意志が弱い人でも続けられる習慣化の技術!
もうすぐ夏が終わろうとしています。
「今年こそダイエットしようと思っていたのに、結局できなかったなぁ。来年こそは頑張るぞ!」
そんなふうに思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。私も毎年新年の抱負を掲げては、夏に反省をくり返していました。
しかし、2015年の夏に、ある偶然の出来事がきっかけで習慣化の技術をマスターし、ダイエットに成功することができたのです。今日はその秘密について少しご紹介したいと思います。
三重苦だった私
私は人一倍意志が弱い人間で、人生は常に楽なほう楽なほうへ流されてきました。お金は手元にあればあるだけ使ってしまい、常に財布はスッカラカン。お酒が大好きで、会社の仲間に「今日、一杯行かない?」と誘っても、「お前の場合は“一杯”じゃなくて“いっぱい”だろ」と言われる始末。しかし、ふたを開けてみれば、いつも周りのみんなが言っていた通りになっていました。
飲み会に誘い誘われ、暴飲暴食を続けた私がどうなっていったかはご想像の通りです。ブヨブヨと太っていきました。
このままではマズイと一念発起してスポーツジムに入会するも、意志が弱い私は3日もしないうちに布団の中から出られなくなっていき、「明日こそは!」「明日こそは!」と先送りをくり返しているうちに、月謝だけを上納する幽霊会員になっていきました。
ここまでくると、ファッションなんてどうでもいい。少しでも引き締まって見える黒や紺の服をまとめ買いする。そして、体型に合った服選びを楽しむというより、体型を隠すために大きめの服をダラリと着る。その頃の私にとって、服は「着るもの」などではなく、醜い肉体を「覆い隠すもの」でした。
こうして、さんざん「無駄遣い」「暴飲暴食」「無頓着」を繰り返した報いとして、私は「ビンボー」「デブ」「非モテ」の三重苦に陥っていたのです。
では、なぜこれほどの意志の弱い私が、貯金、ダイエット、筋トレと、次々に習慣化に成功し、人生のどん底から這い上がることができたのでしょうか?
きっかけは“スマホで家計簿”
藁をもつかむ思いで私がつかんだのは、スマホでした。とにかく、情けない金銭感覚を是正しなければいけないと思ったのです。
まず、ネットでお小遣いを管理できる家計簿アプリを検索し、「これだ!」と思うものをスマホにインストールしたのが、すべてのはじまりでした。
買い物するごとにスマホを取り出してデータを入力していると、瞬時に最新のお財布状況が更新されるので、自分がどれだけ節約できているかが一目瞭然になります。
すると、もっといい成績を出そうと思うようになり、欲しい物が出てきても、「この買い物は辛抱しよう」「ここで無駄遣いしてはいけない」という具合に脳が働き、まるでゲームにハマったように無駄遣いを減らすことができるようになっていきました。
家計簿習慣が引き起こした、思いがけない変化
家計簿をつけ始めてから3週間が経ったころ、私は歯を食いしばって必死にダイエットプログラムに取り組むこともなく、5kgの減量に成功していました。
今までは何度ヤセようとしても全然うまくいかなかったのに、なぜ一見ダイエットとは何の関係もない“家計簿をつける”という行為によって、私は贅肉を落とすことができたのでしょうか?
それは、“お金を使わないこと”が“ヤセること”に直結していたからです。私たちの体は、「いつ食べられるかわからない」という太古の飢餓時代のことを覚えていて、食べたものを脂肪にして蓄えようとし、動きを抑えて、せっせと蓄えた脂肪が無駄に使われないようにしようとする特徴があります。つまり、“食べること”と“運動しないこと”に対してお金を使いたいと思うのです。
ところが、節約ゲームに夢中になると、なるべく無駄にお金を使いたくないという気持ちが大きくなっていくので、飲食費や交通費(=楽して移動するためのお金)をなるべく減らしたいと思うようになります。その結果、安易に飲んだり食べたりする量を抑え、電車やタクシーを使わずに、積極的に歩くようになるというわけです。
こうして、私は3週間で5kg、3ヶ月後に18kg、体重を落とすことができたのです。
成果が目に見え始めると、「もっと結果を出したい!」と思うようになるものです。調子に乗ってきた私は、筋トレを始めることにしました。
と言っても、張り切ってジムに通おうとするとすぐに続かなくなることが目に見えていたので、すべて自宅でできる、通称「宅トレ」メニューを組むことにし、無理せず、1日数回の腕立て伏せ、腹筋、スクワットなど、確実にできるメニューをくり返しました。
それから2年以上経っていますが、今や歯磨きと同じレベルで、ほぼ無意識に貯金、ダイエット、筋トレを継続しています。
習慣化のカギは、意志の力を使わないこと
ではなぜ、意志の弱い私が次々に習慣化に成功することができたのでしょうか? それは紛れもなく、意志の力を使おうとしなかったからです。
フロリダ州立大学の心理学者、ロイ・バウマイスターは、いくつかの実験を通じて、意志の力は使えば減っていく「ガソリン」のようなものであると立証しました。そう考えると、人間は車のようなもので、最初はガソリン満タンの状態なので意気揚々と走ることができます。しかし、やがてガソリンは減り、最後はガス欠になってしまいます。
それなら、習慣を定着させるためには、ガソリンを使わずに進み続ける方法を考えればよいのです。
そのヒントは、皆さんが学校で習った「慣性の法則」にあります。空気抵抗や摩擦がなければ、物体は一定速度で一直線に進むということを教わった記憶がありませんか?その法則に大きなヒントが隠されています。
南極のペンギンになってみよう!
それでは、具体的にどのようにすればよいのか?習慣を持続させるために、私は7つの方法を考えましたが、ここではそのうち3つをご紹介したいと思います。
皆さんは、慣性の法則を上手に使って移動する動物をご存知ですか?そう、ペンギンです。ペンギンは、平たい氷の上にお腹をつけるようにして滑り込み、ほとんど自分の力を使わずに、ツルツルと気持ちよく前に進んでいきますよね。
ペンギンは滑るために、自分の力を使うのではなく、平らなツルツルの床を使っています。人間も同じで、無理に「続ける」のではなく、自然に「続く」環境をつくればよいのです。
例えば、私が「フラット化」呼んでいる技術があります。新年の豊富を実現できる人が少ないように、目標を高く掲げるのは床の傾斜確度を上げることに似ています。急な坂道を登ろうとすれば、たくさんガソリンを消費してしまいます。ところが、あまり高い目標を掲げなければ、ガソリンを消耗することもありません。ペンギンは平坦な摩擦のない氷の床だからこそ、長く滑り続けることができます。
もし私がダイエットのためにいきなりハードなトレーニングメニューに取り組んでいたら、どうなっていたでしょうか。過去にそうだったように、すぐに挫折していたでしょう。新しい習慣を始めるときには、あえて大きな志を抱かないで、目標を低くすることをお勧めします。
騙されたと思って試してみれば、人生が変わる!
もう1つの技術は、「細分化」です。アフリカには「象を食べるには一口ずつ」ということわざがあるそうです。習慣も同じで、毎日大きな課題に取り組もうとすると、すぐに心が折れてしまいます。
ペンギンの例で言うなら、目の前に大きな氷山があるようなものです。ああ、あの山を切り崩さなければならないのかと思うと、心が折れてしまいますよね。それならば、大きな氷山を小さな氷に砕いてしまえばよいのです。私も「100万円貯める」という大きな課題に取り組むのではなく、毎日数回スマホで家計簿をつけるだけの、小さな習慣に着手しました。
最後に、もう1つ。「見える化」という技術をご紹介します。これは、自分がやったことの成果を見えるようにすることです。ペンギンの手の届くところに小魚があったらどうでしょう? あの魚を食べられるならやってみようと思いますよね。私の場合は、スマホで家計簿をつけることによって、節約の成果が可視化されました。
また、太っている状態で筋トレを始めるのではなく、ある程度食事で贅肉を落としてから筋トレを始めることで、筋肉のハリが目に見え、毎回効力感を得ることができました。1回1回の取り組みの効果を感じられる仕組みをつくっておくことが長続きの秘訣になるのです。
この他にも4つの技術がありますが、それらを組み合わせることができれば、私の人生に奇跡が起きたように、あなたがこれまでずっと挫折してきた習慣も、今度こそ長続きさせることができるはずです。
ぜひ一度、騙されたと思って試していただけましたら幸いです。
川下和彦(かわした・かずひこ)3ヶ月で18kgの減量に成功/
1974年兵庫県生まれ。大学院修士課程を修了後、2000年広告代理店に入社。人一倍意志が弱く、お酒が大好き。誘われたら「NO」と言えず、飲み歩く毎日。新卒で入社後、みるみる体重が増加し、身長175㎝で体重80kg超えに。「これではイケナイ!!」と、藁をもつかむ思いでスマホをつかみ、家計簿をつけ始めたところ、わずか3週間でマイナス5kg、3ヵ月後には18kgのダイエットに成功。ジーンズのウエストは、34インチから29インチに。プヨプヨのスリーパック(三段腹)は、キレキレのシックスパック(割れた腹筋)に。今でもリバウンドしていない。趣味(と実益)は、お酒と筋トレ。41 歳にして習慣化の極意を体得し、人生が変わった。目下、人生快走中!
著書に『家計簿つけたら、ヤセました!』(あさ出版)。
(『 The 21 online 』2017年08月23日公開)
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