ドル円予想レンジ111.00-112.80

武部力也,為替相場見通し,負けて勝つ,円高抑制
(写真=PIXTA)

「日本経済の再生、そうした諸課題に対してひとつひとつ結果を出したいと思います」-。これは安倍内閣の支持率が報道各社の世論調査で下落していることを受けての7/18菅官房長官発言である。経済に力点を置くことを明言した格好にも映る。

日銀、「負けて勝つ」の構えに

7/20の英経済紙が“BankofJapancutsinflationforecast(日本銀行、インフレ予測引き下げ)”との見出しを掲げた。日銀は“経済と物価の最新の見通し”「展望レポート」で2%物価目標の達成時期に関する表現を従来の「2018年度頃」から「19年度頃」へと修正。事実上の先延ばし宣言である。日銀黒田総裁が物価目標の達成時期を“先延ばし”するのは2013年3月の就任以降、今回が6度目。記者会見でも黒田総裁には厳しい質問が浴びせられた。では何故、今回、先延ばしをしたのか。

現在、安倍政権への求心力が景気の好循環とその持続性であることを踏まえて、筆者が気になったのは2点。1つは、7/21に閣議提出された2017年度の経済財政白書で“景気は緩やかな回復が続くが、物価を押し上げる力は弱まっている”と分析していた点だ。これは前出の日銀展望レポートとほぼ同様であり、いずれは2%達成時期の先送りをせざるを得ないことから『政府・日銀への批判が強まる前に、景気が緩やかに回復しているうちに、先延ばし』とも読めるのだ。

2つ目は、前号でも記したが、トランプ政権が掲げる3%の経済成長に対し、「達成は極めて難しいと思う」と、イエレンFRB議長が異議を唱えている点である。医療保険制度改革(オバマケア)代替法案を巡ったトランプ政権の議会運営能力低下は、規制緩和やインフラ投資、税制改革の実現性を遠のけた、との見方が大勢だ。転じて市場懸念は米10年債価格を押し上げ、それに伴う金利低下は200日終値比7/21時点で0.936の相関係数を示すドル円の圧迫材料に繋がっている。米利上げ確率を示すシカゴFEDウオッチも年内利上げ観測派は極めて少数だ。

日銀の先延ばし宣言は、緩和継続を以て金利面で対ドルでの円買いインセンティブ後退、円高抑制を目論んでいるのではないか。安倍内閣の支持率低下、無定見なトランプ施策を鑑みての予防措置、“負けて勝つ”に構え直したとも読めそうだ。

7月第4週のドル円上下焦点

テクニカル観点では週足一目雲上限112.23、200日線推移の111.90、日足雲下限111.25を局地戦で留意。上値焦点は7/20高値112.43、7/18高値112.665、7/17高値112.87を推考。下値焦点は7/20、6/27安値となる111.48-45、6/23-26安値圏111.19-145、111円台維持、と睨んでいる。

為替見通し7-21

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト