景気10指標の点検

◆供給面の3指標

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【工業生産】
景気指標の中でGDPへの影響が最も大きいのが工業生産(実質付加価値ベース)である。ここもとの経済のサービス化に伴ってその影響力は落ちたとはいえ、依然その影響力は大きい。7-8月期の工業生産は前年同期比6.1%増(推定(1))と4-6月期の同7.0%増を0.9ポイント下回った。9月の動きが未反映とはいえ、7-9月期の成長率は4-6月期を下回る可能性がある(図表-5)。

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1)中国では、統計方法の改定時に新基準で計測した過去の数値を公表しない場合が多く、また1月からの年度累計で公表される統計も多い。本稿では、四半期毎の伸びを見るためなどの目的で、ニッセイ基礎研究所で中国国家統計局などが公表したデータを元に推定した数値を掲載している。またその場合には“(推定)”と付して公表された数値と区別している。
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【製造業PMI】
製造業の動向を示す代表指標となるのが製造業PMI(製造業購買担当者景気指数、中国国家統計局)である。これは製造業3000社の購買担当者へのアンケート調査を元に計算するもので、通常は50%が拡張・収縮の分岐点となる。ここもと7月が51.4%、8月が51.7%と、4-6月期の平均(51.4%)を上回っており、工業生産が落ち込んだ割に堅調である。また、将来3ヵ月の見通しを示す予想指数も4月をボトムに8月まで4ヵ月連続で上昇してきている(図表-6)。

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【非製造業PMI】
一方、非製造業の動向を示す代表指標となるのが非製造業PMI(非製造業商務活動指数、中国国家統計局)である。中国では製造業からサービス業への構造転換が進行中なためその重要性は増している。製造業PMIと同様に50%が拡張・収縮の分岐点とされる。ここもと8月は53.4%と、第1四半期の平均(54.0%)を割り込んできた。特に建築業で4.5ポイント低下したのが目立ち、不動産開発やインフラ整備に関連する建築が変調をきたした可能性がある(図表-7)。

◆需要面の3指標

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【小売売上高】
個人消費の動きを示す代表指標となるのが小売売上高である。ここもと7-8月期は前年同期比10.4%増(推定)と、4-6月期の同10.8%増を0.4%ポイント下回っており、個人消費は7-9月期の成長率を若干押し下げる可能性がある。内訳を見ると、家具など住宅販売の好調で潤った業種で伸びが鈍化している。また、化粧品は期を追う毎に伸びが加速、自動車は小型車減税の縮小を受けて1-3月期こそ伸びが落ちたものの、4-6月期以降は8%前後の伸びを回復している(図表-8)。

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【固定資産投資】
一方、投資の動きを示す代表指標となるのが固定資産投資(除く農家の投資)である。ここもと7-8月期は前年同期比5.5%増(推定)と、4-6月期の同8.0%増を2.5ポイント下回っており、投資は7-9月期の成長率を押し下げる可能性がある。内訳を見ると、製造業は4-6月期の前年同期比5.2%増(推定)から同1.6%増へ3.6ポイント低下、不動産開発投資は同7.9%増から同6.1%増へ1.8ポイント低下、インフラ投資は同18.7%増から同16.0%増へ2.7ポイント低下した(図表-9)。また、民間企業だけでなく国有・国有持ち株企業も減速、投資の減速は全般に及んでいる。

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【輸出】
世界の工場といわれる中国では輸出が生産の動向を左右する。ここもと7-8月期の輸出額(ドルベース)は前年同期比6.1%増と、4-6月期の同8.7%増を2.6ポイント下回った。輸出相手先別に見ると、6月まで好調だった米国向け、欧州(EU)向け、インド向けなどの伸びが7月以降は鈍化している。また、輸出の先行指標となる新規輸出受注(中国国家統計局)は2ヵ月連続で低下、貿易輸出先行指数(中国税関総署)の改善も止まり横ばいとなった(図表-10)。

◆その他の重要な4指標

【電力消費量】
経済活動に必要不可欠な電力消費量も注目される。15年にゼロ成長に落ち込んだ電力消費量は16年に入ると上向き16年後半には伸びを高め17年も高水準の伸びが続いていた。しかし、8月の工業部門は前年同月比2.4%増に落ち込んだため、今後を注視する必要がでてきた(図表-11)。

【貨物輸送量】
経済活動が活性化すると貨物輸送量も増える傾向がある。エネルギー改革で長らく前年割れに落ち込んでいた鉄道貨物は16年後半に底打ちし、17年は高水準の伸びを続けている。また、増加トレンドの電子商取引で物流の中核となる道路貨物は、16年末から伸びを高めている(図表-12)。

【工業生産者出荷価格】
物価指標も景気の体温と言われる景気指標のひとつである。8月の工業生産者出荷価格は前年同月比6.3%上昇と6ヵ月ぶりに上昇に転じた。内訳を見ると、生産財が上昇に転じたのに加え、消費財も小幅に上昇した(図表-13)。今のところデフレ懸念もインフレ懸念も小さいと見られる。

【通貨供給量(M2)】
景気を金融面から見る代表指標としては通貨供給量(M2)が挙げられる。ここもとの動きを見ると、伸びの鈍化傾向が続いており、8月は前年同月比8.9%増と17年の目標値である12%前後を大幅に下回った(図表-14)。但し、銀行は預貸率を徐々に引き上げており、銀行貸出残高は8月も前年同月比13.2%増と高い伸びを維持、景気への悪影響は限定的に留まっている。

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