40代は完璧を目指さない!

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(写真=The 21 online)

40代に突入し、「健康習慣を見直さなくては」と考えてはいるものの、忙しくてそれどころではない……。それに、いまさら大きくライフスタイルを変えるのも億おっ劫くうだ。そんなビジネスマンに、無理せずちょっとした習慣を変えるだけで健康な身体が手に入る方法を、アンチエイジングドクターの米井嘉一氏にうかがった。

何もしないことが「健康格差」を広げていく

40 代に突入し、体力の衰えや心身の不調を感じ始めたビジネスマンは少なくないでしょう。原因は、この年代を境に始まる「老化」にあります。

人は30 代まで、心身ともに成長・成熟へと向かいますが、40 代を境に、筋肉やホルモン、神経、血管、骨といった生理機能が衰え、病気のリスクが高まります。

さらに、身体の錆びを引き起こす酸化ストレス、風邪を引きやすくさせる免疫ストレスなど、さまざまなストレス要因が老化を加速させます。

しかし、老化のスピードは食事や運動といった生活習慣の改善によって遅らせることができます。だからこそ、老化のターニングポイントである40 代で、生活習慣を見直すべきなのです。

この時期に生活習慣を改めた人は今後も若々しく活動できますが、何もしない人はどんどん元気がなくなっていく……。この時期をどう過ごすかで、健康格差はますます広がっていってしまうのです。

とはいえ、ほとんどの人は忙しさにかまけて、生活習慣の見直しを怠りがちです。病気になって初めて、真剣に習慣を見直し始めるというビジネスマンは後を絶ちません。

しかし、くも膜下出血や心筋梗塞などといった突然死を引き起こす可能性がある病気もありますし、心筋梗塞の発症患者の1~2割は、40 代であるとも言われています。「病気になってから生活習慣を見直す」では遅いのです。

40代の生活習慣は「60点」で良い

では、何から始めればいいのでしょうか。いきなり「毎日、筋トレやランニングをしよう」「毎日バランスのいい食事を摂ろう」などと高いハードルを設けたところで、結局、挫折してしまうのは火を見るよりも明らかです。毎日運動する時間や、食事に手間をかける時間を十分に確保できるような人は、それほど多くありません。

まずは、何かを始める前に、自分の身体の老化がどの程度進んでいるのかを確認してみてください。私はいわゆる「アンチエイジングドック」を勧めています。身体でもっとも老化が進んだ部分や老化の危険因子など、自分の健康状態や若さの程度が把握できるからです。

その情報を元にして、具体的に生活習慣を改善していくわけですが、その際、ぜひ意識してもらいたいことがあります。それは、「健康に二番目にいいことを習慣にしよう」という考え方です。

もちろん「健康に一番いいこと」を実践できれば100 点満点です。しかし、無理をして挫折し、何もやらなくなるよりは、最初からハードルを低くしたほうが始めやすく、続けやすいはず。

忙しい40 代はいっそ「60 点の健康習慣」を目指すべきでしょう。難しいことを最初からやろうとせず、日常生活の中で少しだけ気をつければいいことだけをやるのです。

二番目にいいことでも続かないようなら、三番目にいいことでもいいでしょう。今後の人生を見据えたとき、少しずつでも身体にいい習慣を積み重ねた結果が、将来、老後資金の積み立てのようにジワジワと効いてくるのです。

ビジネスマンの1日に合わせ、忙しくても明日からできる健康習慣をいくつかご紹介しました。ぜひ、参考にしてみてください。

果物と乳製品だけでも口にしよう

ベストは、朝の食事をバランス良く食べること。しかし、そんな時間はないという方は、とりあえず「食べる習慣」を身につけるだけで構いません。というのも、朝を抜いて昼食を食べると、血糖値が一気に上昇し、それを下げようとすい臓に負担がかかるからです。これを繰り返すと、すい蔵の機能が低下し、糖尿病になる危険があります。忙しい朝は、調理の手間のかからない果物と乳製品がお勧め。適度な糖分やビタミンで、朝に必要な最低限のエネルギーと栄養を摂取できます。

いつもより30分早起きして朝日を浴びよう

集中力の高い朝を有効に活用する「朝活」が注目されています。しかし、残業や接待が続けば、毎日早朝に起きるなど無理な話。ならばせめて、身体のエンジンをかけるために、いつもより30 分早く起きてみてはいかがでしょうか。家を出るギリギリの時間まで寝ていると、身体が睡眠モードから切り替わらないまま、午前中の仕事をしてしまうからです。身体を覚醒させるには、朝日を浴びるのがお勧め。いつもより30 分早く起きて朝日を浴び、1 日のリズムを作り出しましょう。

5階までは階段を使おう

朝に適度なジョギングをしてから出社したり、自転車で通勤するビジネスマンが増えています。ただ、通勤時間が長い人は、そんな時間を確保するのも難しいでしょう。ならば、せめて「オフィスでは5 階まで階段を使う」習慣をつけましょう。階段を登る際、太ももの前面にある大腿四頭筋を使うのですが、この筋肉は身体の中で一番大きな筋肉なので、とても効率よく脂肪を燃焼させられるのです。自転車通勤に匹敵する運動量を確保することができます。

高タンパク低カロリーの食品を追加しよう

昼食では、栄養バランスのよい手作り弁当を毎日持参したいところですが、忙しいと菓子パンやうどんなど、簡単に済ませられる食事に偏りがち。そんな方にお勧めなのが、そこに高タンパク低カロリーの食品を1 品加えること。昼食は、炭水化物とタンパク質と脂質の割合を、6:2:2 にするのがベストですが、どうしても炭水化物が過多になり、タンパク質が不足してしまうからです。コンビニで販売しているサラダチキンや生卵、納豆などの食材がお勧めです。

眠くならないような食べ方に変えよう

昼食後、猛烈に眠くなって困ることはないでしょうか。そんな人は、昼食の食べ方を変えてみましょう。具体的には、炭水化物を摂りすぎないこと。炭水化物の代わりに、高タンパクの品などに置き換えるといいでしょう。炭水化物を摂りすぎると、血糖値が一気に上がり、大量のインスリンが分泌されます。インスリンは別名「休息ホルモン」と呼ばれ、分泌されると眠くなるのです。ただし、眠くなるからといって昼食を抜くのは逆効果。血糖値が低すぎる場合も、身体が脳を休ませようとするからです。

90分に1度、立ち上がってストレッチをしよう

長時間のデスクワークは肩こりや腰痛の原因に。これを防ぐには、背筋を伸ばし、骨盤が椅子の座面と垂直になるように座るのがベストですが、実はこの座り方、相応の筋力が必要。長時間この姿勢を維持するのは難しく、徐々に顎が出てきて背中が曲がってきてしまいます。そこで、90分に一度は席から立ち上がって、悪い姿勢をリセットする習慣をつけましょう。定期的に首や肩の筋肉を伸ばし、身体を柔軟に保つことで、正しい姿勢に戻すことができます。

「眼を使わない趣味」を習慣にしよう

現代のビジネスマンはパソコン作業が多いうえ、仕事が終わってからもテレビやスマホなど、常に目を酷使しています。目を酷使すると交感神経が高まった状態が続き、神経が休まりません。とくにパソコン作業が多い人は、帰宅中や帰宅後は「眼を使わない」趣味を持つのがお勧めです。たとえば、音楽やラジオを聞くといったことです。目以外の器官を使うことで、酷使していた脳内の目の領域を休ませることができます。

夕食で帳尻を合わせよう

毎食毎食、栄養バランスを整えるのは難しいものです。とくに忙しい朝やお昼は軽食やどんぶり物など、栄養の偏ったもので済ませがち。ならば、せめて夕食で1日の栄養バランスを整えるようにしましょう。ポイントは、不足しがちな野菜や果物をどう補うか。昼の定食に野菜が少なければ、夜は多めにするといった具合で調整しましょう。また、野菜不足が2~3 日続いてしまった場合は、1 週間でつじつまを合わせてバランスを整えるのもOK です。

入眠しやすい条件を整えよう

本来は、同じ時間に寝て同じ時間に起きることで睡眠のリズムを一定に整えるのがベスト。ただ、仕事が終わる時間が不規則で、一定の時刻に就寝することが難しい人もいるでしょう。ならば、「睡眠の質」を高めることを意識してください。質の高い睡眠をとると、疲労回復に欠かせない成長ホルモンを多く分泌できるようになり、ストレスホルモン・コルチゾールの働きを抑えることができるからです。その最も簡単な方法は「寝具」にこだわること。中でも最も安価で手に入るのが「アイマスク」。暗い場所では副交感神経が活発になるため、身体を休息モードに切り替える助けになります。

米井嘉一(よねい・よしかず)同志社大学教授
1958年、東京生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。老化のメカニズムとその診断・治療法の研究を始める。『なまけ者でも無理なく続く77の健康習慣』(SB新書)など著書多数。(『 The 21 online 』2017年5月号より)

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