為替相場の「円高」や「円安」という言葉は毎日のように聞かれます。ニュースでは前日の為替相場を毎朝伝えています。外貨預金やFX(外国為替証拠金取引)という金融商品を耳にしたこともあるでしょうし、これから始めようという人もいるでしょう。さて、為替とは何でしょうか?どうして変動したり相場があるのでしょうか?


そもそも為替とは

「為替」という言葉は「為替手形」や「小額小為替」などという言葉にも使われています。「為替」とは、そもそも遠く離れた人同士のお金の交換手段の意味です。外貨との交換を「外国為替」と呼びます。これ以降、「外国為替」のことを「為替」と呼びます。
つまり円とドル、円と人民元、円とユーロのように、外国のお金と自国のお金を同じ価値の分づつ取り替えるものです。輸出入など国際的な経済活動や、外国旅行で外貨を準備するために為替は不可欠なものです。


為替にはなぜ相場があるのか

昔は、金が世界共通の価値のようなものでした。日本の小判も金でした。そして各国とも金本位制で紙幣を発行していました(これを兌換紙幣と呼びます)。経済大国であったアメリカは、金に対するドルの価値が高くドルは基軸通貨になりました。1ドルは360円という固定相場制でした。しかしニクソン大統領は自国のドル流出を防ぐために、1971年8月15日、ドルと金の交換を停止しました。

そうして金本位制、やがて固定相場制が崩壊し、変動相場制となったのです。こうして「為替相場」が出来上がり、世界中の取引所で時々刻々と変動を続けているのです。ですから、金貨と紙幣は全く価値が異なります。金には金の相場がありますが、それはあくまで金の「商品」としての相場です。

日本で発行される記念金貨も、表示されている発売時の価格とその価値は、全く無関係です。為替は紙幣の為替です。そういうと、お金と紙幣の関係や、貨幣と紙幣の違いの話につながりますが、深い話になってしまいますので、とにかく紙幣は「国の信用がついた紙切れだ」と割り切るといいでしょう。為替相場は国の信用と関係しています。


円高・円安とは何か?

「1ドル100円が、90円になると円高で、110円になると円安だ」と聞くと不思議な気がします。しかし、これは1ドルあたりの円の価値が上がったか下がったか、を意味するものなのです。つまり1円あたりのドルの値段を計算すると、「1/90」は「1/110」よりも高いから円高、というわけです。1ドルでバナナが何本買えるかを考えると、3本はバナナ高で5本はバナナ安だ、と、円高と円安の関係がわかるでしょう。

円高はドル安で、円安はドル高です。これは為替相場のチャートで、縦軸に1円あたりのドルの価格が表示されるので、ドル高、ドル安がひと目でわかります。

1ドル360円の時代からすれば、今や日本はアメリカに対して当時の3倍位上の経済力を持つようになった、という計算になるのですが、正しいのでしょうか?正確に評価できる指標はありませんから、為替相場はあくまでも為替相場で、実体経済と完全に一致しているというわけではないのです(マクドナルドのハンバーガーが、日米で大きく値段が異なるのと同じです)。


為替相場は何故動くのか?

為替相場は本来、各国の経済の基本的な状況(ファンダメンタルズ)や金利で動くものです。各国の紙幣の価値が変わると為替相場も変わるのが当然です。また、戦争やテロのような世界的な危機も為替相場に影響を与えます。海外と取引する上では、為替相場の変動に備え先物買いなどヘッジを行う必要があり、それもまた、相場に影響を与えます。それに加えて、そうした変動を投機的に利用する人々もいます。

そうした様々な人々の動きや思惑で、為替相場が動くのです。アメリカの経済が良くなると円安ドル高になる、というのが合理的なのですが、アメリカが自国の経済を守ろうとするとドル高に誘導します。

それに対して日銀がドルを売ろうとすると、「為替に介入するな」と世界中から避難を浴びます(これはあくまでも日本人の立場としての文章ですが、日銀が保有するドルやドル建て米国債権を世界中に売りまくれば、円安になって日本の輸出産業は大いに業績が伸びるでしょう)。

こうした各国間の綱引きも為替相場に影響します。FRBの議長が何か発言したり、雇用統計が発表されたりすると為替が大きく動きます。日本の政権交代で、急激な円高が沈静化して円安に動いたのは記憶に新しいところです(政権交代で日本の財政が良くなる、日本が強くなるのなら円高に動くのが当然なのですが、そこがアベノミクスです。アベノミクスが評価されたら円安になる、というのも不思議ですが)。

為替のチャートを、特に1分足のチャートを見ていると、まるで生き物のように動いています。繰り返しますが、為替が世界中の人々の思惑で動いているだけであり、経済の実態とは厳密な関係はありません。

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