中国人の多くは、航空会社と聞けば、国航(中国国際航空)、東航(中国東方航空)、南航(中国南方航空)くらいしか浮かばないだろう。実際に何社あるのか知っている人はほとんどいまい。中国民用航空局によれば2016年末、中国には59社もの航空会社がある。そのうち定期便を就航し客運を行っているのは30社、国際線を運行しているのは18社もある。それらは主に3つの陣営に分類される。中国の航空業界は今どうなっているのだろうか。ニュースサイト「今日頭条」が解説記事を掲載した。

中国航空業界の歴史

中国経済,航空業界
(画像=PIXTA, ※画像はイメージです)

中国にはもともと中国民航1社しか存在していなかった。それを1988年に改組して、国際線の中国国際航空(北京)、国内は、東方航空(上海)、南方航空(広州)、北方航空(瀋陽)、西南航空(成都)、西北航空(西安)の6社体制となった。西南と西北はローカル色が強く、イメージとしてはこの2つを除く、4社体制だった。その後この4社は、いくつものローカル子会社を設立した。

2000~2002年にかけて再び改組が行われた。西北は東方へ、西南は国際へ吸収された。そして大手では、北方が南方へ吸収された。その結果、国航、東方、南方の大手3社体制となった。一般にはこのイメージが強い。しかしその後、次々と新しい航空会社が設立され59社となった。

もちろん航空需要が旺盛なためである。米国の航空機リース会社Avolonの予測では、今後10年、中国の航空機需要は3200機に及ぶ。1150機が中型旅客機、400機が大型旅客機、150機がローカル線用小型機と推測しているが、読めているのはそこまでである。これだけ多ければ、運用主体も分けた方がよい、という考えは確かに成り立つ。

第一陣営とは?

第一陣営とは、国航、東航、南航の大手3社に、海南航空を加えたものである。この4社で中国航空市場の大部分を占める。保有機数(2015年)では、南航667機、国航590機、東航551機、海航202機、旅客数は、南航、国航、東航、海航の順である。ちなみに日本航空は230機(2017年)全日空は2020年に250機を目指しているという。

この中では海航集団が一風変っている。3大集団の国有出自とは全く関係ない民営である。運航開始は1993年、1995年に外資導入、1999年には上海市場へA株B株同時上場した。現在は海航集団傘下の筆頭航空会社である。中国新華航空、長安航空、山西航空などの運行管理も行い、空港にも出資している。またグループでは、物流、ホテル、金融にも手を広げ、投資家としても存在感を持っている。

私企業から出発して大きく成長した異色の存在だ。当然「運んでやる。」というお上意識の遺伝子はない。サービスレベルは高くお奨めである。

第二陣営と第三陣営

上海航空、山東航空、深セン航空、厦門航空、四川航空の5社である。

第二陣営はローカル航空会社の雄である。第一陣営に比べると、かなり小さい。深セン航空140機、その他は60~90機である。これら中規模航空会社は、着実な発展を重ねている。路線は合理的であり経営状況もよい。しかし第一陣営より成長速度は速いとはいえない。筆者は山東航空をよく利用したが、問題は故障や悪天候キャンセルなどトラブルだった。こういう場合、代替機のたくさんある第一陣営に、アドバンテージを感じるビジネスマンが多いのである。

第三陣営はLCCである。春秋航空、吉祥航空、奥凱航空、成都航空、華夏航空などがあり、保有機数は一般に20~30機程度である。この陣営のリーダーは、上海の春秋航空だ。保有機数は68機とこの陣営では頭一つ抜けている。2004年に上海で創業、初のLCCとして新規需要を掘り起こし、急速に発展した。搭乗率は95%を誇っている。2011年の上海ー茨城線の開設以来、日本路線にも注力している。2015年には関西空港を同社初の海外拠点にすると発表した。次々に構想を実現しようとしている。海航とならぶダイナミックな航空会社である。

筆者は1989年から中国貿易に携わるようになった。当時の東方航空では、機長は草履履き、不愛想な客室乗務員のカーディガンは穴だらけ、乗客に配るべき菓子や飲料を横流ししているとさえ噂されていた。今はトップの南方航空1社で日本の全保有機数と変わらない規模になっている。まったく隔世の感がある。サービスレベルと定時運航率の高さは、日本の航空会社の大きな売りだが、それだけでやっていけるのだろうか。ここは官民一丸となって新しい展開を探る必要がありそうだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)