最近では、都市部を中心にマンションが人気です。東京においては、住宅の7割がマンションとなっており、地方都市部においても、駅前に新たにタワーマンションが建築される動きが見られます。
ただ、マンションの最大のネックは管理費・修繕積立金のほか、駐車場代や駐輪場代など、とかく維持費がかかること。年金暮らしになったあとも、払っていけるか心配な人もいるでしょう。
(本記事は、平井美穂氏の著書『
住宅ローン 借り方・返し方 得なのはどっち?
』河出書房新社(2017年1月15日)の中から一部を抜粋・編集しています)
担保評価が高い「新築マンション」はローン審査が通りやすい
住宅ローンの審査で金融機関は「人物」と「物件」の両面をチェックします。このうち物件については、いわゆる担保評価を算出します。万一、返済が滞り競売にかけた場合にいくらで売却できるのか、貸し手である金融機関が負うリスクを見るわけです。では、土地までついた戸建のほうが高い評価を得るかというと、そうとは限りません。
一般的に、戸建は土地と建物にわけて評価されます。担保の評価方法は金融機関によってまちまちですが、土地については実際に取引されている価格よりもかなり低い金額がはじき出されることが珍しくありません。土地価格が高い都市圏においては、半値くらいになってしまうケースもあります。
さらに、建物が築20年を超える木造家屋であった場合は、建物に対する評価額はゼロとなるのが普通です。築20年でも、きちんと手入れをしている家であれば、まだまだ快適に住むことができ、価値がゼロなどということはありません。しかし、日本の法律では、木造戸建の耐用年数が20年程度となっているため、金融機関は担保価値がないと見なすのです。なかには、築10年で担保価値ゼロとする厳しいところもあります。
たとえば、土地が3000万円、建物が800万円、合計3800万円で売りに出ている物件でも、銀行の担保評価額は土地のみの1500万円というケースもあります。フルローンを希望した場合、担保評価額に対して2倍超の金額の融資を申込むことになるわけです。借り手の条件次第では満額融資が認められるかもしれませんが、金額を減らした「減額承認」になる可能性も十分にあります。
一方、新築マンションは売買価格をそのまま担保評価額とみなす金融機関が多く、フルローンを組んだとしても担保の範囲をオーバーしません。
中古住宅の流通を阻害するような評価の仕方はおかしいのですが、中古より新築が、さらに新築戸建より新築マンションのほうが担保評価額は高く出やすい傾向にあるのが現実です。中古物件を検討している人は、新築マンションを購入するよりも多めの自己資金を準備しておく必要があるでしょう。
ただし、これはあくまでも「銀行の審査においては、新築マンションの評価は高く出る傾向がある」という話。実際の資産価値に関しては、必ずしも新築マンションのほうが戸建よりも高いというわけではないのでご注意ください。
諸費用が低くすむ「新築マンション」
住宅を購入する際には、「諸費用」が物件価格の4~10%程度かかります。諸費用は「物件にかかる諸費用」と「融資にかかる諸費用」にわけられます。それぞれどんな内容かを確認しておきましょう。
【物件にかかる諸費用】
- 申込証拠金(物件価格に充当)
- 不動産取得税
- 契約手付金(物件価格に充当)
- 固定資産税・都市計画税清算金
- 収入印紙代
- 管理費・修繕積立金清算金
- 仲介手数料
- 管理準備金・登記費用(表示・保存・移転登記)
- 修繕積立一時金
【融資にかかる諸費用】
- 事務手数料
- 火災保険料、地震保険料
- 金利選択手数料
- 登記費用(抵当権設定登記)
- 保証料
- 融資斡旋手数料
- 団体信用生命保険料
- つなぎ融資諸費用
- 収入印紙代
- 適合証明書取得費用(フラット35利用の場合)
これら以外にも、建替えの場合は古家の解体・撤去費がかかりますし、自主的にホームインスペクション(第三者の検査機関による住宅診断)や耐震診断を受ける場合などは、検査・発行費用もかかります。また、引っ越し費用やオプション代金、カーテンや照明・家具購入費用まで含めると、10%以上になるケースもあります。
買い替えは売却するのに「仲介手数料」がかかり、また、売却を先行しておこなうのであれば「仮住まいの費用」や、2回ぶんの「引っ越し代」も準備する必要があります。
注文住宅を建てる際は、土地を先に調達しなければなりません。ローンを組んで土地を買うなら、多くの人がつなぎ融資を利用するでしょう。
住宅ローンは、建物が完成してから融資が実行されるものですから、土地代金のほか、建物工事の着手金・中間金も、つなぎ融資を受けることになります。
つなぎ融資には事務手数料や保険料、利息が発生しますので、そのぶん諸費用が多くかかるわけです。
新築マンションの場合、諸費用は物件価格の4%ほどですが、中古マンションを仲介会社をとおして個人から購入する場合は、7~10%程度の諸費用を用意する必要があります。また、戸建の場合は、建売住宅を売主から直接購入するのであれば、4%程度の諸費用ですむケースもあるでしょう。
一方、土地を購入して注文住宅で建てる場合は、物件価格の10%程度は準備が必要です。買い替え・建て替えの場合は、さらに余裕をみる必要があります。
ローンで買うなら「借地権つき」より「所有地」
都心では借地権つき分譲マンションや、借地権つき戸建が人気です。土地価格が1坪400万円を超えるような都心の一等地でも、借地ならばサラリーマンも頑張れば手がとどく価格設定になっているのが人気の秘密です。
借地権つき住宅の場合、建物は自分の所有となりますが、土地は使用できる権利を買うだけであって、あくまでも地主の所有です。毎月の賃料や更新の際には更新料を支払わなければなりません。
それでも、都心の一等地はなかなか売りに出ませんから、資金的に問題のない人は借地もいいと思います。ただし、住宅ローンを組んで購入しようとすると、借地は不利になります。
金融機関によっては、土地が借地だと住宅ローンの融資をしません。通常、金融機関が住宅ローンを融資する際には、土地と建物に抵当権を設定します。
一方、借地の場合、土地の所有者は地主であって借り手ではないので、金融機関は抵当権を設定できません。借地上にある建物だけに抵当権を設定することになります。金融機関にとっては担保が不安定でリスクが高いため、一部の大手銀行を除くと融資をしていません。また、借地を取り扱う金融機関でも、返済期間が制限される場合があります。
借地は借り手の年齢がどんなに若くても、返済期間の縛りがきつくなる可能性があるので気をつけてください。さらに、何年後かに借り換えする際にも影響が出てきます。新築住宅は不動産業者の提携ローンを利用すれば、大手企業(不動産会社)の力を借りて審査が有利に働くこともあります。しかし、何年か住んだあとに借り換えをしようと思い、個人で銀行に申込みにいって「住宅ローンを借りるのに、借地はハードルが高い」とはじめて知る人もいます。
あるいは、借り換えのたびに地主に承諾料を支払わなければならないケースもあります。借地権つき住宅の融資を受けるときは、地主の印鑑証明書と承諾書を金融機関に提出するのが一般的ですが、地主によっては交換条件として承諾料を請求してきます。それ以前に地主が承諾してくれず、弁護士に依頼する騒動に発展した人もいました。
借地権つき住宅を買う場合は、賃貸借契約書の内容がどうなっているか、十分に確認しておくことが大事です
どうしてもその場所に惚れこんでしまうということもあるでしょうが、住宅ローンを組むうえで借地は不利になると覚えておきましょう。
平井美穂(ひらい・みほ)
平井FP事務所代表。宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、証券外務員1種。大学卒業後、新築マンションの販売会社で営業を経験。なかでも特殊ケースの顧客の住宅ローンプランニングが得意。その後、銀行およびモーゲージバンクへ転職し、融資業務・金融商品販売に従事する。出産を機に独立系ファイナンシャルプランナーとなり、公正中立な立場で「相談者がもっとも得する住宅ローン」の借り方をコーチしている。5000件超の相談実績を誇る、実践派の住宅ローンプランナー。
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