ジョージ・ソロスの資産移転
今回【第5回】ではジョージ・ソロスが資産移転を行った結果、租税回避だと批判された事例について紹介する。この問題は現在も解決していないため、タイムリーな問題である。
ソロス氏は資産規模の大きさから投資家として影響力を持つことはもちろん、実利的で批判を恐れない言動が注目を浴びることも多い。今回紹介する資産移転についてもその一例である。
252億ドルの資産のほとんどを財団に寄付する意向
ジョージ・ソロス氏が自身の設立したソロス・ファンド・マネージメントからオープン・ソシエティ財団に、総額180億ドルを移転させていたことが欧米メディアの報道から明らかになった。
ビル・ゲイツ氏やウォーレン・バフェット氏など、慈善団体に多額の資産を寄付するお金持ちは多いが、ソロス氏に関しては「慈善団体への寄付を悪用した税金逃れ」との批判が高まっている。
フォーブス誌 の2017年3月データで世界長者番付29位、資産総額252億ドル(2018年3月データでは190位、資産総額80億ドル)のソロス氏が、資産のほとんどを財団に寄付する意向を示していたことは、財団の広報部もAP通信の取材で認めていた。
オープン・ソサエティ財団は1979年、世界中の市民社会支援を目的で設立された 。現在はビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団に次ぐ、世界第2規模の慈善団体に成長している。「世界中のあらゆることに精通している」というフォード財団のダレン・ウォーカー社長の言葉通り、「世界で最も影響力のある財団」だ。
パナマ文書漏洩やグルジアの政変の火付け役疑惑など、様々な「事件」の裏にソロス氏の影が見え隠れし、その影響力と活動規模の大きさゆえに、一部の資産家や政府から煙たがられていた。
その傾向は2016年11月、米国大統領選でトランプ氏が勝利して以来、さらに強まっていたようだ。ソロス氏が財団を通じて行っている活動はリベラル的な印象が強く、トランプ政権誕生が象徴するポピュリズム勢とは反意するものである。
ソロス氏への反発は加速し、2017年8月には同氏をテロリストと認定し、資産・財産の没収を要請する嘆願書がホワイトハウスに提出されるほどに過熱していた (ウィー・ザ・ピープルより )。同氏の活動を「米国を不安定化させ、政府への扇動行為を意図するテロリズム」と見なす10万人以上が署名したものだ 。