次世代に資産移転をするには相続と贈与の2種類の方法があります。贈与は難しくて、税金が高いというイメージがあり、相続時にまるまる移転すれば良いと考える人もいるかもしれません。確かに贈与は複雑ですし、贈与を受けた人は譲り受けた財産に応じて贈与税を税務署へ納める義務があります。ただし、制度をうまく使うことで納税額を圧縮することもできます。そこで、非課税制度や非課税財産の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

贈与税がかからない財産

(写真=Syda Productions/Shutterstock.com)
(写真=Syda Productions/Shutterstock.com)

贈与を受けた財産のなかには、性質や目的から贈与税をかけるのは不適当とされるものがあります。このような財産のことを非課税財産といいます。具体的な非課税財産は以下の通りです。

会社や法人から贈与された財産
贈与税の対象となるのは個人から譲り受けた財産であるため、法人からもらった財産には贈与税は課せられません。その代わりに所得税が課税されることになります。

扶養義務者からの生活費や教育費
夫婦、親子、兄弟姉妹といった扶養義務者から受け取った、通常日用生活に必要と認められる生活費や学費、教材費、文具費といった教育費は贈与税がかかりません。ただし、生活費や教育費の名目で受け取ったとしてもそれを預金したり不動産や株式の購入に充てたりしている場合には、生活費、教育費とは認められず、贈与税が課せられます。

公益を目的とした事業用に取得した財産
宗教、慈善、学問等の公益を目的とした事業を行う人が受け取った財産であり、かつ公益事業に使用されることが確実な財産なら贈与税は課せられません。

特定公益信託から支給された奨学金
奨学金の支給を目的とした特別公益信託から贈与される財産で、一定の要件を満たしている場合は贈与税が課せられません。

特別障害者扶養信託契約に基づく信託受益権
特定障害者が特定障害者扶養信託契約に基づいて信託受益権を取得した場合、6,000万円までの金額に相当する部分については相続税がかかりません。

心身障碍者共済制度に基づいて受けた給付金

公職選挙法の適用を受ける選挙候補者が選挙運動で取得した金品

社会通念上必要と認められる香典、花輪代、年末年始の贈答品、祝い物、見舞いの品

贈与税を非課税にするための制度

・ 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合
子や孫が、自分が住むための住居購入・新築・改増築に充てる資金を、直系尊属から贈与されるとします。この贈与が2015年1月1日から2021年12月31日までの間に行われ、かつ一定の要件を満たしていれば、非課税限度額まで贈与税が非課税になります。

一定の要件には贈与を受けたものが20歳以上であること、その年の合計所得金額が2,000万円以下であること、自分が住むための住居に使うものであることなどがあります。また非課税限度額は住宅のタイプや贈与の時期に応じて異なり、300万円~3,000万円程です。

・ 直系尊属から教育資金を一括でもらった場合
2013年4月1日から2019年3月31日までの間に、30歳未満の子や孫が直系尊属から金融機関等との一定の契約に基づき教育資金を一括で受け取ったとします。この贈与が、一定の要件を満たした場合には1,500万円に相当する金額が非課税となります。また非課税となるには、金融機関を経由して教育資金課税申告書を提出する必要があります。

・ 直系尊属から結婚資金や子育て資金を一括でもらった場合
2015年4月1日から2019年3月31日までの間に、20歳以上50歳未満の子や孫が直系尊属から金融機関等との一定の契約に基づき結婚・子育て資金を一括で受け取ったとします。この贈与が、一定の要件を満たした場合には1,000万円に相当する金額が非課税となります。また非課税となるには、金融機関を経由して結婚・子育て資金課税申告書を提出する必要があります。

贈与税をかけずに済む非課税制度を積極的に活用しよう

贈与税が非課税となる財産や制度は、申告制のものもあります。そのため非課税の対象となる財産であっても、そのことを知らずに贈与税を支払っているケースは少なくありません。せっかくの節税制度ですから、該当する項目があれば活用してみてはいかがでしょうか。もし、分からないことがあれば専門家に聞いてみるようにしましょう。