自動車部品のエアバッグ最大手のタカタ <7312> は、26日民事再生法の適用を申請してから1ヶ月後の7月27日に上場廃止することが決まった。エアバックの死亡事故などの影響により、リコールの実質負債が1兆円を超え経営が行き詰まったためだ。
27日にはタカタの株主総会が開催され、高田会長兼社長は、「債務超過の場合、株主価値はなくなる」と語った。では、債務超過以外の理由で上場廃止になると株の価値はどうなるのだろうか。ここではタカタ以外の例に触れながら解説していこう。
破綻会社を再建するための2つの選択肢 民事再生法と会社更生法
タカタは倒産して再建するにあたって民事再生法を選んだが、破綻会社が再生するための法律は、会社更生法と民事再生法がある。
会社更生法は、1952年に制定された株式会社向けの倒産法の一つで、比較的大きい会社が対象。民事再生法は、株式会社以外の個人や法人にも適用する法律として、2000年4月に施行された。再建手続きを比較的簡易にし、中小企業を前提としている。
最大の違いは経営陣が退陣するか残るかだ。会社更生法では、裁判所が選んだ管財人が再建にあたるため、旧経営陣は再建に参与できず経営責任をとって退陣することが前提。民事再生法では、経営陣の退陣は必須でなく旧経営陣で再建を目指せる。
大会社で利害関係などが複雑な場合は会社更生法を選ばざるを得ないが、利害関係が複雑でなく現経営陣でスピード感をもって再建したい場合は、上場企業の倒産でも民事再生法を申請する場合も多い。
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直近の上場会社の破綻例 エルピーダ、日本航空、武富士など
直近の上場会社の破綻例では、会社更生法は10年の日本航空、武富士、12年のエルピーダメモリなどがある。民事再生法は12年の山水電気、NISグループ、シコー、13年のインデックス、15年のスカイマーク、江守グループHD、第一中央汽船などがある。
日本航空、武富士、エルピーダなどは、権利関係も複雑で、旧経営陣の責任を明確化する必要もあり、大企業の定石通りに会社更生法を選択した。スカイマークは、債務もエアバスやつなぎ融資のファンドのみで少なく、再建スピードを優先して民事再生を選んだ。
タカタは債務超過に陥ることが想定
今回のタカタは、一般債務者の数が500件を超えていて多いものの、すでに米自動車部品会社のキー・セイフティ・システムズ(KSS)が1750億円で再建支援をする合意があるため、スピード感を重視したのだと思われる。オーナー企業であるため、経営陣を保全したいということも背景にあるかもしれない。
スポンサーとなることが決定しているKSSは、昨年中国の寧波均勝電子が買収し中国資本系の会社になっている。エアバッグでは、スウェーデンのオートリブ、ドイツのZF、タカタについで世界4位。KSSは新会社を作り、基本的にタカタのエアバッグ部門以外のシートベルトなどの事業を引き継ぐ。
タカタのエアバッグによる破裂で米国での死亡事故が表面化したのは09年。世界的に大規模なリコールがはじまったのが13年。すでに4年が経過している。リコール費用は、トヨタやホンダなどの自動車メーカーが立て替えている。自動車メーカーは、タカタが倒産するとエアバッグの調達が厳しくなるため、タカタへのリコールの債務を不良債権として計上してこなかった。そのため1兆円もの実質負債があると言われながらタカタは債務超過にはならなかった。タカタは今回、民事再生法の申請したため、自動車メーカーが債務を計上すれば、タカタは債務超過に陥ると見られている。
KSSはエアバッグ以外の事業を引き次ぐことにはなっているが、同社はもともとエアバッグを手掛けており、新会社でもエアバッグも拡大して行くことになるだろう。新会社は別会社なので、タカタのエアバッグの債務は引き継がない。
「株主価値」が残ることもあり得る上場廃止の例は?
タカタの株価はどうなるのだろう。 株価は、基本的には上場廃止が決まると最低価値である1円に向かって下げていく。たしかに、再上場期待が高い、会社を清算する場合に解散価値が株価より高い、といった理由で1円まで下がらない場合もある。
債務超過でない上場廃止の場合は、株式の価値が残ることもあり得る。西武鉄道やライブドアなど粉飾決算や時価総額、株主数などの上場基準を満たさなくなったために上場廃止になった場合は、上場廃止でも会社の価値がなくなるわけではない。株式の流動性はなくなるが、企業価値より割安ならば再上場の可能性もあり長期投資の対象にはなり得るかもしれない。
スカイマークも再上場があり得るとの根強い期待があり、上場最終日の引け値は14円と上場廃止株にしては異例の高い値段だった。 ただ、今回のタカタの場合は債務超過になることが濃厚だ。
再上場の可能性はどうだろう。民事再生法が施行された2000年4月以降の民事再生申請件数は100件を超えるが、その後会社が存続しているのは4割程度であとは存続していない。再上場したのは、配電盤メーカーのかわでん <6648> (旧・川﨑電気)の1社のみだ。再建、再上場の道は簡単ではない。しかも今回は、KSSの出資する新会社に主要自動車部品業務は引き継がれてしまう。タカタの再生の道が簡単だとは思えない。
仮に、再上場したとしても旧株主にはメリットがないこともあり得る。日本航空は再上場したが、上場廃止後100%減資をしたため既存の株主の価値はゼロとなった。新規上場時には新株を発行して上場したため旧株の株主にはメリットはなかった。こういったことを踏まえてのタカタの社長のコメントだったと思われる。将来を期待して買う場合は十分に気をつけて対処したほうがよさそうだ。(ZUU online 編集部)
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