「しぼる」「まとめる」「図で覚える」

碓井孝介,情報,記憶ノート
(写真=The 21 online)

資格を取得する、新しい知識を身につけるなど、スキルアップのための勉強に終わりはない。しかし、歳を追うごとに記憶力は衰えていく。自己研鑽に使える限られた時間を最大限に活かし、より効率的に記憶する方法はあるのだろうか?暗記を中心とした勉強法で司法書士や公認会計士の試験を突破した「暗記のプロ」に話をうかがった。

40代ビジネスマンこそ「暗記ノート」を使おう!

どんな勉強にも共通しているのは、基礎知識をインプットしなければ何も始まらないということです。なぜなら、基礎知識がなければ、理解を深めることができないからです。考え方を学びとろうとする前に、考えるための元、つまり思考の土台を作ることが先決なのです。

そこで私がお勧めしているのは、「暗記ノート」を使った勉強法。ノートに書いて覚えるシンプルな方法ですが、書くことで思考や情報を整理し、頭の中をよりクリアにできます。

私は10代でこの方法を思いつき、試行錯誤を繰り返しながら、大学受験を乗り切りました。しかし、40代のビジネスマンにこそ有効な勉強法ではないかと考えています。

なぜなら、暗記ノートは、①暗記する情報をしぼる、②まとめる、③図で覚えるという3つのステップで作成していきますが、その過程において、「情報を選んでまとめる」という作業がキーポイントになるからです。これはまさに、資料作成などにおいて情報を選び、まとめる能力が求められるビジネスマンにこそ必要とされる能力なのです。

年齢を重ねれば、誰でも記憶力が低下しますが、暗記ノートを作ることで、覚えたことを忘れにくくし、記憶として定着しやすくするのです。

まず「問題集」から読み始める理由とは?

資格取得のための試験勉強を例にして、暗記ノート作成における3つのステップをご説明しましょう。

1つ目の「暗記する情報をしぼる」では、基礎を学ぶための教材、応用を学ぶための教材、そして問題集の3つを準備し、問題集→基礎→応用と読み進めます。一般的に、基礎→問題集の順番ではないかと思われるかもしれませんが、限られた時間で効率的に勉強するには、覚える必要のない情報までインプットしなくて済むように、まず、情報を選択することが重要になります。その点、問題集には出題されるほど重要な情報があらかじめしぼり込まれているのです。なお、問題集を読んでいる段階で内容を理解する必要はありません。

次に、基礎・応用・問題集の3冊の教材のうち二冊に書いてあった内容だけ、暗記ノートの「しぼる欄」に書き込んでいきます。2冊の教材に共通した内容は、試験に出る可能性が高いからです。

書き込むときに注意するのは、教材に書かれている内容を丸々書き写すのではなく、なるべく自分が理解しやすい言葉に置き換えながら書くことです。教材は、1文が長く覚えにくい文章が多いので、修飾語を取り除いた主語・述語のシンプルな文章に直すとよいでしょう。

ちなみに、基礎を学ぶ際の入門書として私がお勧めしているのは新書です。専門書を選ぶと、内容が難しすぎて挫折しやすいのですが、新書はわかりやすく、すらすらと最後まで読めるので、基礎知識を得るのに最適なのです。

その際、ただ読むだけではなく、「まとめると」「要するに」といった言葉や、太字や赤字、あるいは「7つのポイント」など数字を使っている箇所、その周辺に書かれていることに注意しながら読んでいくと、覚えるべき情報を判断しやすくなります。

「連想」を利用して言葉と情報をまとめよう

2つ目は、「まとめる」です。まとめる目的は、情報を記憶として定着させるためです。単語だけ覚えようとしても、記憶に残りにくいので、関連した単語や情報と一緒にまとめて暗記します。これを私は「記憶の鎖」と呼んでいます。

しぼる欄に書いた内容を、まとめる欄に書き直し、単語から連想することを書いていきます。

たとえば法律の勉強で「取締役会に出席するのは取締役と監査役」ということを記憶する際、監査という単語から連想されることを次々と書き込んでいくのです。「任期は?」「未成年は?」といった関連した項目だけでなく、「刑法では?」「結婚は?」といった直接関係のないことに派生していっても構いません。むしろ、自分にとって興味のあることに結びつけることで、暗記したい内容を思い出す回数が増え、より記憶に残りやすくなります。

3つ目は、「図で覚える」です。まとめた情報の中でも、とくに覚えたい内容を視覚化して脳に刷り込むことで、暗記した内容を徹底的に強化します。

図解の方法は大きく分けて2つあります。1つは単語を徹底的に覚えるための「トライアングルの図」。覚えたい情報(答え)とその理由(なぜ)、思い出すきっかけ(つまり)をトライアングルの図に書き込んでいく方法です。

そしてもう1つは、ストーリーの流れを書き込む「チャート」。ストーリー性のある記憶は残りやすいという特性を利用し、物事の過程や時間経過を図式化します。詳しくは、上記の図を参考にしてください。

暗記した内容を自分に説明できるか?

暗記の基本は反復。作成した暗記ノートは通勤時間などを利用して何度も読み返します。さらに、記憶の点検日を設け、忘れていないかどうかチェックしましょう。情報をピックアップした問題集のページ数や追加情報などをメモ欄に書き込んでおくと、教材を読み返すときに便利です。

覚えたことがアウトプットできるレベルに達したかどうかを確認するには、「自分で自分に説明することができるか」を目安にします。

たとえば問題集を解きながら、問題の答えに続いて、なぜその答えなのかを声に出して自分に説明するのです。説明を通じて知識が整理され、覚えた情報が脳に刻み込まれます。

最後に、注意していただきたいのが、暗記ノートを「作り込みすぎない」ことです。暗記ノートは、作成自体が目的ではなく、あくまで効率良く暗記するための補助です。きれいに書く必要もありませんので、作成に時間をかけすぎないように注意しましょう。

こうした点に留意しながら、使いやすいように自由にカスタマイズして、自分だけの暗記ノートを作成していってください。

碓井孝介(うすい・こうすけ)司法書士
1984年、北海道生まれ。暗記を中心とした独自の勉強法で、難関大学に現役合格。在学中に司法書士試験、卒業後に公認会計士試験に合格。大手監査法人勤務、資格スクール講師を経て、現在は司法書士として実務に携わる。著書に、『頭のいい人は暗記ノートで覚える! 「時間は半分、成果2倍」の勉強法』(三笠書房)など。(取材・構成:吉川ゆこ)(『 The 21 online 』2017年7月号)

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