要旨
- 9月の人民元レート(スポット・オファー、中国外貨取引センター)は米ドルに対して小幅に下落、9月末は前月末比0.9%下落の1米ドル=6.6535元で取引を終えた。9月初旬はユーロドルが1ユーロ=1.2米ドルの大台を回復したことを受けて人民元も勢い良く上昇、7日には1年5ヵ月ぶりに6.4元台を付けた。しかし、ユーロが下落に転じたことや中国当局の姿勢が元高阻止に変わったとの思惑から人民元は下落に転じた。結局、9月は“往って来い”の展開となり、前月号で提示した想定レンジ内にぎりぎりの所で踏みとどまった。
- 17年末に向けての人民元レートは、米中の長期金利差は縮小しないと見て、引き続き米ドルに対してボックス圏でほぼ横ばいの動きと予想している。想定レンジは1米ドル=6.5~6.9元(1元=16.0~17.4円)。なお、ユーロドルが再び上昇の勢いを強めて想定レンジの上限(1米ドル=6.5元)を突破する可能性は残る。しかし、9月の仏上院選ではマクロン政権が敗北、独総選挙でもメルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟が議席を減らすなどユーロ圏改革のスピードアップに対する期待は後退、そのリスクは低下した。
9月の人民元の動き
9月の人民元レート(スポット・オファー、中国外貨取引センター)は米ドルに対して小幅に下落、9月末は前月末比0.9%下落の1米ドル=6.6535元で取引を終えた。9月初旬はユーロドルが1ユーロ=1.2米ドルの大台を回復したことを受けて人民元も勢い良く上昇、7日には1日だけだったが1米ドル=6.4901元と16年5月3日以来およそ1年5ヵ月ぶりの6.4元台を付けた。
しかし、ユーロが8日をピークに下落に転じていたのに加えて、12日には中国人民銀行が外貨リスク準備金(*1)を廃止する模様と伝わったことで当局の姿勢が“元高容認”から“元高阻止”に変わったとの思惑をよび、人民元は下落に転じた。結局、9月は所謂“往って来い”の展開となり、2017年9月号で提示した想定レンジ内に、ぎりぎりの所で踏みとどまったと言って良いだろう(図表-1)。
世界の外為市場の動きを見ると、9月は米ドルがほぼ全面高の展開だった。米連邦準備理事会(FRB)が20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で保有資産の縮小を決め、また12月のFOMCでは追加利上げに踏み切る可能性が高いとの見方が強まったことが背景にある。
主要通貨ではユーロが前月末比0.6%下落、日本円も同2.2%下落した。他方、新興国通貨ではロシア(ルーブル)やマレーシア(リンギット)が原油高を受けて上昇したものの、その他の新興国通貨は概ね下落、インド(ルピー)が同2.1%下落、韓国(ウォン)も同1.5%下落した(図表-2)。なお、9月は日本円も米ドルに対して下落、人民元よりも下落率が大きかったため、日本円に対する人民元レートは100日本円=5.9105元(1元=16.92円)と前月末比1.2%の元高・円安となった(図表-3)。
-------------------------------------
(*1)外貨リスク準備金制度は、人民元ショック直後の15年9月に導入されたこともあって、人民元の急落を回避するための措置といわれている。
-------------------------------------