老後の生活の支えとなる年金だが、若年層を中心に将来にわたる制度への持続性を疑問視する声も上がる。厚生労働省の集計によると、2016年度の国民年金の保険料の納付率は、65.0%にとどまる。制度への不安が高まる年金だが、受給資格期間が大幅に短縮される予定。また、介護が必要になった際に活用できる介護保険料にも見直しが控える。年内に制度が変わる社会保障をしっかりと抑えて、新しい制度に適応できるようにしたいところだ。

(1)年金受給資格25年から10年に

(写真=PIXTA)
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社会保障制度見直しで、最もインパクトが大きいのが年金の受給資格期間の短縮だろう。これまで年金を受け取るには、保険料の納付期間と保険料免除期間を合算して25年以上が条件となっていた。しかし、17年の8月からは、この期間が半分以下の10年に短縮される。これまでは10年以上25年未満の期間保険料を支払っていたが、25年の受給資格を満たさないために、年金が受け取れなかった無年金者の救済措置となる。

国民年金は、40年間の納付に対し、月額約6万5000円が支払われているが、この年金額は納付期間に応じたものだ。今後、10年以上の納付で年金が受け取ることが可能になるが、年金額は加入期間が10年で毎月約1万6000円、20年で同約3万2000円の水準にとどまり、生活を送るための収入の柱とまでは言い難い。

しかし、年金問題は国民生活への影響も大きく、消えた年金問題では、政治への不信感が募り、民主党への政権交代の一因ともなった。厚労省の試算では、今回の受給資格期間の短縮措置により、約40万人が初めて年金の受給資格を得ることができるほか、厚生年金対象者も含めると、その数は約64万人に上る見込み。 対象者には黄色い封筒に入った通知が届き、各地の年金事務所などで手続きを済まさなければならない。

(2)厚生年金保険料がアップ

自営業者などが中心に加入する国民年金は、自ら保険料の納付手続きを済ませるため、年金制度を身近に感じ、制度の変更に敏感に反応する一方、サラリーマンが中心に加入する厚生年金では、給与から天引きされるため、年金制度に疎くなりがちだ。しかし、その厚生年金の保険料にも見直しが控える。その内容は、保険料の値上げという負担の増加だ。

厚生年金の保険料は、標準報酬月収額に保険料率をかけた割合だが、その数まで正確に把握している人は多くはないだろう。17年8月までは一般被保険者は18.182%となっている。

例えば、月収が30万円の場合、厚生年金の支払い額は5万4546円となる。労使折半の規定により、このうち半分を会社が負担するため、給与から差し引かれるのは2万7273円となる。厚生年金の保険料率は、04年の法改正で毎年9月に段階的に引き上げられることになっており、17年9月には18.3%に引き上げられる。

これにより、先ほどのケースでは毎月の支払額が354円アップすることになる。保険料率の引き上げについては、今回の保険料率で上限に達したため、今後は更なる法改正などがない限りは固定となる見込み。

(3)介護保険料 公務員と大手企業会社員の負担アップ

年金以外にも社会が連帯することで介護費用を支え合う介護保険にも注意が必要だ。介護保険は、40歳以上が被保険者として保険料を負担するほか、国や都道府県、市町村も費用の半分を拠出している。

このうち、17年8月から現役世代の40歳‐64歳が支払う介護保険料に総報酬割制度が導入される予定だ。この制度は収入に応じて保険料を負担する仕組みで、20年度の全面導入に向けて、収入が相対的に多い被保険者の負担が段階的にアップしていく。

厚生労働省の試算によると、総報酬割を全面導入した場合、公務員が加入する共済組合の保険料負担は1972円増加の7097円、大手企業の会社員などが加入する健保組合は727円増加の5852円となる見込み。一方、中小企業に勤める会社員で構成する協会けんぽは、負担額が241円減って4043円となる。この措置により、保険料の負担が増える被保険者は1272万人、負担が減る被保険者は1653万人と推計している。相対的に所得の高い被保険者の負担がアップすることになる。

年金や保険など安心した生活を送るための社会福祉政策だが、少子高齢化に歯止めがかからない現状では、年金や保険などの負担が増していくのは避けられない情勢だ。給与から天引きされている社会保障費関連の金額に目を向けて、制度変更による影響をチェックしながら、制度の変更を理解しておきたいところだろう。負担アップの話題が先行して思い空気がのしかかるが、年金受給期間の短縮により、これまで年金を受け取ることができなかった人が受給対象となるなど、社会保障制度改革が具現化される一面もある。(ZUU online 編集部)

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