メガバンクが超富裕層を対象としたビジネスを強化すべく傘下の銀行、信託、証券各部門のエース級社員を集めた新組織・新ブランドを創設し、資産承継など顧客ニーズに応えるサービスの拡充に動き始めた。その一方で、地方銀行の富裕層向けビジネスは未だに「出口の見えないトンネル」をさまよい続けている。私が携わる富裕層向けビジネスや金融商品販売の現場も例外ではない。経営幹部はどこまで本気なのか、まさか銀行を潰す気なのか、身内ですらそう疑いたくなるのが実情だ。

金融商品販売の最前線は「しらけムード」

地方銀行,富裕層向けビジネス
(写真=Thinkstock/Getty Images)

我が銀行の頭取や役員はメディアを通じ、金融商品の販売に力を入れることを盛んにアピールしている。金利の低下でいくら融資を増やしても利ザヤを稼げないのだから、手数料収入に注力するよりほかないのは当然だ。彼らは金融商品の販売こそが「今後の銀行の収益の柱となる」と明言する。

なればこそ、最前線にいる我々の仕事が花型部門になるに違いない……金融商品販売に携わるすべての同僚がそう考えていた。

しかし、現実はどうだろう。過度な期待と、それに見合わない待遇・報酬に嫌気が差し、銀行を去った者もいる。働く意欲を失った者もいる。経営陣は表向き金融商品販売の重要性を繰り返し語っているが、そんな言葉とは裏腹に現場ではしらけムードが漂っているのだ。

的外れな「犯人捜し」がもたらす悪循環

「なぜ、投資信託の販売が伸びないのか?」「なぜ、成果があがらないのか?」経営幹部は原因究明を命じる。

命じられた社内官僚の回答はこうだ。「現場の人間の能力が下がっています」。そして、その改善策として行員向けの勉強会やセミナーが開催される。理由も知らず無理矢理受講させられる行員は不満を募らせる。「なぜ、こんなレベルの低い話をわざわざ聞かされなければいけないのか?」「まったく時間の無駄だ」と。

社内官僚が考えるほど問題は単純なものではない。そもそも金融商品の販売は相場環境に大きく依存するし、顧客ニーズに合った魅力的な商品を品揃えできているかにも左右される。銀行としての営業戦略だって重要だ。

現場の人間の能力が低下しているなどと「的外れな分析」に基づく「的外れな勉強会」が彼らのアリバイづくり的に繰り返され、時間とコストを浪費し、現場には大きな不満だけが蓄積される。そんな悪循環が延々と繰り返されているのだ。

「古き時代の呪縛」から逃れられない者たち

なぜ、こんな馬鹿げた負の連鎖から抜け出すことができないのだろう。一言でいえば彼らが「金融商品を販売することの難しさを知らない」からにほかならない。

「投資信託の販売なんて女性行員にやらせておけば良い。一線級の人材には融資をやらせるべきだ」いまだに地方銀行ではそんな前時代的な呪縛から逃れられない者がたくさんいる。

一方で銀行や証券会社間の競争は激しさを増し、顧客の目も以前とは比較にならないほど厳しくなっている。「定期預金の金利が低いので投資信託で運用されてはいかがですか」かつて、銀行ではそんなセールストークで成果を上げることができた時代があった。そんな古き時代を忘れられない者が「現場の人間の能力が下がっている」と決めつけている側面もある。

地方銀行は「人材の草刈り場」と化すだろう

このまま金融商品の販売低迷が長期化するようであれば当然、銀行の収益の屋台骨が揺らぐことになる。自社の投資信託を販売してもらおうと、銀行に熱心に働きかける投信会社に見限られる可能性だってある。投信会社だけではない。金融商品販売の最前線にいる行員だって愛想を尽かし始めているのだ。

優秀な銀行員の流出が続くようであれば、地方銀行は人材の草刈り場と化すだろう。本当に人材がいなくなってしまう前に、経営陣は現実に目を向けなければならない。社内官僚のフィルターを通してではなく、現場で起きている現実を知るべきだ。(或る銀行員)

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