350億円の投資

ソニーが長崎テクノロジーセンターと熊本テクノロジーセンターの生産力増加のために行う設備投資の額は、2015年度までで合計約350億円となります。この投資によって、拡大が続いているスマートフォン向けの供給力を高めることが狙いです。

内訳は、2014年度に実施する投資が長崎テックに約30億円、熊本テックに約60億円で、2015年度実施分としては、長崎テックに約260億円です。投資した額はそれぞれ、長崎テックでは半導体チップを重ね合わせる工程用設備の増強に、熊本テックでは光を電気信号に変換するフォトダイオードの製造や配線工程などの設備の増強に使われます。


需要が高まる画像センサー

ソニーのこの度の投資は、米アップルのiPhoneなどで画像処理に使われるイメージセンサーの需要拡大に経営資源を集中させることにあります。増産される積層型CMOSイメージセンサーは、光を受けるセンサーの裏面に画像処理チップを貼り合わせる構造となっているため、チップの面積を抑えながら高画質を実現できるというものです。同製品は米アップルだけでなく、中国などの新興メーカーからの引き合いも強くなってきています。

このようなスマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスの市場が拡大するにつれて、積層型CMOSイメージセンサーの需要の拡大も見込まれます。ソニーが、積層型CMOSイメージセンサーの生産力増加に投資するのは、これらの需要を捉えるためです。実際2月には、ソニーが新型iPhone用カメラ部品の供給を倍増させるということで米アップルと交渉に入ったことが報じられました。

スマートフォンはますます高品質なカメラが求められており、しかも背面だけでなく、自分撮り用の前面カメラにも高品質な性能が求められています。また、タブレット端末でも高品質なカメラが必要になりますので、積層型CMOSイメージセンサーの需要拡大は必至とみて良いでしょう。ソニーは、積層型CMOSイメージセンサーでの首位の維持のためにも、生産能力を増強し、一貫した供給体制をさらに強化するとしています。


業績回復の柱となるか

ソニーの昨年度の連結業績を見ますと、売上高が7兆7673億円と前年度比14.3%増でしたが営業利益は265億円と前年度比88.3%減で、最終損益は1284億円の赤字で1699億円悪化しています。これは期初に見込んでいた売上高7兆5000億円、営業利益2300億円、当期純利益が500億円を大幅に下回りました。

そのため、ソニーではさらなる構造改革が必要とされており、代表執行役EVP兼CFOの吉田憲一郎氏は、CMOSセンサーをはじめとしたデバイスはもちろん、モバイルなどもキャリア相手のビジネスを強化することで変動性を抑える、と語っています。厳しい状況の中でも、世界シェアが約3割を占めているCMOSセンサー事業への投資は、同社の業績改善の鍵を握っていると言えます。

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