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今日はアベノミクスについてお話していきましょう。 早いものでアベノミクスが始まってから、もう一年が経とうとしています。今のところ、概ね高評価を受けているアベノミクス。為替市場でも円安が進み、アベノミクスが功を奏しているようです。

そもそもアベノミクスとはなんでしょうか?

安倍総理は就任後の所信表明演説で、経済再生の方策として「3本の矢」を提示しました。「3本の矢」とは、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の3つのことを指します。 この「3本の矢」でもって、日本のバブル後20年にわたる経済停滞を抜け出そう、これがアベノミクスというわけです。 20年に渡る経済停滞の原因、それは「デフレ」です。この長きにわたるデフレから脱却し、緩やかなインフレを起こそうというのが安倍総理の経済政策の主軸です。 では、どうやって、デフレから抜け出すのでしょうか?以下で「3本の矢」の中身と為替相場への影響を見ていくこととしましょう。


大胆な金融政策

大胆な金融政策は、その中でも3つに分けられます。

一つ目には、インフレターゲットの設定。その他先進国と同じように、「2%のインフレ目標」を設定しました。本来、中央銀行とは、「インフレを抑える」役割を果たす機関です。その伝統的な中央銀行観から日銀は抜け出ることが出来なかったのですが、ここで初めて、「緩やかなインフレを起こす(=デフレからの脱却)」という役割を担うことになりました。

二つ目には、円安誘導です。リーマンショック後、多くの国が量的緩和を行いました。その影響で円は過大に評価されていました。その過大な評価を修正しようということで円安誘導が行われることとなりました。

三つ目には、量的緩和の実施です。既に多くの先進諸国が行っている金融緩和に遅れ馳せながら、参加しようということです。日本も量的緩和をある程度は行ってはいたものの、アメリカやEUに比べると全然足りませんでした。欧米を見習い、無制限に量的緩和を行うことを決定しました。 ちなみに「大胆な」という枕詞がついていますが、先進諸国にとっては、以上は極めて一般的な金融政策です。日銀がようやく重たい腰をあげた、というところでしょうか。


機動的な財政政策

簡単に言いますと、公共事業を増やそうということです。民主党政権下で大幅に削減された公共事業で、地方経済が疲弊してしまったことを安倍政権は問題としており、再び公共事業でお金を落として、地方経済を盛り立てようというわけです。

ただ、公共事業を増やす、という政策には疑問点が多く残ります。ただでさえ、借金が多い日本の財政。これ以上、子孫に負債を残すような政策を打ち出すのはいかがなものでしょうか。公共事業は短期的には、雇用を増やしますが、継続的なものにはなりません。少子高齢化が進む日本にとって、必要なインフラ、不要なインフラをきちんと見極めることが必要となってくるでしょう。


民間投資を喚起する成長戦略

民間投資を喚起する成長戦略も中身は3本の柱に分かれます。

一つ目は、日本産業再興プランです。日本の製造業の復活を目的とし、国として製造業の支援を行なうというものです。

二つ目としては、国際展開戦略であり、国として企業の海外展開を支援するというものです。

三つ目の新ターゲティングポリシーとは、国として新しい産業、特に、「健康」「エネルギー」「次世代インフラ」「農林水産業」の四分野について新たな産業を起こす支援をするというものです。

政治が民間を後押しする形の政策はあまり上手くいった例を見ません。政治が出来ることは、法人税の減税などの法制度上のインフラ整備にとどまるべきなのではないでしょうか。アベノミクスによる民間投資の喚起がどの程度のものなのか、よくよく見ていく必要があるでしょう。


アベノミクスが為替相場に与えた影響

安倍相場が始まって以来、円安の傾向にあります。概ね市場はアベノミクスを好感し、評価しているということでしょう。 日銀による量的緩和が効いているともいえます。 ただ、「大胆な金融政策」を除いた他の2本の矢が相場にどのような影響を与えたのか、と問われれば、疑問ですね。今の相場は、単に日銀の無制限の量的緩和によって醸成されているものに過ぎず、それ以外のアベノミクスの効果は長期で見ないと結果が分らないものである以上、今のところの効果は限定的であるからです。


おわりに

いかがでしょうか?

アベノミクスの中身が理解できましたでしょうか?この一年で、アベノミクスはどのくらい結果を残しているのでしょうか?成長戦略は長期に渡るものである以上、たった一年で評価することは難しいでしょう。今後、どのようにアベノミクスが経済に影響を与えていくのかは、長い目でみていくことが必要でしょう。また、海外投資家はシビアです。アベノミクスが期待外れだと分れば、日本買いからすぐに手を引くことも予想されます。TPP等の外交問題、法人税、消費税等の内政問題等、問題は山積しています。一つ一つ政治がどのように動くのか見ていく必要があるでしょう。

今の株高・円安は、実際のアベノミクスの成果というよりも、アベノミクスへの「期待」が作り出したものです。その内外投資家の「期待」にどれだけアベノミクスが応えられるのか。もし、「期待」が剥落するようなことがあれば、その反動こそ大きいものになりそうです。その「期待」に乗るか、乗れないか、それも含めてしっかりと見ていきましょう。

photo credit: halfrain via photopin cc