書類は3種類に分けて、それぞれ管理しよう

髙原真由美,片づけのコツ,時短デスク
(写真=The 21 online/髙原真由美(日本ライフオーガナイザー協会代表理事))

仕事で必要なモノや書類がすぐに取り出せずに、探し物ばかりしてしまうのは、時間のムダと言える。とはいえ、忙しいからと片づけを後回しにすると、気がつけば書類などがたまりがち。自らも会社員時代は整理整頓が苦手だったと語る髙原真由美氏に、必要なモノや情報がすぐに取り出せる「時短デスク」の作り方について教えていただいた。《取材・構成=内埜さくら、写真撮影=まるやゆういち》

今、とくに課題なのは増え続ける情報の整理

現代は情報過多の時代。放っておいても情報はどんどん集まってきます。とはいえ、不要な情報だけを初めから遮断するのは難しい。膨大な情報量をいかに自分に見合った形で整理し、必要な時に見つけ出せるかという「検索力」が必要な時代になっていると思います。

仕事で扱うデータや書類も、情報の一種です。これらについても、5年前、10年前と比べて飛躍的に増大していると言えるでしょう。

仕事中に必要なモノや書類、データがすぐに出て来ず、それを探す時間ほどムダなものはありませんが、こうした情報過多の時代においては、中でも書類などの情報整理が喫緊の課題になっているのは間違いないでしょう。そこでまずは、情報管理の方法からお話しします。

必要な書類は「3種類」のみ!

書類には大きく分けて三つの種類があります。一つ目は、「フロー」。現在進行中の仕事で使っているものです。

二つ目は、「ストック」。「フロー」のように頻繁に参照するわけではないけれど、保管しておく必要があるものです。具体的には、法律で一定期間の保管が義務化されている法務・税務関係の書類や、事業計画関連など企業ごとのルールによって保管が必要な書類です。

三つ目が「リファレンス」です。これはたびたび参照するマニュアルや説明書のこと。たとえば、壊れやすい機器類の取扱説明書や、今は使用頻度が減っていますが電話帳などが該当します。

この3種類が必要かつ保存すべき書類で、このいずれにも当てはまらない情報は「不要」ということになります。最初に書類を分別し、不要な書類を捨てることから始めましょう。「フロー」の書類は使用後に不要になることが多いものですが、それをそのまま溜め込んでしまうと「不要」な書類が増えていきます。「フロー」は期間が過ぎたらその都度破棄するのが書類を溜めないコツ。どうしても心配なら、スキャナを活用して書類をデジタル化し、紙は捨ててしまいましょう。

そのうえで、この3種類の書類をどう保管するかについてご説明します。実は、探し物に時間をかけている人の場合、高確率でこの三種類を混在させている傾向があります。まずはこの三種類をそれぞれ別々に保管することをルールとしましょう。そのうえで、「ストック」は見返すことがないため、資料室など「フロー」「リファレンス」とは別の場所に隔離しておくといいと思います。

項目別か時系列か、自分に合う方法を

個人の裁量によって保管の仕方が問われるのが、「フロー」です。万人に共通するベストな方法があるわけではなく、自身の職種や性格に合った管理方法を見つけ出すことが、整理整頓への一番の近道です。

フロー情報の整理方法としてお勧めの方法は、大きく分けて二つあります。

一つ目は、案件やプロジェクト、お得意先などの「項目別・顧客別」に整理する方法です。そのうえで、クリアファイルなどを使って管理するとわかりやすいでしょう。

私自身が実践しているのは、6色のクリアファイルを目的別に分けて使う整理法です。航空券やホテルの予約書類など出張関連は青色、決済などの金銭関連は黄色、迅速に処理すべき書類は赤色、イベントや行事などは紫色、別会社関連の書類は緑色。透明のクリアファイルには分類するほどではない書類を入れて平積みしています。

私はこの整理法を「パイリング」と呼んでいます。書類が平積みされてもクリアファイルの色で内容がわかるので便利。クリアファイルにインデックス付箋をつけて、優先順位や種類別に分類してもいいでしょう。

もう一つは、「時系列整理法」です。たとえば月ごと、週ごと、さらに細かく日ごとにファイルを作って保管する方法です。ある弁護士秘書の方は、「デスクの一番下の引き出しに1日から31日まで番号をふったファイルを入れて管理」という方法を採っていました。

どの方法が自分に合っているかは、職種や性格によるところが大きいと思います。まずは自分に合いそうな方法を実行してみて、改良を加えて最適な整理法を見つけてみて下さい。

まずは「使用頻度」でモノを整理してみよう

次に、情報以外のモノの整理についてもお話ししましょう。近年は固定席ではなくフリーアドレスを採用する企業が増えつつあります。社員が個々に机を持たないオフィスで働く場合は、書類などの「情報」以外の文房具等、「モノ」を必然的に減らすことを迫られているはずです。

「モノ」を減らす際の基準は、まずなんといっても「使うか、使わないか」という使用頻度です。ここでは、自分が業務で必要とするモノを「選び取る力」が問われると言えるでしょう。モノの一つひとつと向き合い、本当に必要かどうか、使っているかどうかを考え、使わないモノは処分します。

このとき、よく言われるのが、「ボールペンを何種類も持つなど、同じ用途の文具を複数所持するのはムダ」ということです。しかし、本当にそうでしょうか。

私自身もそうですが、ペンなどは「普段使いはこれ」「宛名を書くならこれ」と、用途に応じて使い分ける場合もあると思います。そういうときは無理して1本に絞らず、複数本持参しても問題はないと考えます。杓子定規に「1種類につき1つ」とするのではなく、あくまでも本当に必要なモノを残すという感覚で良いのです。

思い入れのあるモノ」を残しても良い理由

また、モノを減らすときには「使うか、使わないか」という基準の他にもう一つ、「持っていたいかどうか」という判断基準を取り入れると良いと思います。

「持っていたいかどうか」がなぜ大事なのか、具体例を挙げて説明しましょう。以前、ある企業が移転を機にフリーアドレス制に変えることになり、「片づけ」のプロデュースを担当させていただいたことがあります。それまで個人の引き出しにたくさんのモノを詰め込んでいた社員のみなさんは、小さなロッカーひとつに収まる量まで荷物を減らさねばならなくなりました。ロッカーに残すモノについては、規定に沿っていれば中身は問わない方針だったので、社員一人ひとりが判断する必要がありました。そこで、残すかどうか迷ったアイテムはそのモノに対する「思い入れ」と「感情」を優先して分類したのです。

たとえば、ある若手男性社員は、好きなキャラクターのぬいぐるみを個人ロッカーに残すと決めました。帰宅前にロッカー内でぬいぐるみを見るだけで、疲れが癒され、仕事の達成感を覚えるから。他にも、「仕事中にお菓子を食べるとモチベーションが上がるから」と、お菓子を残した女性社員もいました。

このように、他者からは一見不要と思われるアイテムであっても、本人には「これがないと仕事への意欲がわかない」といったモノは、誰しもあるものです。仕事とは直接関係していないかもしれませんが、それがあることによって仕事の効率やモチベーションが上がり、結果パフォーマンスも高くなるようなモノであれば、無駄として切り捨てるべきではないのです。

また、そうした大切なモノだからこそ、ごちゃごちゃと不要なモノの中に埋もれさせずに整理しておこうという気持ちにもなるのではないでしょうか。

片づけを継続するコツは「無理をしない」こと

このようにお伝えすると、「仕事に関係ないモノでも、残しておいてもいいなんて」と驚かれますが、片づけの目的はあくまで、自分にとって快適な環境を作り、仕事の効率をアップすること。「片づける」と決意した直後、大半の方は頑張りすぎる傾向がありますが、あまり厳しいルールを課すと、実行できなかったときにかえってストレスを抱えることになります。

それでも片づけるのが苦手でモノを溜めてしまいがちな人もいるでしょう。そんな人は、月に一度程度でいいので「環境を整える日」を設定して、その日に書類やモノを見直す習慣を持ちましょう。逆に、その日以外は片づけなくてもいいと決めてしまうのです。このような無理をしない方法こそ、整理された状態を保つ秘訣です。

髙原真由美(たかはら・まゆみ)(一社)日本ライフオーガナイザー協会代表理事
1969年、徳島県生まれ。大阪府在住。髙島屋で12年間、インテリアコーディネーターとして住宅・オフィス合わせて600件以上の物件を手がける中で、アメリカの整理のプロ、オーガナイザーという職業に出会い、その技術と知識の普及を目的に2008年に日本ライフオーガナイザー協会を設立。より楽しく、有意義な人生を生きられる人を増やすための専門的な人材の育成と普及活動を行なう。著書に、『利き脳片づけ術』(小学館)、『徹底図解 成果が必ず出る!ビジネス整理術』(日本文芸社)などがある。(『 The 21 online 』2017年8月号より)

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