よい習慣、というものがあります。人に何かをしてもらったら必ず「ありがとう」と感謝の気持ちを言葉で伝える。ちょっとムカッとしたことがあっても、すぐには口に出さず、自分のことを振り返る「間」を持つ。このような習慣の積み重ねが、時間をかけてその人らしさを形づくっていきます。一方、悪い習慣、というものもあります。

(本記事は、永井孝尚氏の著書『 残業ゼロを実現する「朝30分で片付ける」仕事術 』KADOKAWA(2017年6月15日)の中から一部を抜粋・編集しています)

習慣はなかなか変えられない

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(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

私は自宅から駅までいつも決まった道を歩いています。

あの道の右側を通って、あそこを右に曲がって、まっすぐ並木道の坂を下って、交差点を通過して、坂を上った先を左に曲がって……というのは、すでに身についたルートなので、無意識に歩いています。

ある日、この通勤路で工事がありました。

いつもの道で工事にぶつかったとき、「明日からこの道には入らず、ちょっと遠回りになるけど、あそこでまっすぐに行くようにしなければ」と思いました。しかし、150翌日はすっかり忘れて、いつもの習慣でまた工事に突き当たります。数回これを続けて、やっと習慣が変わりました。

数週間後に工事が終わり、元の近道を歩けるようになりましたが、遠回りが習慣になったので、今度はなかなか元に戻りません。些細なことですが、毎日の習慣を変えるのは、意外とむずかしいことを実感した出来事です。

そうしないと気持ちが落ち着かない

身についた習慣を変えるのは簡単ではありません。しかし、だからこそいったんよい習慣を身につけると、わざわざ意識しなくても、自然によい行動がとれるようになります。そうしないと、かえって気分が落ち着かないくらい習慣化されてしまえば、1年でも5年でも続けられます。

小さな習慣であっても、数年間ずっと続ければ、大きな力を持ちます。5年、10年と続ければ、人生そのものが変わります。

GMOインターネット社長の熊谷正寿さんは、著書『一冊の手帳で夢は必ずかなう』(かんき出版)で以下のように述べておられます。

夢あるところに行動がある
行動は、習慣を作り
習慣は、人格を作り
人格は、運命を作る


生産性と仕事の質を高めてくれる朝シフトも、よりよい人生を創り出してくれるよい習慣です。今日、あるいは今週だけにとどまらず、朝シフトを習慣にできると、自分の人生が大きく変わり始めます。

死に物狂いで1万時間没頭する

よい習慣を身につけることがなぜ重要なのか。別の側面から考えてみましょう。

どんな分野でも、その道を極めようと思えば、長期にわたる学びが必要です。一般に、その分野で一流と認められるまでには1万時間かかるといわれています。

中谷巌さんは著者『若きサムライたちへ』(PHP研究所)の中で、「鉱脈クラブ」というたとえを紹介されています。一部引用します。


私はよく「一万時間説」ということをいっています。若い時代には何か一つこういうことをやってみたいと思ったら、禁欲的に一万時間それに没頭しろという主張です。ああでもないこうでもないとあちこちに手をつけるのではなく、一つのことに一万時間死に物狂いで没頭してみれば、かならずその道でひとかどの人物になることができるという考えです。一万時間の努力によって得られたものがその人間の強みとなるのです。


マルコム・グラッドウェル著、勝間和代訳の『天才!成功する人々の法則』(講談社)でも、モーツァルト、ビル・ゲイツなど、過去に成功したさまざまな経営者や偉人を検証したうえで、ある分野で飛び抜けた才能を発揮するためのマジックナンバーとして、1万時間の投資が必要であるとしています。

5年間で一流になる人とならない人

1年365日、毎日1時間それを続けたとすると、27年と数カ月間で1万時間に達します。毎日2時間で14年間弱、毎日3時間なら約9年間です。

これが本業なら、1日8時間の就業時間をすべてそこに充てられたとして、平日250日間の合計が1年で2000時間。これを5年間集中して続ければ、その分野の一流になれるはずです。

しかし、5年以上、人によっては数十年も同じ仕事をしているにもかかわらず、お世辞にも一流とは呼べない人が多いのもまた事実です。

その違いは1万時間の使い方の差です。他人から抜きん出た存在になるには、何となく時間を過ごすだけではダメで、「死に物狂いで1万時間没頭」することが必要なのです。

私たちはともすると受け身の姿勢で仕事をしがちです。しかし、受動的で単調な仕事にどれだけ時間を費やしても、一流と呼べる存在にはなりません。

先ほどのグラッドウェルも、「失敗から学ぶことが大切」と述べたうえで、失敗から学べる人の特性として、立ち直りが早く、謙虚であり、失敗について分析する力があることを挙げています。

仮説を立てて、実際にやってみて、うまくいかなかった場合はなぜかを考え、再度やってみる。そのような試行錯誤を繰り返す1万時間が必要なのです。単に1万時間投資すれば、誰でも第一人者になれるわけではありません。

朝シフトによって自分だけの時間を生み出し、それを仕事に集中投資すれば、本業での実力をより短期間で向上させることができます。

一方、その時間をライフワークに充てれば、10年近くで、「その道で一流」と呼べるジャンルが、本業以外にもうひとつ確立されることになります。これも朝シフトのメリットのひとつです。

頑張りすぎは病気の原因に

ここ一番の勝負どころで頑張れるビジネスパーソンは強いと思います。しかし、勝負どころは毎日来るわけではありません。むしろ、日々の頑張りで蓄積された疲労をとってリフレッシュし、体調をベストの状態に維持することも、長期的に見てとても重要です。

2017年3月9日の日本経済新聞夕刊に掲載された記事『体の疲労「脳が原因」交感神経酷使、細胞にダメージ』は、疲れの管理を考える上で、とても参考になります。

この記事によると、疲労の原因は長く言われてきた乳酸ではなく、実は自律神経を酷使したことだそうです。そして神経細胞内に活性酸素が大量に発生し、神経細胞にダメージを与えることで疲労が起こる、とした上で、以下のように述べています。

…ただし、実際の疲労の度合いと、自分で感じる疲労感の間にはズレがあることが、疲労を把握しにくくしている。…人間は、脳の働きでこのアラームを感じなくしてしまうことがある。仕事や運動への意欲や達成感が強いと、疲労感を感じなくなってしまう。

ムリをしてでも仕事をしなければいけない「ここが正念場」という状況で、夜も昼も土日もなく仕事をしていると、あるタイミングから疲労がなくなり急にパワーアップした感覚を得て、次々と仕事をこなせるように感じるときがあります。しかしそれは疲労が消滅しているのではなく、疲労を感じなくなってしまった結果なのです。

この状態が続くとどうなるのでしょうか?同記事は、次のように続けています。

これは「隠れ疲労」と呼ばれている。…「過労死になってしまう人は、疲労感を感じなくなっている場合が多い」と、隠れ疲労の危険性に警鐘を鳴らす。…疲れをためないため、どんな生活をすればよいのか。…「疲労を回復してリセットする唯一の方法が良質な睡眠を十分にとること」という。就寝中は大脳も自律神経も昼間の重労働から解放され、疲労回復因子と呼ばれるたんぱく質の働きで、脳の疲労が回復する。

私も忙しい状態が続くと、「この調子でいくらでも仕事がこなせる」とスイッチが入る瞬間があります。しかしこれは単なる錯覚にすぎません。この状態が続くと、後で必ず反動があります。後になってからかなり大きな疲労が蓄積していることに気づくこともあります。いったんそうなると、その後の仕事の生産性は大きく低下しますし、体調も悪化します。

疲れが限度を超える前にブレーキを踏む習慣を

継続的によい仕事をしていくためには、「この調子でいくらでも仕事がこなせる」という「隠れ疲労」のスイッチが入ってしまう前に、アクセルを緩める習慣をつけることです。そのためには自分を追い込みすぎないように、余裕を見て仕事のスケジュールを立てることが必要です。

いったん疲れが限界を超えると、精神的・身体的に本人も辛いですし、一緒に仕事をしている人たちにも迷惑がかかります。

だからこそ、疲労のメカニズムを理解し、自分の疲労状態を察知し、適切に対応することが必要です。自分の疲れには忠実になるべきです。

同記事にもあるように、疲労をとるためには、睡眠が最も効果的です。仕事の不満は溜めず愚痴をこぼしたり文句を言うのも、疲労を取る上で決して悪いことではありません。

第2章でも述べたように、脳は寝ている間も潜在意識で仕事をしています。しっかり仕事をし、休むべきときは安心してしっかり休み、つねにいい仕事をしたいものです。

永井孝尚
1984年に慶應義塾大学工学部を卒業後、日本IBMに入社。マーケティングマネージャーとして事業戦略策定と実施を担当、さらに人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を担当し、同社ソフトウェア事業の成長を支える。本業のかたわら朝時間の活用によりビジネス書の執筆活動を続けベストセラーを生む。2013年、30年間勤務した日本IBMを退社して独立。ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表取締役に就任し、数多くの企業や団体に講演やワークショップ研修を実施。

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