インバウンドの旅客増の恩恵などでテーマパーク業界は収入を伸ばしている。最大手のオリエンタルランド <4661> が入場客減から2期連続減収となる一方で、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは大幅増収で明暗がくっきり分かれた。17年4月には期待の大型施設「レゴランド・ジャパン」が名古屋にオープン。東京オリンピックを控え今後も大型テーマパークの新規参入が相次ぐ。テーマパークの今を見てみよう。

「レゴ」に続き「ムーミン」「ジブリ」「シーライフ」

USJ,TDR,テーマパーク
(写真=DRN Studio/Shutterstock.com)

17年4月、名古屋近郊の金城埠頭に玩具レゴの屋外型テーマパーク「レゴランド・ジャパン」がオープンした。東京ドーム2.5個分のスペースに、レゴ工場見学ができるレゴファクトリー・ツアー、大きなレゴで遊べるプレイエリア、レゴのジェットコースターやメリーゴーランドなどのアトラクションエリアなどが配置されている。金城埠頭は埋め立て地でイベントや展示会などが開催されることが多い地区。東京のお台場のような場所だ。レゴランドは名古屋市から隣接する土地を借り受け、来年にはスペースを1.4倍に拡張する計画。英ロンドンや米オーランドなど水族館を世界展開している「シーライフ」や「レゴランドホテル」も同エリアに建設中で、期待の人気のエリアになりそうだ。

埼玉県飯能には18年秋、北欧の森と湖を配置したテーマパーク「メッツァビレッジ」がオープンする予定。19年春には同敷地内に人気アニメの「ムーミンバレーパーク」が次いでオープンする計画だ。ムーミン屋敷、エンマ劇場、オーケストラ号といったムーミンワールドが自然の中に再現される。ホテルやキャンプの施設も併設される予定。

05年に愛知で行われた万博「愛・地球博」跡地の愛・地球博記念公園には「ジブリパーク」の建設が決まった。20年初にオープン予定で、「となりのトトロ」などの世界観を表現する期待のテーマパークだ。

USJが単月でTDLの入場者数を超えた

16年のインバウンドの訪日旅客は約2404万人と前年比21.8%増で過去最高を記録した。一方で、経産省のデータで16年の遊園地・テーマパークの入場者数は前年比1.3%減の8039万人と伸び悩んだ。インバウンドの顧客増を充分に取り込めていない。

オリエンタルランドが運営する東京ディスニー・リゾート(TDR)の16年度の入場者数は、前年比0.6%減の3000万人。14年度をピークに2連連続減となっている。一方、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、前年度比約5%増の1460万人で過去最高を更新した。

USJは15年度の推計入場者数で東京ディズニー・シーを(TDS)を抜き、東京ディズニーランド(TDL)に次ぐ世界4位のテーマパークに浮上していた。USJの16年10月の入園者数は175万人を超えて月間で過去最高となり、両社とも正式な月次統計を開示していなのであくまでもUSJの推定ではあるが、初めてTDLの月間入場者数を超えたようだと発表した。映画「ハリーポッター」のアトラクション、「妖怪ウォッチ」の期間限定アトラクションに加え、参加型のイベント「ハロウィーン・ホラー・ナイト」が人気を呼んだ。今年もヒットアニメ映画「ミニオン」の「ミニオン・パーク」をオープンしており好調に推移している。

売上モメンタムではTDRを大きく上回るUSJ

帝国データバンクが7月26日に、「遊園地・テーマパークの経営企業の実態調査(2016年1月〜12月決算)」を公表した。同社のデータベースで3期フォロー出来る155社のテーマパーク部門の経営分析だ。例えばオリエンタルランドの場合、ホテルなどの売り上げを除いたテーマパーク部門の売り上げだけを分析している。

16年の業界の収入高の合計は1.9%増の8360億円となり、前年度の1.0%増を上回った。前述の経産省の遊園地・テーマパークのデータでは16年の入場者は1.3%減と伸び悩んでいるが、インバウンド増、チケットの値上げなどで業界全体の収入は増加している。増収企業の割合は58.1%と前期比5.8ポイント改善しており、業界は好況を享受している。81%のテーマパークが黒字だ。155テーマパークのうち売り上げ10億円未満が97社(63%)に達し多数の中小テーマパークが存在しており収入格差が大きいことも特徴だ。売り上げ100億円以上のメガパークは10社(6%)。今後大型化が徐々に進むだろう。

業界トップのTDR16年3月期の入場者数は、3019万人と前年比3.8%減少、売上は0.7%減の3963億円と2年連続の減収だった。2位のUSJの16年3月期の入場者数は1390万人と前年比9.4%増、売上は8.2%増の約1500億円だった。TDRとUSJの明暗が完全に分かれている。

積極策に出る2大メガパーク

TDRもUSJも東京オリンピック前に大規模設備投資を決めた。TDRは約750億円を投じて「美女と野獣」の施設を、USJは約600億円を投じて「スーパー任天堂ワールド」を20年までにオープンする。

業界の拡大に政府も援護射撃を撃った。政府は18年に「キッズウィーク」の施行を目指している。「キッズウィーク」には、子供に合わせて家族が休めるように企業が協力体制を整える。「プレミアム・フライデー」の子供版だろう。テーマパークや旅行の市場は拡大するだろう。東京オリンピックを控えて、新規参入組を交えた競争激化は必至だが業界全体の拡大が期待できそうだ。(ZUU online 編集部)