駅前やビジネス街でよく目にする牛丼チェーンだが、御三家を中心に激しいシェア争いが繰り広げられている。しかし、実際のところ、その競争がどのような展開になっているのかは、牛丼チェーン常連客の中でも詳細まで把握しきれないだろう。そこで、「すき家」「吉野家」「松屋」の各社をさまざまな角度から比較してみる。

(1)売上高:ゼンショー(すき家)に軍配

牛丼,牛丼御三家
(写真=Takamex/Shutterstock.com)

すき家を運営するゼンショー <7550> 、吉野家 <9861> 、松屋の松屋フーズ <9887> それぞれの経営状況の数字について、ゼンショーと松屋フーズは2017年3月期連結決算、吉野家は17年2月期連結決算からそれぞれ比較してみると、下記の通り。

【会社:売上高/営業利益/純利益】
ゼンショー:5440億2800万円/187億7500万円/180億6100万円
吉野家:1886億2300万円/18億6500万円/12億4800万円
松屋フーズ:890億3900万円/48億3100万円/28億3600万円

売上高はゼンショーがライバル社を引き離している。しかし、ゼンショーはすき家やなか卯の牛丼チェーンのほか、ココスなどのファミリーレストラン、はま寿司などのファストフードを含むグループ企業が多いのもその要因となる。

牛丼カテゴリーに絞ってみると、すき家となか卯が中心となり、売上高は1943億9300万円だ。吉野家もうどんチェーンの「はなまる」などをグループ会社として抱えており、牛丼チェーンの吉野家だけの売上高は972億円8100万円。グループ全体の売上高をみるとゼンショーが圧倒しているが、牛丼カテゴリーに着目すると、吉野家と松屋が拮抗し、ゼンショーはライバル社の2倍ほどの売上を上げていることになるが、この数字はなか卯も含めているため、すき家だけに限ると、吉野家と松屋との差はさらに縮まることになる。

(2)店舗数:国内外で明暗、吉野家の海外展開が目立つ

店舗数に着目すると、すき家は1963店舗(17年3月末時点)を展開し、松屋は牛めし業態として943店舗(同)、吉野家は1207店舗(17年2月末時点)となり、店舗の数がそのまま売上高に比例した格好となった。しかし、海外の店舗に目を向けると、違った勢力図が浮かび上がる。

御三家の中で、最も積極的に海外進出を果たしているのが吉野家で、中国の首都・北京に214店舗をはじめとして、インドネシア、タイ、マレーシアなど東南アジア、アメリカを含めて703店舗(17年2月末時点)を展開。

この戦略によって、外国人にとっては、「牛丼=吉野家」のイメージがすっかり定着している。一方、国内では最多の店舗数を誇るすき家だが、海外は中国に59店舗、ブラジルに8店舗のほか、タイにも進出をしているものの、その店舗数は吉野家に遠く及ばない。松屋フーズの海外店舗は、17年3月末時点で7店舗にとどまり、吉野家の積極的な海外展開が目立つ。

(3)給料:アルバイト時給・社員給与が一番高いのは「すき家」

牛丼チェーンは、深夜の店舗運営を1人で切り盛りするすき家のワンオペが社会問題として厳しい目にさらされたほか、深夜勤務を敬遠した流れからアルバイトの確保が困難になり、人手不足が深刻な状況だ。

各社はアルバイトの時給アップや深夜営業の見直しなど、戦略の立て直しを迫られている。各社ウェブサイトなどから、渋谷区の店舗の時給を比較すると、すき家は時給1220円、深夜時給1525円(高校生1120円)、吉野家は1100円~(高校生も同額)、22時以降は時給25%アップの1375円、松屋は1100円~(高校生は1000円~)22時から翌日5時まで1375円となっており、すき家の時給が頭ひとつ抜け出ている。

(4)(5)平均年収、平均勤続年数:吉野家が2社を引き離す

さらに各社の有価証券報告書の提出会社の状況に基づく、従業員の平均年収は、ゼンショーが596万4000円、吉野家が735万1000円、松屋フーズが521万8485円となった。吉野家がライバル社を引き離しているが、従業員の平均年齢が48.2歳とゼンショーの36.6歳、松屋フーズの36.2歳より高く、それに伴う平均勤続年数が長いことも影響していると推定される。

一杯の牛丼を巡り、1社が値下げに踏み切れば、後を追いかけるように残り2社も続き、原材料高などから値上げするときは、チキンレースを繰り広げるすき家、吉野家、松屋の御三家だが、運営会社の決算の数字を中心として分析すると、それぞれの項目で3社の間には大きな差が確認できる。

牛丼を中心とした類似のビジネスモデルでは、差別化は困難で、店舗網で圧倒するすき家が売上もライバルに水をあける形となっている。しかしグローバルな視点でみると、吉野家のブランドが世界に定着し、2社を追いかける松屋は、牛めしにはみそ汁がサービスされるお買い得感から根強いファンも多い。今後も牛丼業界は御三家を中心にどのような展開を見せるか、目が離せない。(ZUU online 編集部)

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