不動産投資を成功させるには、まず、数ある運用方法の中での不動産投資がどういったメリットとデメリットを持っているかを確認することが重要です。また、「新築と中古」「住居用・商業用」「首都圏・地方都市」など、それぞれの物件の「長所」と「短所」を理解しましょう。

(本記事は、加藤隆氏の著書『 不動産投資家なら必ず体験する!本当にあった怖い話 』ぱる出版(2017年1月10日)の中から一部を抜粋・編集しています)

不動産投資の長所をまず知ろう

不動産投資,大家
(写真=PIXTA)

まず、この項では不動産投資の長所を挙げてみます。

①自分でコントロールが可能

株等は自分が大株主でもない限りその会社の業績を良くすること等できませんが、不動産の場合には、修理・リフォーム・リノベーションをしたり、入居付けに工夫をしたり、資金調達を工夫したりして、資金繰り・収益・財務内容を改善することができます。

②インサイダー的発想はなく、相対取引

外国為替・貴金属・株等は相場があり、割安価格で買ったり、割高価格で売ったりすることはできません。また、株ではインサイダー規制があり、特殊情報を活用した売買は禁止されています。その点、不動産は、特殊情報を入手して、割安価格で買ったり(相続で売り急ぎ等)、割高価格で売ったり(実需層への売り等)することが可能です。

③競争が激しくない

外国為替・貴金属・株等に比べて、不動産はまだ競争がさほど激しくはありません。

④家賃というインカムゲインがある

外国為替・貴金属・株等は、通常は値上がり益(キャピタルゲイン)期待で不安定ですが、不動産は、家賃収入という安定収入(インカムゲイン)があります。
そのため、規模を拡大して家賃収入を増やすことで、会社をやめて専業大家になるという道も拓けます。

⑤インフレに強い

借金を抱えて実質破綻している日本で紙幣・国債増刷によるインフレを想定した場合、相対的に、貨幣価値が下がり、数に限りのある実物資産の価値が上がるので、借入金を活用して、不動産経営を行うのがベストと考えられます。

⑥キャピタルゲインが得られる可能性もある

前述のインフレを想定した場合等、あわよくば、インカムゲイン(家賃)だけでなく、
キャピタルゲイン(値上がり益)を得られる可能性もあります。

⑦借入が可能(インフレ、レバレッジ、節税、保険)

外国為替・貴金属・株等は借入金を活用できませんが、不動産は借入金を活用できます。 借入金を活用することには、次のようなメリットがあります。

  • 金融機関により準第三者的な目で属人・属物チェックをしてもらえること
  • 現金が貯まるのを待つまでもなく、早めに高額のものも購入対象にできること
  • インフレメリットを最大限に享受することができること
  • 低利で資金調達して高利で運用することにより、レバレッジをきかせられること
  • 支払金利の経費計上により節税(所得税・住民税)が図れること
  • 借入金は実額控除、不動産は評価減で節税が図れること(相続税)
  • 団体信用生命保険(団信)の活用により保険機能を活用できること

⑧生命保険の代わりになる

借入金を活用した不動産経営においては、団体信用生命保険により、死亡・高度障害時には、相続人には借入金のない不動産が残され、家賃がほとんど手残りとなります。これは、外国為替・貴金属・株等にはない機能です。

⑨管理の手間がかからない

外国為替・貴金属・株等は24時間世界中のどこかで市場が開いているため、デイトレーダーは大変です。
不動産の場合は、サラリーマンでも信頼できる不動産会社に管理委託できれば、ほとんど手間暇はかからず、遠隔地エリアでも数が多くても、運営できます。

⑩節税ができる(減価償却費、人件費、事務所関連費、日常家事関連費等)

外国為替・貴金属・株等に節税機能はありません。不動産は、不動産所得を赤字にし、給与所得と損益通算させることにより、節税(所得税・住民税)することができます。
その肝は、減価償却費と日常家事関連費(人件費・事務所費等)の不動産経営用経費計上です。また、税務上の評価をあえて下げることにより、相続税も節税できます。

⑪社会的意義がある(住宅供給、自己救済)

外国為替・貴金属・株等はマネーゲームの感がありますが、不動産は、住宅供給という社会的意義があります。

⑫人脈を作れる、経験を積める

外国為替・貴金属・株等はマネーゲームで引きこもりの感がありますが、不動産は、不動産会社・金融機関・各種士業の先生・不動産経営仲間等とのおつきあいもあり、人脈が広がります。また、不動産、法令、会計・税務等のノウハウも形成され、ノウハウを積み上げていくことができます。

不動産投資の10大リスク

次に不動産投資の短所(リスク)を列挙します。

①自然災害

地震、二次災害としての火災、建物倒壊、津波・原子力発電所爆発・放射能漏洩、火山爆発等、そして、台風等の自然災害リスクです。

②空き室

空室になると、水回り(バス・トイレ・洗面所等)が傷みやすい上に、家賃が入らなくなります。また、建物管理費・修繕積立金、固定資産税・都市計画税等経費だけが発生し、赤字となります。

③資産価値下落

建物は劣化していきますし、不景気な日本では、家賃・不動産価格は下がる傾向にあります。

④賃料下落

少子化の進む日本では今後、家賃・不動産価格は下がっていくことが見込まれます。

⑤家賃滞納

属性の悪い低所得者等は、家賃滞納のリスクが高まります。
日本は、賃借人に甘く、3カ月間程度以上の滞納でないと追い出すことが実質不可能です。入居者を募集するわけにもいかず、空室より始末が悪いと言えるでしょう。

⑥修繕一時金などの支払いが増える

区分所有マンションにおいて、管理組合による修繕積立金が不足していると、修繕一時金として、多額の金銭を要求されることがあります。

⑦設備故障

古い物件になると、階下への水漏れ等が多発します。49

⑧予期せぬ支出

築古一棟マンション等では、水回り(配管等)、壁面塗装・屋上塗装、エレベータ等、大規模経費が発生することがあります。
この他にも、予想しないトラブルも起こるものです。私自身、バブル崩壊、耐震偽装・建物傾き、事件・事故(不自然死・自殺・殺人等)、悪徳金融機関・悪徳不動産会社に騙されて、手付金不返還・違約金請求・仲介手数料搾取等を経験しています。そして、これらのすべてに予期せぬ支出が伴います。

⑨増税

不景気な日本では、増税の嵐です。特に、取りやすいところから取れとばかりに、サラリーマンは、「生かさず殺さず」・「濡れタオル」で、搾り取られています。
不動産は、「税金のデパート」と呼ばれているように、取得時(印紙税、登録免許税、不動産取得税)、保有時(固定資産税・都市計画税、所得税)、売却時(印紙税、登録免許税、不動産譲渡税)、相続時(相続税)と、税金だらけです。

⑩金利上昇

好景気・インフレ時等、変動金利の場合には、支払金利が上昇するリスクがあります。

このように不動産投資には様々なリスクがあります。不動産投資で大切なのは、「負けない」ことであるとよくいわれます。これはつまり、大きく稼ぐことよりも、これらのリスクにうまく対応し、大きな失敗を防ぐことの方が、結果的に成功に近づけるということです。

新築物件にも多くの落とし穴がある

次に、新築物件のメリットとデメリットを見ていきます。新築物件には、以下のメリットがあります。
○建物・設備が新しいこと(機能・技術、建築基準法)。
○耐用年数が長いこと。
○融資が受けられやすいこと。
○減価償却費対象の建物比率が高く、節税効果が高いこと。
○当面、修繕費は発生しにくいこと。
○耐用年数が長く、借入期間も長く取れる為、キャッシュフローが高くなること。
○中古・オーナーチェンジ物件では無い為、部屋の中が見られること。

逆に、新築物件には、以下のリスク・デメリット・落とし穴があります。
×価格が高いこと。
×利回りが低いこと。
×残存耐用年数が長い分、節税効果は長期間に薄まること。
×購入契約時、事前に、建物を見ることができないこと。

新築物件は、販売会社の販売広告宣伝費・利益等がたっぷりと3割は乗っかっているとも言われています。一旦購入したら、中古です。また、家賃も人が住み始めた時点で「新築プレミアム」はなくなり、数年もせずに下がります。その分、利回り・キャッシュフローもいまいちになりがちです。そして、2005年頃に流行った「耐震偽装」、2015年に流行った「杭打ち傾き」のようなリスクもあります。

事前に売買契約した後、ちゃんとした建物が建つ保証はありません。私自身、2005年の耐震偽装事件のときは、博多・名古屋の新築アパートの施工をお願いしていたS社が、偽装物件を建てていたとニュースで知って、心臓がとまりそうになりました。幸い、私の物件は問題がなく、S社も九州を中心に実績のあるきちんとした会社ですので、その件で倒産するということもありませんでした。しかし、S社以外のいくつかの会社は倒産しました。そのような会社の物件を買った人は、物件の資産価値は暴落し、満足な保証もされず、ローンと資産価値のない物件、そして大きなストレスを抱えることになります。

2015年にマスコミを騒がした「杭打ちが届いておらず、建物が傾いた事件」に関しては、施工・販売会社が大手だったため、建物の建て替えが決まり、購入した人たちが損をすることはありませんでした。

この違いは、施工・販売会社の経営方針や財務体質などにあります。耐震偽装事件でつぶれた会社はいわゆる新興系不動産会社でした。日本に不動産会社は数え切れないほどあり、その中にはおかしな会社も多くあります。何かあったときに、責任を取る会社なのか、逃げる会社なのかで、オーナー側のリスクは大きく変わってきます。どの会社の建物を買うか、どこから買うか等については、決算内容や評判などをしっかり調べてから、決断するといいでしょう

中古物件はリスク前提で購入する

中古物件のメリットとデメリットを見ていきましょう。中古物件には、以下のメリットがあります。
○価格が割安なこと。
○利回りが高いこと。
○残存耐用年数が短い分、節税効果は短期間に圧縮されること。
○建物を事前に見ることができること。

逆に、中古物件には、以下のリスク・デメリット・落とし穴があります。
×建物・設備が古いこと(機能・技術、建築基準法)。
×耐用年数が短いこと。
×新築物件に比べ、融資が受けられにくいこと。
×減価償却費対象の建物比率が低く、節税効果が低いこと。
×修繕費が発生しやすいこと。
×耐用年数が短く、借入期間も短い為、キャッシュフローが低くなること。
×オーナーチェンジ物件の場合、部屋の中が見られないこと。

1981(昭和56)年6月以前建築申請の旧耐震基準物件は、大地震に耐えられず、倒壊するリスクが高くなっています。旧耐震の物件は、融資受けも困難です。融資が受けられても、残存耐用年数が短く、融資期間も短く、キャシュフローも悪化します。それに、古い建物で多い3点ユニット式(バス・トイレ・洗面所一体型)は不人気です。オーナーチェンジの場合、中を見ることができないので、長期間入居後退去の場合、開けてみてビックリ!!多額のリフォーム費用が発生する場合もあります。私も2015年に購入した中古物件で、退去後の補修に200万円以上の費用がかかり、収支計算が狂ってしまったことがありました。今思えば、中が見られないなら、せめて工事をするとお金がかかる水周りの写真や、室内を撮影した動画などを見せてもらうべきでした。特にペットを飼育している物件などは、ものすごく傷んだり汚れたりしていることがあります。

基本的に、中古物件というのは元のオーナーが「今のうちに売ってお金にかえておこう」と思うような何かがあるから、市場に売りに出されるのです(相続物件はそうでない場合もありますが)。空室が複数あるのに、購入前に一部の部屋しか中を見られない場合などは、他の部屋に見てほしくない問題があるのかもしれません。また、シロアリ等の被害がある場合もあります。このリスクを防ぐために、買い付け証明書に、「シロアリの被害がみつかった場合には、買付を取り下げます」という条件をつけて買付を入れているという人がいました。また、知り合いの大工さんに日当を払ってついてきてもらい、リフォームにかかる費用をざっくりと教えてもらうというのもいいと思います。人によっては、すべてのリスクを背負う覚悟で、その代わりに、指値を入れてかなり安く買うという人もいます。

いずれにせよ、中古物件は「買った後で何かあるかもしれない」という前提で購入することが大切です。

加藤隆
バブル崩壊を生き抜いた現役最古参のサラリーマン大家さん。所有物件50を誇る、実践的・総合コンサルティング系マルチタイプ投資家。行政書士、宅地建物取引主任者、甲種防火管理者、管理業務主任者、マンション管理士、AFP、2級FP技能士、システム監査技術者等保有

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