著者は、あらゆる基盤的環境のなかで、いまだにあまり取り上げられないジャンルとして「地政学・地経学的リスク」があると指摘します。地政学とは、「国家が行なう政治行動を、地理的環境、条件と結びつけて考える学問」ですが、主に、「テロの脅威」と「地域紛争の勃発」の二大リスクに注目が集まります。

(本記事は、折木 良一氏の著書『自衛隊元最高幹部が教える 経営学では学べない戦略の本質』KADOKAWA=2017年12月1日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

【関連記事 『経営学では学べない戦略の本質』より】
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・(2) ミッドウェー・ガダルカナルに学ぶ戦略・構想の重要性
・(3) なぜ現代はテロや紛争が頻発するようになったのか

自衛隊元幹部が教える戦略
(画像=Webサイトより、※クリックするとAmazonに飛びます)

相手の「能力」と「意志」だけに基づく判断の危うさ

戦略立案において「相手を知る」とき、仮想敵国や競合他社の「能力」と「意志」を見極めることが重要であると述べました。

たとえば安全保障の世界では、仮想敵国の脅威は、軍事的能力×侵攻の意志の掛け合わせで考えます。

相手が日本に侵攻の意志をもっていたとしても、それを可能にする軍事的能力が伴っていなければ、日本に対する具体的な「脅威」とはならないわけです。

逆に相手が仮に軍事大国であった場合でも、日本に損害を与える意志がなければ「脅威」と見なすことはできません。

軍事大国のアメリカは日本を侵攻できる能力を備えていますが、日本の同盟国ですから、侵攻の意志はない。したがって、脅威ではないと判断できます。それでは中国はどうか。

すでに日本に損害を与えるのに十分な軍事的能力を有していますし、尖閣諸島に圧力をかけてきているので、意志もある可能性が高いと判断できます。

ただし、意志は指導者の性格なども含めて読みづらい部分があるため、過去の歴史から類推するという見極め方もあります。

相手が過去に何をしてきたか、企業でいえば過去の戦略や戦術によって判断するやり方です。

つまり、相手の能力と意志から、その相手がとりうる戦略と、彼らの打ち手によって自分たちが被るであろうリスクを判断しながら、負けないための戦略をつくりあげるわけです。

とはいえ、相手の能力と意志を過剰に意識したままで状況を判断すると、結果的にひどい過ちを犯すことがあります。なぜでしょうか。

それは相手の能力と意志もまた、いま置かれている世界の「基盤的環境」に大きく影響を受けるからです。

そうした基盤的環境がこれまでの時代と大きく変化しているのであれば、その変化自体について考えなければならないのは当然でしょう。

世界の基盤的環境の変化と聞いて考えつくのは、たとえばテクノロジーの発達ではないでしょうか。

電子メールも携帯電話もない時代に生まれ育った人間として、今日のテクノロジーの進展は、当時からはまさに隔世の感があります。

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を多くの人が利用することで、情報とは一方向に流れるものではなく、双方向でやりとりされるものになりました。

それがいわゆるSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)という顧客が固定化された時代のマーケティングではなく、デジタル・マーケティングのような評判と口コミをベースにしたマーケティングを生み出したことなどは、紛れもない事実でしょう。

あるいはテクノロジーの発達は「デジタル・ディスラプション」(デジタル時代の「創造的破壊」)という現象も引き起こします。

優良な商品と顧客をもっている既存の大企業が、新興企業のテクノロジーによってあっという間に事業領域を侵食され、壊滅的なまでに追い込まれる。

ほんの少し前まで、アメリカの検索大手であるグーグルが自動車産業に参入することを、誰が想像できたでしょうか。

ハーバード・ビジネススクールの著名教授であるクレイトン・クリステンセンが唱えた「破壊的イノベーション」が、デジタル時代にはさらに加速していることを多くのニュースで私たちは目にします。

こうした基盤的環境の変化をビジネススクールはつねに研究し、そのなかで新しい戦略を構築し、世界に広めてきました。

いまやアメリカのビジネススクールにおいては、マイケル・ポーターのような戦略論よりも、SNSなどテクノロジーをベースにした研究が盛んである、と聞いたこともあります。

もう一つ、世界の基盤的環境で思いつくものを挙げておきましょう。新興国の急速な経済大国化がその例です。

冷戦終結以降、中国はその市場の大きさや、無尽蔵とも思える安価な働き手の供給という点から、つねに世界のマーケットの注目を集めつづけてきました。

そうした長期トレンドを踏まえたうえで、企業は生産拠点を中国に移したり、中国の賃金が上がってきたならば、さらに賃金の安い新興国、たとえばバングラデシュやミャンマーなどを開拓することで、グローバル戦略を進めてきたわけです。

なぜ現代はテロや紛争が頻発するようになったのか

しかし、そうした基盤的環境のなかで、いまだにあまり取り上げられないジャンルがあります。それこそが、本章で議論したい「地政学・地経学的リスク」です。

最近耳にすることも多い「地政学」ですが、そもそも「地政学」の定義とは何でしょうか。 地政学とは、「国家が行なう政治行動を、地理的環境、条件と結びつけて考える学問」といえるでしょう。

もともと安全保障の分野では頻繁に登場する言葉でしたが、2002年9月、アメリカのイラク攻撃に対して、米連邦準備制度理事会(FRB)が「地政学的リスク」という言葉を使って以降、経済面でも一般的な言葉として知られるようになりました。

地政学的リスクの二大要因は、「テロの脅威」と「地域紛争の勃発」といわれます。

仮にそうした出来事に直接巻き込まれなくとも、経済がグローバル化するなかで、テロや国際紛争のリスクが全世界的に影響を及ぼすことが増えています。

とくに中東地域での紛争やテロは、原油価格や株式、為替などの経済的な変動を引き起こし、国際経済や企業活動などに影響を及ぼす不安定要因となることが想定されます。

中東地域でこれほどテロや紛争が多発するようになったのは、なぜでしょうか。簡単に歴史を振り返りつつ、要点を押さえておきましょう。

冷戦が終結し、ソ連が消滅してアメリカの一極構造が確立してから10年後の2001年9月11日、テロ組織アルカイダがアメリカ同時多発テロを起こしました。

テロ組織が戦争レベルの破壊行為を行なえることを証明した9月11日から、国家にとっては「対テロ戦争」が「備えるべき有事」となったのです。

同時にテロへの対処の難しさも浮き彫りになりました。テロ組織には、冷戦時代のような「懲罰的抑止力」(こちらに害を与えるような行動に出れば、その相手に重大な打撃を与える能力と意志をもっていることを明示し、有害な行動に出ることを思いとどまらせること)が効きません。

ある組織をいったん壊滅しても、人を替え、場所を変えて、テロは生き残ります。まるでアメーバのような存在なのです。

とはいえ、本土攻撃で多大な損害を被ったアメリカですが、そこから反撃に転じます。

テロの首謀者であるオサマ・ビン・ラディンの引き渡しを拒否したという理由で同年十月、アフガニスタンに侵攻し、当時、アフガニスタンを支配していたタリバン政権を放逐しました。ビン・ラディンは取り逃がしましたが、2011年にパキスタンで殺害します。

さらにはアフガニスタンに次いで、2003年に「大量破壊兵器の開発」を理由としてイラクに侵攻し、サダム・フセイン政権を崩壊させます。

その後、イラクが大量破壊兵器開発をしていた証拠がなかったことが判明し、当時のジョージ・W・ブッシュ政権は大きなダメージを受けました。

先制攻撃で二つの政権を倒したアメリカですが、対テロ戦争はまだ続いています。そのなかで、主要な敵は「アルカイダ」から「イスラム国(IS)」へと移りました。

テロ組織そのものを根絶するのは不可能に近いことですが、テロの土壌を潰すことで、その発生を抑えることは可能です。

そうした意味で、対テロ戦争における最大の「不安定要素」は「破綻国家」でしょう。とくに中東で統治能力のない、あるいは統治能力が低下している「破綻国家」が増大しているからこそ、そこに「力の空白」が生まれて、テロ組織が入り込む隙が生じるのです。

近年の特徴は、そうした「破綻国家」のなかで「力をもった破綻国家」が出てきたことではないでしょうか。

先進国が自国の利益のために、政府と反政府の戦いにおいて一方を支援したり、武器を供与したりしているうちに、支援されていた側が力をつけて当の先進国に敵対する。

あるいは先進国が「これは収拾がつかない」と判断して撤退したあと、その地域に武器が残っていれば、望ましくない勢力に使われることもあります。

先進国にとっては「過去のツケ」を払っているような状態で、アフガニスタンとイラクがまさにその例です。

アメリカは湾岸戦争とイラク戦争という二つの戦争において、民主主義の経験をもたず、イスラム的価値観に基づいた多民族国家であるイラクに介入し、結局、占領統治に失敗して撤退しました。

イラクのような破綻国家をこれからどう安定させるかが、国際安全保障上の大きな課題といえるのではないでしょうか。

さらに、イスラム過激派の影響は、イスラム教徒が多い中央アジアにも及びつつあります。 そして、中央アジアと中国の新疆ウイグル自治区の国境は、十分に管理されているとはいえません。

その新疆ウイグル自治区では、ウイグル族への中国共産党政権の厳しい取り締まりが続いています。

しかし、中東を後背地とするウイグル・イスラム教は、チベット仏教のように中国国内で封じ込めることができません。

さらに東南アジアには、マレーシア、インドネシア、フィリピンまで続く「イスラム・ベルト」が存在しています。

それに沿って東南アジア全体へテロ組織が南下してくる可能性もあり、日本企業の海外生産拠点が被害を受けるリスクも高まっているといえるでしょう。

日本企業の「地政学的リスク」への意識は突出して低い

いま私がお話ししたようなことは、たとえば国際政治の講義などではよく取り上げられることです。

しかし、それが企業で真剣に議論されるようなことは、それほど多くないのではないでしょうか。

その結果かどうかはわかりませんが、日本企業には地政学的リスクに対する意識がそもそも欠けているように思われます。

第二次世界大戦後、紛争や戦争というものに直接的にはほぼ相対することなく、平和な環境のなかで過ごしてきた日本人にとって、そうしたリスクをいくら言葉で語られても、ピンとこないのかもしれません。

日本企業の地政学的リスクへの意識は、世界の企業と比較したときにも突出した低さです。

デロイトグローバルが2017年5月に発表したレポート「価値創造を目指して:過信をせずにリスクを見直す」の結果を引用しましょう。

売上高10億ドル以上のグローバル企業の300人以上の取締役会メンバーと経営幹部が、リスクとリターンの適切なバランス維持における自らの組織の能力をどのように評価しているかを調査した同レポートによれば、自社ビジネスのリスクとしてテロや紛争などの「地政学的事象」を挙げた割合は九%でした。

その一方、日本のデロイトトーマツ企業リスク研究所が発表した「企業のリスク・クライシスマネジメント実態調査」2016年版によれば、アンケートに回答した日本の上場企業435社が日本国内においてもっとも優先して着手すべきと答えたリスク・クライシスは、「地震・風水害等、災害の発生」が37.0%と最多で、他を圧倒しました。

東日本大震災のインパクトがいかに強かったか、ということかもしれませんが、そのなかで「国際紛争、テロ等の発生」はリスク・クライシスの上位一〇位にも入っていません。

これらの企業の海外拠点においては「国際紛争、テロ等の発生」3位の16.2%となっていましたから、進出先ではある程度、地政学的リスクを認識しながらも、国内本社の意識はまだまだ低い、というのが現実ではないでしょうか。

しかし企業が海外進出した先や、販売・調達先の地域で国際的な紛争が起これば、事業継続が危ぶまれることはもちろん、生産や販売に甚大な影響がありますし、従業員の安全も確保しなければなりません。

仮にその地域と直接的な取り引きがなくとも、その紛争のインパクトによって為替が変動しますから、企業の輸出入には関係します。

「タテマエ」世界の崩壊がトランプ大統領を誕生させた

さらにいえば、じつは現代の「基盤的環境」の本質は、たんなる「地政学的な視点」から見るだけでは不足がある、と私は考えています。

その本質に近づくには、現在において経済と政治がいかに結びついているのか、ということについて熟慮しなければなりません。

現在、私たちが生きている世界は、「目に見える」実体経済と、「目に見えない」金融経済によって構成されています。

世界の個人金融資産は168兆ドル(2015年)、実体経済の規模を世界の名目GDPで測ると七四・二兆ドル(国際通貨基金調べ)といわれるので、「目に見えない世界」の経済規模は、「目に見える世界」の経済規模の二倍以上にも膨らんでいます。

すでに世界経済は「目に見えない世界」が牽引しているわけですが、そのなかで富める者はますます富み、労働時間や仕事のきつさのわりに現場で働く人間が金銭的に恵まれない、という状況が生じてしまい、そこから生活不安やマネーゲームへの不信が生まれてくるのです。

そうした経済的な不安定を背景として、欧米でとくに顕著になっている動きが、「タテマエ」と「ホンネ」のギャップです。

「移民に対して寛容でなければならない」「難民をできるだけ受け入れるべきだ」「宗教や民族・人種差別はいけない」という近代的な人道主義は、人類進歩の目標であるわけですが、その一方では、「もてる者」ならではのタテマエが潜んでいたことも否めません。

自らの生活に余裕があったからこそ、人は他者にも寛容になれたのです。

しかし、そこで生活の余裕がなくなり、タテマエの世界が成り立たなくなったとたん、移民に自分たちの仕事が奪われているといったホンネが社会に溢れてくるようになりました。

SNSなどが市民の手に渡った高度情報社会では、そうしたホンネが猛スピードで拡散し、社会にポピュリズム(大衆迎合主義)が充満します。

移民問題、人種問題、宗教問題、経済格差に取り組もうとすると、自己中心主義の自国・自国民(民族)ファーストの政策が好まれ、タテマエの世界で成立していた既存の制度、システムが壊れて、社会が不安定な状態に陥ってしまう。

それがアメリカのトランプ大統領の誕生や、イギリスのEU離脱などの原動力となったことは、いうまでもありません。

自国・自国民(民族)ファーストの国が増えると、外交においては、国際協調主義ではなく自国の国益追求に走るので、周辺国との緊張が高まります。

その一方で、内政においても、民族や人種、宗教などにこれまでよりも焦点が当たるため、一国内の連帯が分断され、政変や政情不安が発生し、そこからテロや内戦のリスクがより高まる構造が生まれてしまうのです。

「主権国家」ではなく「サプライチェーン」がつくる新秩序

経済と政治・外交、安全保障の結びつきを考えるうえで、大いに参考にした書があります。 インド出身のパラグ・カンナ氏(シンガポール国立大学公共政策大学院上級研究員)が著した『「接続性」の地政学』(原書房)です。

先に述べたように、地政学とは「国家が行なう政治行動を、地理的環境、条件と結びつけて考える学問」でした。

しかしカンナ氏は同書で、旧来の地図をベースにした地政学的な発想はすでに時代遅れであり、複雑系に基づいたデジタル社会の「地理」をベースに新しい視座を手に入れるべきだ、と主張します。

2017年6月6日に行なわれた日本記者クラブの講演でも、カンナ氏は「従来の国境線を土台にした地政学は再考すべきで、複雑化する世界情勢を理解するためには『接続性』(Connectography)をベースにした新しい解釈が必要になり、インフラによる都市間の『接続性』が新しい国際秩序をつくる」と主張しました。

「技術革新で地理はかつてのような意味をもたなくなった。『代わって重みを増しているのが、航空路、鉄道網、道路網、シーレーン、パイプライン、高速インターネット、そしてサプライチェーンなど、いかに効率よい接続を実現できているか、である』」(司会の共同通信社論説委員長の杉田弘毅氏)。

地政学との関係でいえば、これまで地政学を考えるうえで前提となっていた「主権国家」という存在に代わって、「サプライチェーン」こそが新しい前提になることがポイントです。 そして、そこでサプライチェーンをつくり上げるために不可欠になるのが、先の「接続性」にも関連する「運輸」「エネルギー」「コミュニケーション」のネットワークである、とカンナ氏は語ります。

こうした地球規模でのグローバルなサプライチェーンの構築は、世界にとってポジティブなものである、というのがカンナ氏の立場です。

冷戦終結から10年後の1999年、『ニューヨーク・タイムズ』の名物コラムニストであるトーマス・フリードマンは、『レクサスとオリーブの木』(草思社)で、多角的な視点からグローバル時代を肯定する言説を展開し、当時の論壇にインパクトを与えました。

それに倣えば『「接続性」の地政学』は、現代における新しいグローバル賛歌といえるのかもしれません。

グローバル・サプライチェーンのモデルとして、カンナ氏がイメージするのはEUです。 EUのアイデアの原型を考えたのは、フランス企画庁長官であったジャン・モネ。

彼は骨肉の争いを繰り返したドイツとフランスとの戦争を二度と起こさないため、独仏の石炭と鉄鋼を共同機関の管理下に置くというアイデアを取りまとめました。

のちにシューマン・プランといわれるそのアイデアが原型になって、ドイツとフランスの2カ国に加え、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクが参加した欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が1952年に誕生し、それが現在のEUにまでつながるのです。

経済的な利害関係を先に構築することで、不確実性を減らす世界を生み出す。 そうしたEUの原理を国際関係にまで広げよう、というのがカンナ氏の論理だといえるでしょう。

その是非についてはここでは論じません。認識しておくべきは、すでに世界はこうしたサプライチェーンによって「つながっている」という事実であり、それが基盤的環境になっている、ということです。

「地経学」で中国の進める「一帯一路」を分析すると……

こうした基盤的環境のなかで、地政学よりもさらに重要になってくるのが「地経学」という概念である、と私は思います。

地経学とは、アメリカの著名な戦略家であるエドワード・ルトワックが、1990年に発表した「地政学から地経学へ」という論文のなかで初めて使用したといわれています。

「地政学」が「国家が行なう政治行動を、地理的環境、条件と結びつけて考える学問」であったのに対し、「地経学」とは、「政学的な利益を、経済的手段で実現しようとする政治・外交手法」と定義づけることができるでしょう。

そして、この地経学的アプローチをまさに体現しようとしている国が中国です。その実例が、中国の掲げる「一帯一路」構想といえます。

陸路で中央アジアを経て欧州に続く「シルクロード経済ベルト」を「一帯」とし、南シナ海からインド洋を通り欧州へ向かう「21世紀海上シルクロード」を「一路」とする「一帯一路」構想は、習近平国家主席が2013年9月のカザフスタンの大学での講演で、欧州とアジアをつなぐ「シルクロード経済ベルト」の共同建設を提唱したのが契機だといわれます。

その年の12月ごろから、中国政府が公式の用語として使用しはじめ、2015年3月には、国家発展改革委員会・外交部・商務部が連名で「シルクロード経済ベルト及び21世紀海上シルクロードの推進・共同建設に関するビジョンと行動」を発表しました。

折木 良一(おりき・りょういち)
1950年熊本県生まれ。自衛隊第3代統合幕僚長。72年防衛大学校(第16期)卒業後、陸上自衛隊に入隊。97年陸将補、2003年陸将・第九師団長、04年陸上幕僚副長、07年第30代陸上幕僚長、09年第3代統合幕僚長。12年に退官後、防衛省顧問、防衛大臣補佐官(野田政権、第2次安倍政権)などを歴任し、現在、防衛大臣政策参与。12年アメリカ政府から4度目のリージョン・オブ・メリット(士官級勲功章)を受章。