人は、「得することの喜びよりも、損失の痛みを大きく感じる」という研究結果がある。100円のお得より100円の損失、1万円のお得より1万円の損失、100万円のお得より100万円の損失の方が大きく感じるということ。

例えば私の行きつけの喫茶店では、コーヒーを 1 杯注文すると当日中ならどの店舗でも100円で2杯目が貰える。春と秋の年に2度買いに行くスーツショップでは、2着目が1万円で購入できる。他にもセットでお得、保証期間の延長、単品でなくセット価格、閉店セールも同じだ。

これらに遭遇すると、損を被ることがない様に一見得するような行動をとるが、しかしそこには落とし穴があり、実は損をしているとしたらどうだろうか。自分が正しい行動をとっていると自信を持っていえるだろうか。

投資の損を何とか回復させようとする心理

投資心理学,行動経済学
(写真=PIXTA)

このようなことがよく引き合いに出されるのは投資のときだ。値上がりしているときの利益確定は苦も無くできるのに、値下がりした時の損切りができない。損切りできない間にも相場はどんどん値下がりし、売るに売れない価格まで値下がりしてしまう。

いわゆる塩漬け状態になるまで価格がさがってしまい、その後一向に値上がりしない。バブル時に株を買ったままの方や、ITバブルやリーマンショック前に投資信託を買ってみたものの、いまだに持ち続けている人は多い。

売るまで損は確定しないとか、いつか価格が戻るだろうと期待をしているのだが、既に10年、30年と値段が戻る気配はない。値下がりしたまま子供には言えない……と口を堅く閉ざす高齢者も多い。

いつまで保有するつもりか聞くと、「価格が戻るまで」という答えが返ってくる。頭では二度と価格が買値に戻ることはないとわかっているが、心が受け入れることを拒んでしまう。そして何もできないまま時が過ぎていく。問題を先送りしてしまうことで、損失という痛みを回避することになるのだが、結果として損切りをすることができず、元本がさらに減るという損失と、損切りをすることで得ることができた別の機会の投資に対する機会損失を産んでいるということになる。

損失を取り戻そうとギャンブルへ そして痛い目に……