三菱UFGフィナンシャル・グループ(MUFG) <8306> が、金融資産数十億円の「超富裕層」の顧客を対象にしたサービスを強化することが分かった。毎日新聞が報じている。

MUFGは年度内にも、グループ傘下の銀行、信託、証券各部門のエース級社員50-100人を徴用して、新しい組織やブランドを創設する。報道によると、みずほFGや三井住友FGも同様の体制強化を進めており、金融業ビッグスリーによる超富裕層の顧客獲得を狙うビジネスが過熱しそうだという。

富裕層の集客には人間関係が重要

MUFG,富裕層ビジネス,FinTech
(写真=PIXTA)

各部門の社員は顧客の同意を得て、銀行、信託、証券の情報を共有する。例えば顧客がオーナー経営者の場合、個人資産や経営企業の財務状況、ニーズを把握して、資産形成のアドバイスを行う。また、グループ横断で投資信託など最適の商品を提案したり、株式売買を指南したりするという。

MUFGはこのサービスで2023年度、16年度比で500億円の収益増を目指す。グループ全体では、情報技術(IT)を活用した先進金融技術フィンテックを採用して、業務の自動化が進んでいる。

しかし、富裕層には人間関係の構築が特に重要だと位置付けている。グループ幹部は「豊富な業務知識に基づく提案力で、いかに富裕層の顧客と強固な信頼関係を築けるかがカギだ」と語っている(毎日新聞)。

15年時点で超富裕層は7万3000世帯、金融資産総額は75兆円

野村総合研究所などによると、金融資産5億円以上の超富裕層は、2015年時点で7万3000世帯、金融資産保有総額は75兆円と推計されている。株高などの追い風を受けて、11年時点の5万世帯、44兆円から大幅に増えている。

邦銀はこれまで、グループ内の組織の縦割りが壁となり、超富裕層向けサービスは「未開拓分野」とされてきた。最近は、この縦割りは解消されつつあり、超富裕層を構成するオーナー経営者が高齢化していることから、金融機関による事業承継サービスなどへの需要は高まっている。

日本の富裕層(超富裕層を含む)は、2014年末時点で、101万世帯、金融資産総額は241兆円となった。内訳は、富裕層が95.3万世帯、超富裕層が5.4万世帯。東日本大震災に見舞われた11年との比較では、世帯数は24.3%、金融資産総額は28.2%増となった。金融資産総額は、それぞれ16.7%、65.9%増加している。

このような統計を反映して、メガバンクはそれぞれ富裕層向け、特に超富裕層の資産運用に独自色を出すサービスを強化している。今回のMUFGのそれは、世帯数、純金融資産総額とも顕著な伸びを示す超富裕層に特化した、組織改編を含む大がかりなサービス強化であり、その成否が注目される。(長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)