昨年11月上旬から12月末にかけて2万3000円手前の水準でもみ合った日経平均は、年初(1月4日)の大幅高(741円高)で2万3000円を超えた。その結果、日経平均は1989年末につけた過去最高値(3万8915円)からバブル崩壊後の最安値(2009年3月に付けた7054円)までの下げ幅の「半値戻し」となる2万2985円を上回り、23日には終値で2万4000円をも超えた。日経平均が終値で2万4000円を超えたのは1991年11月15日以来、約26年ぶりのことだ。

一方、米国市場では年初からNYダウやナスダック指数の過去最高値更新が続いている。ナスダック指数は年初の2日に7000を超えると22日には7400を上回り、NYダウは4日に2万5000ドルを超えると、わずか8営業日後の17日には2万6000ドルを上回った。NYダウが1000ドル単位の節目を超えるのに要した日数として、これまでの最短は2万5000ドル超えに要した23営業日だったことから、年初来の米国株高は警戒すべきスピードとも考えられる。

ただし、年初来の世界的な株高の背景に投資家の強気な相場観があることは確かなようだ。たとえば、バンクオブアメリカ・メリルリンチが発表した1月の機関投資家調査(調査期間は1月5~11日)によると、株式相場の上昇が来年以降まで続くとみる投資家の比率が3割に達し、向こう3カ月の株価急落に備える投資家の比率は2013年以降で最低となった。前回12月調査では今年の4〜6月期に相場が天井を打つとの見方が有力とされていたが、世界的な景気回復や企業業績に対する安心感を背景に株式相場の先高感が高まったと考えられる。

米国の長期金利上昇に注意が必要

日経平均,予想
(画像=Thinkstock/GettyImages)

米国の景気については年初から良いニュースが相次いでいる。たとえば、1月3日に発表された昨年12月のISM製造業景況感指数は予想外に上昇した。また、12日にNRF(全米小売業協会)が発表した昨年の年末商戦の売上高も前年同期比5.5%増とNRFの事前予想(最大4%増)を上回り、リーマン・ショック以降では最大の伸び率となった。

株高による資産効果の影響もあり、米国の景気は年明け以降も個人消費主導で好調に推移していると考えられる。さらに、IMFは22日に改定した世界経済見通しで、米国について大型減税の効果を織り込んだ結果、今年の成長率見通しを昨年10月時点の見通し(2.3%)から2.7%に上方修正した。

一方、22日の米10年国債利回りは一時2.67%と、2014年7月以来ほぼ3年半ぶりの水準まで上昇した。金利の上昇が続けば昨年来の「低金利・株高」が「高金利・株安」に転じる可能性があり、注意が必要だ。前段でふれた1月の機関投資家調査で、可能性は低いが起きた際の影響が大きい「テールリスク」について、「物価上昇と債券相場の急落(つまり金利の急上昇)」が36%で首位だったことは頭の隅に置いておきたい。

目先の東京市場では株高が続く可能性

東京市場では1月末から昨年4〜12月期の決算発表が本格化する。昨年10月末から本格化した昨年4〜9月期の決算発表では、2018年3月期の業績予想を上方修正する企業が目立ったことが好感され、日経平均は11月9日の取引時間中に一時2万3382円の高値を付けた。今回の決算発表でも業績予想を上方修正する企業が目立てば、日経平均は一段高となる可能性もあろう。

注意すべきスケジュールとしては、米国の暫定予算の期限(2月8日)が挙げられる。暫定予算が延長されなければ政府機関が閉鎖され、米国市場で株安要因となる可能性に注意が必要だ。

「日本の需給ギャップ」はデフレ脱却を示唆

日銀が発表した昨年7〜9 月期の「日本の需給ギャップ」はプラス1.35%と4 四半期連続のプラスで、リーマン・ショック前の2008年1〜3 月期に記録したプラス1.47%以来の高い水準となった。

需給ギャップは文字通り「日本全体の需要と供給の差」で、プラスになれば物価が上がりやすくなり、中長期的にみると株価との相関性も認められる。需給ギャップのプラスが今後も続けばデフレ脱却の可能性が高まるが、需給ギャップのプラスが続くためには需要が継続的に増加することが必要だ。そのためには個人消費の継続的な増加が必要で、日本の場合、そこで問題となるのが賃金だ。

厚生労働省が発表する「毎月勤労統計」によると昨年11月の所定内給与(基本給に相当する)は前年同月比で0.3%増にとどまる一方、総務省が発表する「消費者物価統計」によると昨年11月の消費者物価上昇率(生鮮食品を除く)は前年同月比で0.9%上昇した。この結果、2カ月連続で賃金上昇率が物価上昇率を下回り、実質賃金が減少した。実質賃金の減少が続けば個人消費に悪影響を及ぼし、需給ギャップの縮小やマイナス転換につながる可能性に注意が必要だ。

1月23日には経団連と連合のトップが会談し、今年の春季労使交渉(春闘)が本番を迎えた。安倍首相が3%の賃上げを求めている春闘の結果も含めて、今後の賃金上昇率が上がるか否かが注目される。

野間口毅(のまぐち・つよし)
1988年東京大学大学院工学系研究科修了後、大和証券に入社。アナリスト業務を5年間経験した後、株式ストラテジストに転向。大和総研などを経て現在は大和証券投資情報部に所属。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定証券アナリスト。