強みは手軽さと独自色にあり

そんなネットフリックスの強みは、何と言っても手軽さと独自色の2つです。ストリーミング配信が始まるまでの爆発的な利用者の増加は、投函によるDVDレンタル制、そして返却日無制限というポイントが大きいですが、ほかにもユーザーが手をかけないで利用できる仕組みが整っていたことも忘れてはなりません。

例えば毎回わざわざ見たいDVDを選択しなくても、あらかじめインターネット上のレンタル希望リストに借りたいDVDをリストアップしておくことができます。1枚返却されると、リストアップしてあるもののうち、リスト上位にあるレンタルな可能なものから自動的にポストに届くという仕組みです。利用者にとっては、いちいち選ぶ手間を省くことができますし、ネットフリックスにとっては常に利用させておく仕組みを作ることで、退会者を減らすことができるというわけです。

またネットフリックスでは独自にコンテンツを作成。これらのコンテンツは、当然ネットフリックスでしか見ることができません。政治ドラマからコメディドラマ、トーク番組までさまざまなコンテンツが用意されています。しかもネットフリックスの独自コンテンツは人気が高く、2013年には米国で放送された優秀なテレビ番組に送られるエミー賞を受賞する作品まで登場しました。つまり米国においてネットフリックスとは、ただのDVDレンタル企業・動画配信企業という位置づけではなく、いちコンテンツ配信企業として認められていると言っても過言ではないのです。

他にもパラマウントやディズニーといった、人気映画会社と提携を結び、劇場公開後いち早く作品をストリーミング配信できる権利を獲得するなど、魅力的な独自のサービスを打ち出しています。


さまざまな業界を揺さぶるネットフリックス

こうしたネットフリックスの事業展開は、既存の映像業界だけでなく、通信業界などさまざまな関連業界を大きく揺るがしています。日本と違い、昔からケーブルテレビなどを利用して有料でテレビや映像コンテンツを楽しむ習慣を持っていた米国。ネットフリックスの快進撃は、そのままケーブルテレビや衛星放送の契約者減少につながっていると言われています。

また映画館もネットフリックスの影響を受けたと言われる業界の一つ。ネットフリックスには、映画館に足を運ぶ人が減ったと批判する声も上がっています。かつてある映画が新しい取り組みとして、映画公開から3週間後にストリーミング配信を計画していたことがありましたが、映画館側から要請などによりその計画が白紙に戻ったこともありました。

またストリーミング配信において、ユーチューブを凌ぐとも言われるその通信量と、実際にネットフリックスが支払っている利用料をめぐり、通信会社と摩擦が起こっています。こうした動きから、ネット接続業者に対する規制改革案が出されるなど、米国のネット関連業界全体を揺るがす事態にも発展しています。今後もネットフリックスをきっかけとした、さまざまな動きに注目が集まっています。


今後の日本での展開は

日本では著作権の問題や、米国に比べて有料テレビの普及が進んでいないこともあり、ネットフリックスの進出はまだ先だと考えられています。ただ、日本でも音楽配信におけるさまざまなサービス再編が行われているように、映像業界でもこうした激震が走る日は、そう遠くないのかもしれません。また、日本の風土にあった「日本版ネットフリックス」の登場の可能性もあります。ネットフリックスの今後の動向はもちろん、日本国内の映像関連事業の動きにも注目しておきたいですね。

【関連記事】
ウォルトディズニーの映画事業復活!!『アナと雪の女王』だけで終わらない!?
第3四半期過去最高売上のアップル、今後のイノベーションは!?

photo credit: Netflix via wikipedia cc