マクロ管理法を説明するとき、「他のダイエット法を差し置いても覚えてほしい」とか「食べる順番や組み合わせは無視していい」と伝えた。これは本当なのだが、マクロ管理法に慣れてきたり、余裕が出てきたなら覚えておいてほしい知識がある。

(本記事は、Testosterone氏の著『 筋トレビジネスエリートがやっている最強の食べ方 』KADOKAWA 2017/6/30 の中から一部を抜粋・編集しています)

筋トレビジネスエリートがやっている最強の食べ方
(画像=Webサイトより)

その一つが「GI」。GIとはGlycemic Index。グリセミック・インデックス。の略で、食後血糖値の上昇度を示す指標のことだ。そして、血糖値とは、血液内に含まれるグルコース。ブドウ糖。の濃度。グルコースは体内でエネルギー源となる重要な役割を果たしている。

高GI食品と低GI食品の血糖値の違い

炭水化物を摂取すると消化器官で消化・吸収され、図13のように血糖値が上がっていく。その際、GI値が高ければ高いほど吸収が早く、血糖値が上がりやすくなる。血糖値が急激に上昇すると、正常値に戻すためインスリンというホルモンが分泌される。人間は血糖値が乱高下したときに眠気や空腹感を覚える。

昼食後に急激な眠気に襲われたことがある人は多いと思うが、それは寝不足というよりは、血糖値の乱高下によって引き起こされる眠気やだるさである可能性が高いのだ。

高GIの食べ物の代表例として、白米や食パン、うどんなどが挙げられる。低GIの食べ物として、玄米、全粒粉パン、そばなどが挙げられる。茶色い食べ物のほうが一般的に食物繊維も豊富かつ低GIなのだ。炭水化物であれば白米より玄米を猛烈にすすめたいし、基本的に白い炭水化物よりも色の濃い炭水化物のほうがよいと覚えておこう。

低GIの食品は消化に時間がかかるため腹持ちがよく、血糖値も緩やかに上昇するので空腹を感じづらい。また、血糖値の乱高下もないため、だるさや眠気も感じにくい。ダイエットや仕事のパフォーマンスを保つには、低GIの炭水化物のほうが圧倒的に向いているのである。

「肥満ホルモン」と筋トレの関係

血糖値とインスリンの話が出たので、インスリンについてもう少し触れておきたい。

インスリンはその性質から、「肥満ホルモン」と呼ばれることもある。簡単に言うと、インスリンが出ている間は、カロリーを体脂肪として溜め込みやすくなる。要は、身体が太りやすい状態になっているのである。

特に、炭水化物と脂質の組み合わせは危険だ。しかも、ご飯と脂っこいものの組み合わせは、ついつい大食いになりやすく、カロリー過多になりがちでもある。どんぶりやスイーツなど、糖質と脂質の組み合わせを人間は美味しいと感じるから酷な話だが、ダイエットには大敵であることを覚えておいてほしい。

このインスリンの大量分泌を防ぐために高GIよりは低GIの食品を摂るべきなのである。スイーツが太りやすいと言われる理由もGIとインスリンの関係で説明できる。

たとえば、ショートケーキを例にとってみよう。ショートケーキは主に高GIの糖分と高カロリーの脂質。バターや生クリーム。で形成されている。高GIの糖分を摂取したことでインスリンが大量分泌され、しかも高カロリーなバターや生クリームのカロリーも同時に摂っている。その結果、体脂肪として取り込まれやすくなるのだ。

Chapter2で取り上げた「ラーメン・チャーハン・餃子」のセットも似たようなものである。ショートケーキと違って、砂糖や生クリームは少ないが、小麦や米でしっかりと高GIの炭水化物を摂っているし、油も多い。

マクロバランスから見ても、インスリンの観点から見ても、こういった食べ物はダイエットにとって大敵なのである。

実はたんぱく質の摂取でもインスリンは分泌されるのだが、細かいことを言い出すとキリがないので、炭水化物×脂質の組み合わせは太りやすいってことを頭の片隅に置いておいてくれ。

ダイエットをしているときにはなるべく避けたい高GI食品ではあるが、すべて悪いかというとそうとは限らない。

高GIの特徴は「吸収が早く、すぐにエネルギーになる」こと。普段の生活ではメリットを感じづらいが、運動直後は高GIの食品を食べたほうがいい。炭水化物を食べると体内でブドウ糖に分解され、吸収されるが、運動後の栄養を一刻も早く吸収しようとしている筋肉は、脂肪ではなく「グリコーゲン」として筋肉中に補ほてんしようとするのだ。しかも、グリコーゲンを貯蔵できる容量を越えない範囲であれば中性脂肪にはならない。

だから「ダイエット中だけどスイーツやラーメンがどうしても食べたい!」という人は、筋トレ直後に食べると一応、太りづらく脂肪になりづらいことになる。

もちろん、スイーツやラーメンは脂質も多くなるのでマクロ栄養素のバランスが取りづらい。褒められた食事ではないが、こういった知識を持っておくと、ときには高カロリーな食事も楽しみながら体脂肪の増加を最小限に抑えられるので、ダイエットの手助けとなってくれるはずだ。

「小分けにして食べる」は、いいことだらけ

マクロ管理法を実践するうえで「食べる順番や組み合わせは無視していい」と伝えたが、正確に言えば、同じカロリーを摂取するにしても回数を分けたほうがいい。3食にこだわらず、4回、5回と回数を分けて食事をすると、さまざまな恩恵を受けられるからだ。

まずは、「消化器官の負担を減らす」こと。一気に食べると消化器官は一度に多くの食べ物を消化する必要があり、負担になってしまうのだ。

2つ目は、「体脂肪になりにくい」こと。一度に大量の食べ物を食べると、消費できなかった「余剰カロリー」が生まれやすい。この余剰カロリーは体脂肪に変換されてしまうが、小分けであれば適正なカロリー量を維持しやすいため体脂肪にもなりにくい。

3つ目は、「空腹を感じにくくなる」こと。小分けで食べていればダイエットの大敵である空腹とは無縁になることもできる。

4つ目は、「リバウンドに強い身体を作れる」こと。タンパク質は分解されるとアミノ酸になる。小分けで食べていると、血中のアミノ酸レベルを保つことができ、ダイエット中に高確率で起こってしまう筋肉の減少を防ぐことができるのだ。筋肉量が減りづらいことで、リバウンドに強い体を作ることができ、停滞期の対策にもなる。

その他にも小分けで食べるメリットはたくさんある。満腹の人と、適切な量を食べた人、どちらの人のパフォーマンスが上かは自身の経験からわかるのではないだろうか?先ほども伝えたように、お腹いっぱい食べると眠気や倦怠感を覚える。毎食満腹になるまで食べていては仕事やトレーニングのパフォーマンスが落ちて当然である。

また、一度の食事で吸収できるタンパク質には20~30gの限度があり。限度がないという研究もある。小分けのほうがいいという研究もある。まあ、この手の研究は欲しい結果によって細かく方法を変えることもあるので、すべてを信じることはおすすめしないが、そういう研究結果もあることを知っておくといいだろう。

そして、ほとんどのトップビルダーたちが1日に8食前後食べていることからも、小分けにして食べることは、体脂肪がつくことを最小限に抑え筋肉を大きくすることに何らかのメリットがあると考えてほぼ間違いないだろう。ときには研究結果だけを信じるのではなく、このように論理的に推理することも大切だ。

いずれにせよ、小分けで食べることのメリットは多いので、マクロ管理法に慣れてきたらぜひ試してみてほしい。

【「ビジネスエリートの最強の食べ方シリーズ」はこちら】
(1)学歴より大事な「食事の知識」 筋トレがやっぱりすごい根本的理由
(2)筋トレビジネスエリートの「マクロ管理法」 ダイエットに必要なたった5つのステップ
(3)「スイーツ食べちゃった……」焦るな、まだ間に合う 長続きするダイエットのコツ
(4)ご存知マッチョ御用達のアイテム 皮なし鶏むね肉は「神食材」
(5)「肥満ホルモン」と筋トレの関係 ハイパフォーマーへのカギは「低GI」

Testosterone
1988年生まれ。学生時代は110キロに達する肥満児だったが、米国留学中に筋トレと出会い、40キロ近いダイエットに成功する。大学時代に打ち込んだ総合格闘技ではトッププロ選手と生活をともにし、最先端のトレーニング理論とスポーツ栄養学を学ぶ。現在はとあるアジアの大都市で社長として働きつつ、筋トレと正しい栄養学の知識を日本に普及させることをライフワークとしている。Twitterアカウント: @badassceo