12月は3月、9月に次いで株主優待権利取りの銘柄が多い。この時期、株主優待目当てに仕込みをかける人も少なくない。

株主優待は投資家の楽しみのひとつだが、飛びつくのではなく、慎重に検討する必要がある。そうでないと、大事な優待を受けられなかったり、思わぬデメリットを被ったりすることがあるからだ。今回は株主優待を狙う際の注意点について解説する。

株主優待とは何か

株主優待,税理士,まとめ
(画像=PIXTA)

株主優待とは、上場企業が配当金とは別に、株主に自社製品や金券などを送るサービスのことをいう。株主優待の制度は世界でも珍しい。日本人は、配当金以上に贈り物を喜ぶ傾向があり、これに着目した百貨店や航空会社、食品会社など消費者向けの事業を行う企業を中心に行われてきた。優待を受け取った株主がそのまま企業の顧客になることもあるため、企業にとってもメリットが大きい。現在では、上場企業の3分の1が導入しているという。

株主優待は、配当金とならび、長期保有株主にとっての大事な楽しみだ。節約やレジャーの一助となっているケースも見受けられる。生活に潤いを与えてくれる株主優待だからこそ、以下のような点に気を配っていただきたい。

注意1 買うタイミングを間違えない

株主優待をもらうためには企業の決算日に株式を保有していることが条件となる。ただし、この日に買えばいいというわけではない。数日前の「権利付き最終日」までに、お目当て優待の株式を購入していることが必要となる。

そのためには、決算日を1日目として逆算して計算した4営業日前の「権利付き最終日」に株式を保有していることが必要だ。つまり、12月31日が決算日の企業ならば、12月28日が権利付最終日となる。「決算日に持っていればいい」と誤解してうっかり前日に購入しても株主優待は貰えない。

また、株主優待目当てで株式を購入するのはあなただけではない。似たような人はたくさんいる。そして彼らが株主の権利確定を意識しだすのは大体決算日の1か月前くらいからだ。そのため、1か月前から株価が上昇する。権利確定の直前には、株価が企業の実際の価値に比べて割高になっていることも珍しくない。優待の費用対効果を高くするためにも、株式を買うタイミングには注意しておこう。

注意2 株主優待がもらえる条件や内容を確認する

権利付き最終日までに株式を購入することもさることながら、株主優待がもらえる条件についても注意したい。株式が買える最低単位は多くの場合100株からだ。しかし、最低単位が100株だからといって優待の対象が100株以上とは限らない。銘柄によっては「優待の対象は300株から」というのもある。

また、銘柄によっては、保有株式数以外に継続保有条件があることもある。キユーピー <2809> の場合、3年以上継続して株式を保有していることが条件となっている。つまり、5月末と11月末の株主名簿に、7回連続かつ同じ株主番号で名前がないといけないのだ。

さらに、優待の頻度も企業ごとに異なる。年1回限りの優待の企業もあれば、年2回の起業もある。ヴィレッジヴァンガード <2769> やユーシン <6985> のように、長期間保有していればいるほど、株主優待が増える銘柄もあるのだ。焦って買うのではなく、きちんと条件や内容を吟味したうえで株式を購入するようにしたい。

注意3 企業の財務内容や業績には細かく配慮を

株主優待が目当てだと、どうしても優待の内容ばかりに意識が行き、本来投資する場合に必ず見るべき財務内容や企業業績にチェックが疎かになりやすい。「株主優待が目当てなんだから企業の経営成績なんてどうでもいい」と思うかもしれない。

けれど、忘れてはいけない。優待を手にするために、あなたは少なくないお金を株式に投じたはずだ。企業の業績や財務内容は、あなたのそのお金の行く先を左右する。上場企業だからといって安泰なわけではない。2010年に破たんしたJALはまさにその典型例だ。

破たん直前のJALは、財務内容や業績に問題があったが、株主に対して、正規料金が半額になる株主優待券を配布していた。そのため、優待目当てで投資する株主が多数存在した。しかし、破たんに伴い上場は廃止になり、JALの株式は一瞬にして無価値になった。

優待目当てとはいえ、株式を購入する行為は投資に他ならない。小さな利得のために大事な資産を失うことのないよう、企業の財務内容や株価、業績などには常日頃からチェックをしていただきたい。また、「監理銘柄に指定された企業には投資しない」「赤字が〇年以上続いた企業は投資対象から外す」「自己資本比率が50%超の企業に限る」など、自己資産を守るためのマイルールを持つこともオススメする。

注意4 株主優待の変更・終了の可能性も視野に入れよう

一般に、株主優待がある企業の株価は高めに推移しがちだ。また、市場全体が低迷していても、株主優待がある株式はわりと堅調で、仮に暴落したとしても値を戻しやすい。

言い換えると、優待の魅力が薄れてしまったり、あるいは優待そのものが終わったりすると、株式保有の理由がなくなる。結果、投資家が離れてゆき、株価が下落する。

また、株主優待制度自体、企業の任意で行っていることであり、義務ではない。変更や終了については、配当と異なり、株主総会ではなく取締役会の決議でカンタンに行うことができる。突然の内容改悪や終了は珍しいことではないのだ。

「もらえるだけありがたい」「優待目当てだから株価なんて関係ない」と思っていても、人間、欲がある以上、損得には敏感な生き物だ。株価の下落や優待の改悪・終了に動揺し、ヘタすると「損切りしたいのに怖くてできない」というジレンマに陥る可能性は否定できない。

資産が過度に目減りしてしまうことのないように、購入前にあらかじめ優待の変更や終了があった場合、どのように対応するかを決めておいたほうが好ましい。

注意5 効率よく優待を得たいなら少量多銘柄を心がけよ

株主優待の内容は保有株数によって異なることが少なくない。だからといって、ただたくさん持てばいいというものでもない。なぜかというと、株主優待は、配当金と違い、保有株数と必ずしも中身が比例するとは限らないからだ。

よくある株主優待の例で、次のようなものがある。

・保有株数100株以上1000株未満の株主に1000円相当の自社商品を贈る
・1000株以上の株主に2500円相当の自社商品を贈る

この場合、株主優待目的で株を保有するなら、1000円相当の商品狙いならば100株保有、2500円相当の商品狙いならば1000株保有がもっとも費用対効果が高いとなる。ただ、ここで冷静に考えてみよう。株主優待が投資の本命なら、本当に1000株保有することが合理的なのだろうか。1株1000円だとして、10万円程度を1000円の商品のために投資に充てるならまだしも、100万円を2500円の商品のために充てるのは賢いと言えるのだろうか。10万円を1000円の株主優待にあて、残りの90万円を10万円ずつ、他の株主優待の優れた銘柄に充ててより多くの優待を受け取る方がより合理的なのではないだろうか。2500円分の優待1個だけでなく、1000円相当分が10個もらえることになるのだから。

大口株主は、配当目当てならば有利だが、株主優待目当てだとむしろ不利になる。株主優待が目的の投資の場合は、むしろ少額をさまざまな銘柄に充てたほうが、かえって効率がよいことになる。資金を用意したとしても、できるだけ少額でよりよい優待が受けられるよう様々な銘柄をリサーチしておこう。

注意6 「つなぎ売り」の場合は要件や手数料など面倒が増える

信用取引で株を買っても株主優待の対象とはならない。そのため、株主優待狙いなら現物で株式を購入しなければならない。ただし、この場合、権利確定日の翌日の株価下落、いわゆる「権利落ち」が不安要素となる。もともと業績がよく人気のある銘柄なら心配無用だが、相場によってはそのまま株価が戻らない心配もある。

そこでよく行われるのが「つなぎ売り」だ。つなぎ売りとは、株主優待獲得のために現物で株式を買うのと同時に、信用取引で同じ銘柄を空売りする手法を言う。権利落ちで損失が出ても、空売りで同じ金額分の利益が出るため、相殺することで損失をゼロにすることができる。

ただし、つなぎ売りの場合は、いくつか制約やコストがかかりやすい。事前に信用口座を開設しておく必要があるし、売買手数料や貸株料、配当調整金、逆日歩といったコストがかかる。また、信用取引のため、利益だけでなく損失についてもレバレッジ効果が発揮されるため、現物取引よりもハイリスクになりやすい。また、銘柄の中には、先述のキユーピーのように、株主優待を受けるために長期の保有期間を設定しているものもある。この場合、つなぎ売りを利用すると株主優待が受けられなくなってしまうので注意したい。

注意7 株主優待は所得税の課税対象となることも

株主優待でよく知られるのが、タオルや傘、食品などの消耗品だ。しかし中にはクーポン券や商品券などを配布するものもある。こういった株主優待が積もりに積もると、まとまった金額になることがある。この場合、雑所得として確定申告をしなくてはいけないケースもある。

正社員やバイト・パートなど給与所得を受け取っている人の場合、株主優待を合わせて給与所得以外の所得の合計が20万円を超えたら所得税の確定申告が必要だ。ただ、20万円以下だとしても所得税の確定申告は不要でも住民税の確定申告は必要となる。また、フリーランスや専業主婦などの場合は、株主優待を含めた総所得が38万円を超えるようであれば確定申告が必要となる。

実際の株主優待は千円単位のものがほとんどだ。だから確定申告しなくてはいけないケースはあまり見かけない。ただし、株主優待を熱心に研究し、総額数十万になっているようならば申告を検討したほうがよいだろう。

いかがだっただろうか。株主優待は株価変動とリンクしにくいものであるが、まったく影響受けないわけではない。そして投資であることには変わりがない以上、費用対効果や合理性を検討する必要がある。配当や売買益が目的の株式投資と同じく、企業業績や財務内容、投資全体のバランスや効率性、合理性を勘案しながら、自分のスタイルに合った投資計画をたてていただきたい。

鈴木 まゆ子
税理士、ライター、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年税理士登録。外国人の日本国内での起業支援に従事。会計や税金、仮想通貨に関する話題についての記事執筆を行う。税金や金銭、仮想通貨、お金に関する心理学についても独自に研究中。共著『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。