分用意することが必要なのかどうか。そうした点に常時目を光らせて、ムダを見つけたら「なくす→へらす→かえる」の優先順位で、絶えず効率化を繰り返す「カイゼン」の視点が不可欠です。

第二に重要なのは、生産性が上がるタイミングを押さえることです。たとえば一日の間では、午前中に効率が上がる、と言われています。企画書づくりや資料分析等の「ナレッジワーク」は午前中に充て、午後はルーティンワークに充てる、といった工夫をすると、進みが格段に速くなります。

一方、朝一番に何をするかという点も重要です。スタートダッシュとして滑り出しを良くすることも必要ですから、いきなりハードルが高い仕事をするのも考え物。素早くできることや得意なことを最初に行なって勢いをつけてから、ナレッジワークに移ると良いでしょう。

必要なモノが「6秒以内」に出せる机に

その後の業務を進める際にもコツがあります。できる人のキーワードは「同質化」。複数のタスクを同時並行的に進めるより、一つひとつの仕事に集中するほうが生産性は上がります。

そこでお勧めしたいのが、メールを見る回数を限定すること。返信に追われたり、その都度発生する用事に対応したりしていると、業務が細切れになり、集中力も途切れます。いったん途切れた集中力は、取り戻すのに15~20分かかると言われます。メールチェックは「朝・午後1時・夕方」など、1日3回程度に決めておくと良いでしょう。

できる人は、休憩も大事にしています。集中すべきときは集中、力を抜くべきときに抜く、といったメリハリをつけているのです。休む間も惜しんで、デスクで昼食を摂りながら作業を続ける人がよくいますが、これでは午後の余力を失ってしまいます。

上手な休憩の秘訣は、「脱マンネリ」。席を立って洗面所に行くなら、ときには別のフロアに行ってみる。ランチに行くなら毎日同じ人とではなく、別の部署の誰かを誘ってみる。このように場所や人を変えると、脳が触発されます。

スキマ時間を上手に使えるか否かも、差がつくポイントです。ここで役に立つのは、スキマ時間専用のタスクを用意する習慣です。「5分かかる仕事」「10分かかる仕事」「15分かかる仕事」と3種類ほど用意して付箋に書き、目につくところに貼っておけば、「電話の折り返し待ち」などの突然のスキマ時間もムダにせずに済みます。

加えて、普段からクセにしておきたいのがデスクの整頓。書類にせよ文房具にせよ、使いたいものは「6秒以内」に出せるようにしておくのが鉄則です。動線を考えて、デスクの上に適切に道具を配置し、引き出しの中にしまうものも定位置を決めましょう。

パソコンのデスクトップの整理整頓も、デスクと同じです。画面上に仮置きしたフォルダがいくつも出ている状態は望ましくありません。フォルダは「進行中」と「保存」の二つなどに留め、一括管理するのが理想です。

「チームの時短」は管理職の義務!

こうして自分の業務を効率化すれば、チームのマネジメントに回す時間ができます。その際も、「部署全体の時短」を図るための習慣を作ることが大切です。

今どきの中間管理職は、自らの業務を担当しつつ、チームマネジメントも行なう「プレイングマネジャー」が多数を占めています。いちプレイヤーならば自分の業務のことだけを考えれば十分ですが、プレイングマネジャーは部下育成やチームビルディングにも時間を割かなくてはなりません。自分の業務とチームの仕事、双方にきちんと手をかけられてこそ「できる人」と言えるのです。

部下からの報告や相談で業務が細切れになりがちな場合は、定期的に「報連相タイム」を設けましょう。アポも会議も入れず情報共有に徹する時間を持つことで、進捗状況を俯瞰的に見られますし、一人のメンバーがひそかに業務を抱え込む「タコツボ化」も防げます。

各人の業務のムラをなくすには「持ち回り制」が有効。たとえば、電話を取る役目を一時間ごとの交替制にすれば、一人は電話に、他のメンバーは仕事に集中できて合理的です。

逆に、「集中タイム」を交替制にするのも良い方法です。電話も取り次がず、相談ごとも持ち掛けない時間を一人一時間ずつ持たせることで、各人の「細切れ」を予防できます。

管理職の仕事には、「自分がGOを出さないと進まない場面」が多々あるものです。そこは優先順位を上げて素早く判断・指示しましょう。それがチーム全体のスピーディな業務遂行へとつながります。

「判断に時間がかかる」悩みはこれで解決!

この「判断」は、管理職の重要な仕事です。ここで迷いやブレのない迅速な対応をするためには、自らの判断基準をきちんと持っておくことが必要です。

判断基準には、「正解」があるわけではありません。新規顧客と長年のロイヤルカスタマーから「今すぐ対応してほしい」と同時に言われたときどちらを優先するか、「ウチの会社だけ異例対応を認めてほしい」と顧客が要望したらどうするのか、などはその典型ですが、答えは会社の方針や業務内容によって違ってくるでしょう。

リーダーはその背景を理解した上で、組織としての価値観、つまり仕事に携わる上での「これははずさない」という基準を明確に持つべきです。そして、それに基づく判断基準をチームに周知させることも忘れてはいけません。「うちのチームはこれを第一に考える」という指針があれば、メンバーが優先順位に迷って業務を停滞させる事態を防げます。

思いつきで進めるのではなく、確固たる軸や信念を持って臨むことは、仕事の精度アップ、成果物のクオリティ向上にもつながる、最重要の基盤なのです。

藤井美保代(ふじい・みほよ)〔株〕ビジネスプラスサポート代表取締役
大学卒業後、ソニー関連の人材育成会社で組織活性化の研修業務に従事したのち、2002年に独立し現職。業務の効率化と人材開発に向け、研修・コンサルティングを行ない、3大総研ほか各種企業、省庁、大学等1,000以上の組織への指導実績を持つ。近著『早く帰りたい!仕事術』『ミスゼロ仕事術』(以上、日本能率協会マネジメントセンター)など、著書多数。(取材・構成:林加愛)(『 The 21 online 』2017年5月号より)

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