「どこかのメガバンクだけでなく全銀行が使えるコインを出したい」--。みずほ銀行がWiL LLC.とともに設立した新事業創出を目的とする合弁会社「Blue Lab」の代表取締役社長に就任した山田大介・みずほフィナンシャルグループCDIO(Chief Digital Innovation Officer)が、9月15日に都内で開かれた設立記念パーティーの会場で、そんな意気込みを語った。(取材:濱田 優 ZUU online編集長)
農林中金代表理事も期待
山田代表はその狙いを「現金決済の比率を欧米並みにさげることで、ATMなどの手数料も引き下げられ、利用者に還元できる。東京はもとより全国で、フラストレーションなく電子決済ができる環境を早く実現したい。たとえば2020年の東京五輪までにそうした世界ができていれば、世界中から来日する外国人観光客が『また日本に来たい』と思ってくれるのではないか」と説明。
そのうえで、「国としても(現金決済の比率を下げることは)命題の一つのはずで、日銀や金融庁も見守ってくれるスタンス。これまで競争の側面が強かった民間銀行同士がいかにまとまっていけるかだと思う」と付け加えた。
Blue Labは、FinTech領域はもとより、さまざまな事業領域でのIoT全般を対象としたビジネスモデル創造・事業化を進めるべく今年6月に設立され、8月から事業を開始した新会社。
設立記念パーティーは東京・愛宕の同社オフィスで行われ、伊藤忠商事、損害保険ジャパン日本興亜、第一生命保険、農林中央金庫、丸紅、三井住友信託銀行といった株主をはじめ関係者が多数出席した。
イベントではみずほフィナンシャルグループの佐藤康博・取締役執行役社長(グループCEO)が「アントレプレナーシップは銀行員のカルチャーからでは生まれない。ここを日本一のインキュベーターにしたい」とあいさつ。Blue Labの山田代表も社名について「(スタートアップやベンチャー起業が盛んな)カリフォルニアの青い空、ブルーオーシャン。みずほのコーポレートカラーでもあるが、社名に恥じない活躍をしていきたい」と話した。
また株主を代表して農林中金の河野良雄・代表理事理事長が登壇。「全国に8000店、8万人の職員を抱え、3500万口座に100兆円預かる農林中金は、フィンテックやITの分野にもっとも大きな影響を受ける存在と危惧していたが、逆にフィンテックなどの活用で圧倒的に生産性を高められると期待している」と述べた。
虎ノ門ヒルズエリアをイノベーションセンターへ
イベント終盤にはWiLの伊佐山元・共同創業者CEOが「(事業の)アイデアは簡単に生まれるが、やるのは難しい。WiLは“やってきた”人間を集めているので、しっかり形にしてみせる。志のある企業や人は全力でサポートする。ただ株主の皆さんもアイデアを出すだけでなく、当事者意識をもって一緒につくるという意識で参加して欲しい」と述べた。
Blue Labは、森ビルが愛宕グリーンヒルズ MORIタワーにオープンした次世代ビジネスモデル創造・事業化支援施設「Ignition Lab MIRAI(イグニッション ラボ ミライ)」内のスモールオフィスに入居。みずほ銀行デジタルイノベーション部の部員20人が兼務で在籍しているという。
WiLが共同運営しているMIRAIは40階にあり、約700平方メートル。スモールオフィスのほか、6室のプロジェクトルームなどがあり、プロジェクトごとに使えるほか、テナントとして入居しているスタートアップもあるという。森ビルは虎ノ門ヒルズのビジネスタワー(仮称)におけるイノベーションセンターのプレ施設として位置づけており、一帯をイノベーション推進の中心地にしたい考えだ。
設立記念パーティーの会場ではみずほ銀行が開発に取り組んでいるGoogle Home、Google Cloud Platformを使ったAPIサービスのデモも行われた。