息子も出世する

スウェーデンといえば福祉が充実していて教育も無料、格差が小さい国の代名詞だと思っていたのだが、18世紀に生まれた社会的地位の差が10世代以上後の現在でも色濃く残っているという。米国の経済学者グレゴリー・クラーク(注1)が、スウェーデンの医師登録、国会議員、修士論文の提出者など各種の名簿を調べたところ、長期にわたって同じ姓が異常に高い割合で出現しており、今まで言われていた以上に親から子へと社会的な地位が受け継がれていた。クラークは、現代のスウェーデンで行なわれている教育無償化などの福祉政策は、社会階層の移動を全く加速しなかったと結論付けている。

クラークは日本についても姓を使った調査をしており、旧士族や旧華族の珍しい姓が、医学研究者や法律家、学者などで異常に高い頻度で見つかることを発見した。明治維新や第二次世界大戦後の改革で、日本は比較的社会階層間の移動は活発だとされてきたが、従来考えられていたよりも移動は少ないと述べている。

教育を通じた格差の拡大

かつては親に資産がなくても子供は教育を受けることで、高い所得を得る可能性が高まり、教育が社会の中での所得や資産の格差を縮小させる働きをしてきた。しかし、所得水準の高い人々が自分の子供により良い教育を受けさせようとするようになり、世間で難関と言われる大学の入学者の親の所得水準は平均よりも高くなっているという。

米国の大学入学者の選抜では高校での学校生活全体が評価されるので、日本の大学入試よりも公平・公正だと言われることもあるが、実態は家庭環境が大きく影響しているようだ。Richard V. Reeves(注2)は、米国の有名大学の多くは私立であるためもあって、入学者の選抜では、両親や親族がその大学の同窓生だったり、多額の寄付をしているということが合否を決める大きな要素になっていると指摘している。入学願書に記載できるような特別の経験ができるように親が努力することや、客観的なテストであるSAT (大学進学適性試験)でも試験の準備に親が関与するなど、親の経済力や家庭環境の差が合否に大きく影響するとしている。