「何でも書く」ことで手帳・メモは最強ツールに
手帳に何を書くか、またメモをどう書くかという習慣には、個人差がある。しかし、これらのビジネスツールの使い方こそ、仕事効率化やアイデア創出に大きく関わってくる。できる人は、どのような手帳の習慣、メモの習慣を持っているのだろうか。
なぜ、できる人ほど大判の手帳を持つのか?
これまで、私はさまざまなビジネスパーソンの手帳やメモを研究してきました。それでわかった、仕事ができる人とできない人の手帳・メモの使い方の違いをお伝えしましょう。
まず、できる人に共通しているのは、1冊の手帳に、あらゆる情報を一元化する習慣をもっていること。スケジュールや打ち合わせの記録はもちろん、新聞記事などのメモやちょっとした思いつきなど、すべてを一冊に書いています。
そうすれば、「あのメモは、どこに書いたかな?」とわからなくなることがなくなり、探す時間のムダもなくなるわけです。
なんでも書くので、手帳のサイズは自然と大きくなります。私が見る限り、仕事ができる人は、A5やB5サイズの手帳を使っている人が多いと感じます。
「気が利く人」は上司や顧客の予定まで書く
スケジュール欄の書き込みを見ても、できる人とできない人では大きな違いがあります。
できる人の多くに共通するのは、かなり細かく書き込みをしていることです。たとえば、作業予定だけを書くのではなく、何分で終わらせるか、予定時間まで書いています。こうすることで、「何分で終わらせる」という意識が働き、ダラダラ仕事をしなくなります。
「◯◯さんにメールする」「手土産を買う」といった、小さなTODOを予定欄に書いていることも、よく見られます。小さなTODOといっても、頭の中で記憶していると、つい気になって、目の前の仕事に集中できなくなるものです。しかし、書き込んでしまえば、記憶する必要がなくなるので、大事なことに意識を集中できるのです。
もう一つ特徴的なのは、「他人の予定を書いていること」です。どの職種の人にも共通するのは、上司の予定を書くこと。上司の確認が取れないために仕事が滞ることはよくありますが、上司の予定を意識していれば、それが防げます。
営業マンの場合は、取引先の繁忙期や、「5月になったら社内で話がまとまると思う」などという何気ないひと言なども書いています。そうすることで、適切なタイミングでアプローチができるからです。私も実践したところ、「機を見るに敏だね」と褒められたことがあります。単に手帳に書いておくだけで、できる人と見られるわけです。
5W1Hで打ち合わせ内容をメモ
メモの書き方にも、できる人とできない人とでは大きな違いがあります。
まずは、打ち合わせのメモ。聞いた順に時系列で書いている人は多いと思いますが、話の流れがあちこちに飛ぶ人が相手だと、メモを見ても何がなんだかよくわからなくなります。
そうならないよう、できる人は、後で見たときに思い出せるような書き方をしています。
私も実践しているのですが、お勧めは「5W1H」でメモすることです。5W1Hを埋めていくようにすれば、話の内容が整理されますし、埋められていないことがあれば、聞きそびれていることもわかります。たとえばWhenが抜けていれば、期日が抜けているとわかるので、質問すれば良いわけです。
ちなみに、私は、5W1Hから外れることはメモしないようにしています。あとで見た時に、本題と関係のない書き込みに惑わされることを防ぐためです。
最近は、小さなホワイトボードを持ち歩き、その場で書き込みながら相手と話の流れを共有する人がいますが、手帳を使って、同じことをしている人もいました。相手に自分の手帳の書き込みを見せながら話せば、その場で「ここは違う」などと言ってもらえ、認識のズレが生じにくいというわけです。
もっとも、「打ち合わせ中に、整然とメモなんてとれない」という人もいるでしょう。そう言う場合は、あとでメモの内容を清書しても良いと思います。
清書するなんて面倒だと思えるかもしれませんが、その一手間を加えることで、打ち合わせの内容が整理でき、あとでわからなくなることを防げます。長い目で見たら、清書したほうが良いというわけです。
「原案」を手帳に書きスマホで送付!
さらに私の場合は、打ち合わせ直後に帰りの電車で、依頼された成果物の原案だけでもメモを使ってまとめるようにしています。原案だけでもまとめておけば、あとで再開しやすいからです。何もしないで何日も放っておくと、もう一度打ち合わせの内容を思い出すところから始めなければならず、余計な時間がかかります。
取引先によっては、手帳に書いた原案を、スマホのカメラで撮影し、その日のうちに送ることもあります。こうして方向性だけでもコンセンサスをとっておけば、あとでやり直しになる確率が少なくなるからです。手書きすれば、所要時間は10~20分程度。原案のすり合わせだけですから、パワーポイントで丁寧に資料を作る必要はありません。こうした、ちょっとした効率化をしているかどうかで、大きな差がつくものです。
伊庭正康(いば・まさやす)〔株〕らしさラボ代表取締役
1969年、京都府生まれ。91年、リクルートグループ入社。プレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰を4回受賞。その後、〔株〕フロムエーキャリアの代表取締役に就任。2011年、〔株〕らしさラボを設立。「職場内」「お客様」との関係性を深めるコンサルタントとしての活動が評判を呼び、年間240回以上の企業研修、コンサルテーションを行なう。著書に『この世から苦手な人がいなくなる』(KADOKAWA)などがある。(取材・構成:杉山直隆)(『
The 21 online
』2017年5月号より)
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