横浜DeNAベイスターズ(以下、ベイスターズ)は東証1部上場企業のディー・エヌ・エー <2432> が経営するプロ野球球団だ。今シーズンのベイスターズは、セ・リーグ3位から参戦したクライマックスシリーズで阪神と広島に勝利、日本シリーズでは王者ソフトバンクと大激戦を演じた。惜しくも19年ぶりの日本一には届かなかったものの、若いチームは敗れても爽やかで、長年のベイスターズ・ファンの筆者は存分に楽しめたシーズンだった。
そのディー・エヌ・エーの株価であるが、日本シリーズ真っ只中の10月31日に2728円の高値を付けている。一時期は「まとめサイト問題」で冴えない展開を強いられたディー・エヌ・エー株であるが、「ベイスターズ効果」で基調が大きく変わろうとしているのだろうか?
「まとめサイト問題」で44%も下落
ディー・エヌ・エーの株価は、2016年9月に3955円と5年ぶりの高値を付けていた。当時は任天堂との協業等で市場の先高期待も高まっていたように筆者は記憶している。
しかし、同11月に情勢は急変する。いわゆる「まとめサイト問題」で株価が急落し、2017年4月には2204円の安値を付けた。この5カ月で実に44%も下落したのだ。
「まとめサイト問題」とは、同社が主幸する健康・医療系のまとめサイト「WELQ」が炎上し休止することになった問題である。WELQは健康や生死に関わるヘルスケア問題等を多く扱っていたのであるが、その中には未確認情報や他のサイトから流用したと見られる記事が大量に含まれており、ディー・エヌ・エーとしても同サイトを休止せざるを得なかった。
まとめサイト問題は、ディー・エヌ・エーだけの問題でなく「フェイクニュース問題」とともにネット社会における情報のありかたに一石を投じる象徴的な事件となった。ディー・エヌ・エーもWELQだけでなく運営するすべてのキュレーションサイトの見直しに着手した。この影響で、同社の新規事業に属する「キュレーションプラットフォーム」は前期で47億円の損失となっている。
ベイスターズは前期11億円の黒字に転換
一方、ベイスターズや横浜スタジアム等の「スポーツ事業」は好調だ。今年のベイスターズ主催試合の平均観客動員数は2万7880人と過去最高を記録し、稼働率は96.2%に達した。TBSからディー・エヌ・エーに経営権が移った2011年の1万5308人から6年で82%も増えたことになる。
何よりも注目されるのは、ベイスターズの経営以来続いていた赤字が前期(2017年3月期)に11億円の黒字に転じたことだ。さらに今シーズンの大躍進で、横浜スタジアムのパブリックビューイングが大入りとなったほか、関連グッズの売上も好調と伝えられており、今期のスポーツ事業は一段の利益の上乗せが期待出来そうだ。
「どうぶつの森」スマホ版が鍵を握る?
ディー・エヌ・エーの本業は「ゲーム事業」である。2017年3月期の売上構成ではゲーム事業が76%、EC事業が13%、スポーツ事業が7%、新規事業その他が4%だった。
本業のゲーム部門では2015年3月に任天堂と業務資本提携した。2016年に任天堂が始めて進出したモバイル部門で「スーパーマリオラン」や「ファイアーエムブレムヒーローズ」を国内外で配信している。
最近では任天堂と協業の人気ソフト「どうぶつの森」のスマホ版アプリへの期待が高まっている。「とびだせどうぶつの森」は累計販売数が500万本に達する大人気ソフトでご存知の読者も多いことだろう。スマホ版は10月25日にオーストラリアで先行配信をスタート、今月下旬には日本をはじめとする世界41カ国への配信を予定している。
「まとめサイト問題」で低迷を余儀なくされたディー・エヌ・エー株。その後は「ベイスターズ効果」で好転したが、これから来年に向けては本業のゲーム事業がキーポイントとなりそうな情勢だ。(ZUU online 編集部)