中国企業による日米・欧州など海外資産のすさまじい買収は、今年に入って急激に鈍化している中、中国国務院が海外投資の範囲を制限する通知書を初めて公表した。レバレッジとリスクを減らす取り組みの一環として、国内企業が海外の不動産やホテル、映画館、娯楽業、スポーツクラブやチームなどへの投資を制限する。一方、国策となっている「一帯一路」付近の国を支える投資活動は奨励されている。

ブルームバーグによると、今回の通知は、海外への資金流出を厳しく制限する政策の表れであるとともに、中国企業が海外資産買収に伴い多額のドル買いをしてきた時代の終わりを告げるものだという。本土企業による海外資産買収は2016年に過去最高の2460億ドル(約26兆9000億円)規模となったが、今年1‐6月(上期)は40%余りも大幅減少している。

監視強化で買収計画は次々と暗礁に

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(写真=shanghainese/Shutterstock.com)

ブルームバーグのエコノミストは「中国当局は複数の目的をかなえようとしている。対外投資を国家の優先事項とより密接に関連させるほか、国内企業が割高な海外資産買収に走ることや資本逃避を防ごうとしている」と分析している。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、中国企業が2016年に公表した買収計画は過去最高の2250億ドル(約25兆7300億円)にも達したが、その多くが現在、資金や規制の面で障害にぶつかり棚上げ状態にある。中国政府が前年末か今年初めごろから、資金流出規制や海外買収への監視を強めている煽りを受けた。

中国企業の買収計画は次々に暗礁に乗り上げている。英米調査会社ディール・ロジックによると、中国企業が16年に公表した海外買収計画の総額は前年の2倍超だったが、中止案件が前年の約7倍に増え、約384億円にのぼるという。

例えば、国有中国化工集団によるスイスの種子・農薬大手シンジェンタの買収計画もその1つだ。430億ドルという中国企業による最大の外国企業買収について、欧州委員会(EC)は、同計画の承認の是非をめぐる判断期限を再度延長した。国有企業でありながら、買収完了は今年6月末までと大幅に遅れた。

「一帯一路」経済回廊への投資は強化

投資会社・春華資本集団(プリマベーラ・キャピタル)の胡祖六創業者兼会長は「不確実性の高まりに伴い中国の投資家が、警戒感を大幅に強めていることは間違いない」と語った(WSJ紙)。

併せて、米国など投資対象国の監視の目も厳しくなっている。中国企業による海外企業の買収は、100億ドルを超える全取引と10億ドル超の取引の一部について、米商務省や国家発展改革委員会(NDRC)などから事前に承認を得る必要がある。また当初承認されたにもかかわらず当局の審査のやり直しで保留となるケースも増えている。

もっとも楽観視する向きもないわけではない。国有中国建設銀行の王浩章会長は「中国企業の海外買収の流れは、長期的には(現在実施されている外貨統制の)影響を受けないはずだ」と述べ、海外買収案件に融資する姿勢を示している。

他方、中国企業による「一帯一路」付近の国でのM&Aは、このところ大幅に増加している。ロイター通信によると、中国企業は8月半ばまでに「一帯一路」関係国68カ国で330億ドルの買収取引を行い、2016年通年の310億ドルを早くも超えたと伝えている。海外M&Aの規模は対照的に前年同期より42%減少している。(長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)

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