ジョージ・ソロス,失敗,投資家
(写真=Getty Images)

「イングランド銀行を潰した男」の異名を持ち、伝説的な投資家として知られるジョージ・ソロス氏が米大統領選挙でトランプ氏が勝利して以降、10億ドル(約1100億円)近い巨額の損失を出していたことがわかった。伝説的な投資家にとっては大失敗となった今回の投資だが、一体何があったのだろうか。そして、彼の失敗から投資家は何を学ぶべきだろうか。今回はジョージ・ソロスの失敗から私たち投資家が学べる教訓を見ていこう。

なぜ1000億円もの損失が出たのか その背景

教訓を学ぶ前に、そもそもなぜソロス氏が1000億円以上の損失を出してしまったのか、その背景について簡単に復習していこう。

トランプ氏勝利後に世界の金融市場で生まれた主な流れは株高・債券安である。米国株式は史上最高値を更新し、日本株など他国の株式市場もそれに追随する形で大きく上昇する結果となった。一方、米国の長期金利をはじめ世界の金利が急上昇した。金利の上昇はすなわち債券価格の下落を意味するため、株式とは対照的に債券価格は大きく下落した。これは典型的なリスクオン(投資家が株式などリスクが高い商品に積極的に投資をすること)の展開である。

トランプ氏が掲げる大規模なインフラ投資や減税が経済成長を押し上げるとの見方が台頭し、株式市場にとっては大きな追い風となったのだ。一方、減税やインフラ投資は米国の財政悪化を招くとの見方が強まり、米国の長期金利は急上昇して債券市場は大きく下落することになった。

ソロス氏が具体的にどのようなポジションをとっていたのかは不明だが、ソロス氏はトランプ氏が米大統領選挙で勝利すると金融市場に対しては弱気となり、株価も下落すると予想していたようだ。このような状況でとるポジションは株式のショート(空売り)や債券のロング(買い持ち)などである。また、ゴールドのロングも考えられるが、基本的には株式のショートで対応したのではないだろうか。実際、報道でも年末までにソロス氏が多くのショートポジションを解消したと報じられている。

結果としては、トランプ氏勝利後はこの3つのどれを選んでも大失敗である。株価は史上最高値を更新し、債券価格は急落、ゴールドの価格も下落した。その結果、大統領選挙からわずか1か月足らずでソロス氏は多額の損失を計上することとなったのだ。

教訓1:予想外の動きをしたらとりあえず手仕舞い様子を見る

ソロス氏に限らず、今回のトランプラリーで損失を出した投資家は意外に多いようだ。今回のトランプラリーによる株高の局面では株を買っていれば儲かるのだから簡単な展開と考える人もいるかもしれないが、実はトランプラリーに乗るのはかなり難しかったというのが実情だ。

ソロス氏はトランプ氏が当選すると株価が下落すると予想していたが、他の多くの投資家も同じような予想をしていた。ソロス氏の予想は金融市場の中で主流派だったのである。しかし、予想に反して株価は急上昇してしまった。最初は株価が下落すると予想していたのだから、すぐにショートからロングにポジションを入れ替えるというのは心理的にかなり難しい。ソロス氏は巨額の資金を運用しているため、そう簡単にポジションを動かせないという事情もあったのだろうが、個人投資家は機敏に自分のポジションを変えることができる。

自分の予想に反した相場展開となった場合、すぐに気持ちを切り替える必要はない。それはすごく難しいことなのだ。ただ、大きな損失が出る前にいったんポジションを手仕舞い、様子を見てみよう。冷静に相場の分析ができてから、またポジションをとればいいのである。

教訓2:1つのアイデアに固執することなかれ

今回のトランプラリーで大きな損失を出してしまった投資家のパターンの1つとして連敗がある。トランプ氏が当選すると株価やドルが下落すると予想しており、現実は株価やドルが大きく上昇しているにも関わらず何度もショートして連敗、結果として大きな損失を出してしまうパターンだ。

ソロス氏がどれほどのスパンでポジションを入れ替えているかはわからないため連敗したかはわからないが、1つのアイデアに固執してそれに大きく賭けてしまったという点では似ている。運用資金の規模がケタ違いであるため、ソロス氏と一般的な個人投資家を比べることはナンセンスだが、1つのアイデアに固執してそれに賭け続けるというのは得策ではないというのは共通するところだ。

もし自分の予想とは全く別の展開となった場合、最初のアイデアに固執するのではなく、その全く逆を考えてみると違う展開が見えるかもしれない。

教訓3:相場の流れに身を委ね、適応せよ

投資家がやってしまいがちな失敗として、自分の思い通りに相場が動かない、これはおかしいと考えてしまい、相場に適応できなかった結果大金を失ってしまうことがある。

しかし、相場は自分の思い通りに動くものではない。むしろその逆を行くことが多いのだ。重要なのは、自分の想定通りに相場が動いてくれることを祈るのではなく、相場の流れに自分の身を委ね、自分がいまの相場環境に適応していくことだ。

今回のトランプラリーでも相場環境に適応し、流れに乗れた投資家は大きな利益を得た。相場においては、自分自身を相場に適応させていくことが非常に重要なのだ。(アナリスト 樟葉空)

【編集部のオススメ記事】
2017年も勝率9割、株価好調の中でもパフォーマンス突出の「IPO投資」(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
株・債券・不動産など 効率よく情報収集できる資産運用の総合イベント、1月末に初開催(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)