個人の健康、家族、人脈やスキル、特技、性格など、一般的には資産として数値換算しにくい、「目に見えない資産」が資産形成をする上で大きな武器となる場合があります。「目に見えない資産」を寝かせておくのをやめ、「自分の代わりにお金を生み出す資産」にしていきましょう。

(本記事は、紀村 奈緒美氏の著書『貧困40代シングルマザーが金持ち母さんになれました。』=ぱる出版、2017年12月21日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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「資産」と「財産」の違い

資産とは、預貯金や所有する土地・家屋、所有する有価証券などの経済的に金銭価値のあるものの総称のことを指し、英語で表現すると、assetです。

一方、財産とは、直接的な金銭的価値ではありませんが、価値があるとみなされるものも含め、全ての価値があるものを指します。英語にすると、propertyか、fortuneで表現するのがしっくりくると思います。

私が定義している資産とは、預貯金や所有する土地・家屋、所有する有価証券などの経済的に金銭価値があるもののみならず、「目に見えない資産」も非常に重要だと考えています。

「目に見えない資産」とは、財産と近い意味合いですが、個人の健康、家族、人脈やスキル、特技、性格など、一般的には資産として数値換算しにくいものも、活用できるものは、その人にとって「目に見えない資産」と考えています。

例えば、健康はお金には代えられませんが、人々にとって健康であることは大きな資産価値があります。健康であることで、自己の労働を提供して収入を得ることができますが、健康でなくなってしまったらそれはできません。

健康ではないとケアをするための費用もかかりますが、健康であればそのコストもかかりません。お金で価値換算はできませんが、健康は目に見えない資産の一つです。

また、とある著名な人に会ってビジネスの話を提案したいときに、人脈があれば、著名な方にお会いするツテがあるかもしれません。しかしそこまでの人脈がない場合、会ってビジネス提案をする機会も得られません。

さらに、人脈はあっても、その人の性格や日ごろの行動や発言が周囲から好ましくないと思われている場合には、紹介をしてもらえない可能性もあります。性格や人徳も「目に見えない資産」の一部なのです。

もともとの資産を持っていないものが、資産形成をしていくときには、少ない資産力で作り上げることができる資産を構築することで、大きな武器となる場合があります。

「目に見えない資産」があったことで、実際の投資に役立った事例を紹介します。

2013年にコンテナレンタルボックスとバイクガレージの事業を始めたかったのです。不動産投資を2010年から開始したものの、いい物件情報はすぐに現金を保有している人や、不動産屋とのコネクションが強い先輩方の間で瞬間蒸発的になくなっているという事実を知りました。

私はサラリーマンをしていたので、平日はそんなに早く情報がキャッチできません。このハンデが悔しくて、不動産以外の投資はないか、と探していたら、30代のサラリーマン男性が、コンテナレンタルボックス投資をやっていて、投資実績をブログで公開していたのを発見したのです。不動産よりも優秀な利回りでやっていることがわかりました。

そこで、私もコンテナレンタルボックス事業に投資をしたいと考え、インターネットで調べた3社に、問い合わせフォームから、投資をしたいので詳しく話を聞かせてほしいと連絡してみました。

しかし、結果は3社とも無回答。つまり、一見さんお断りの世界でした。

コンテナレンタル事業者からの回答が来なくてもあきらめきれずに、すでに投資をしている30代男性にブログ経由でメールを出してみたのです。

自己紹介と、自身のブログのURL、私の保有している不動産投資物件を見学しませんか?そして、情報交換をしませんか?という提案メールです。

相手の人が不動産投資を覚えたがっているニーズがあることがブログから読み取れたので、相手のニーズにあった提案をしました。

また私は、あなたがやっているコンテナ事業のことを知りたいという点も素直に書いてみました。

そして、数日後に私の所有する不動産物件の見学を一緒にして、その後お茶をして、念願のコンテナレンタル事業について、情報を得ることができました。また、彼が委託している会社の役員も紹介してくれるとのこと。

初対面同士でしたが、ここまでの信頼を得られたのは、一重にブログを書いて自己発信していたことが蓄積された資産になっていたお蔭なのです。

いまもそのコンテナレンタル事業は保有しており、最初に投資したオーナーチェンジ物件の投資金額は全額回収し、安定的に収入を産み出しています。

自分の代わりにお金を生み出す資産とは?

「自分の代わりに働いてくれる資産づくりをしましょう」と提唱しています。自分の代わりにお金を生み出すというのはどういうことなのでしょうか。

例えば、200坪の土地を持っているとします。

その土地は、そのままにしておけば、何も生み出しません。ただの土地です。200坪の土地の価値が2000万円だとして、2000万円で売ってしまい、現金が手元に2000万円あったとしても、それ以上お金は増えません。

つまり、200坪の土地も、2000万円分の現金もそのままの状態ではお金は新しく生み出していないのです。価値が増えていないのです。

そこで、200坪の土地を自分で耕して、果実の木を植えて栽培して、果実を収穫して販売したら、利益がでます。これは土地がお金を生み出せるようになった状態です。でも耕したり自分で栽培したり収穫したり販売して利益回収するのはなかなか大

変だなと思ったら、それをやりたい人に土地を貸せばいいのです。

毎月20万円の地代をいただいて土地を貸せるようになったら、それは土地が働いてくれている状態に変わります。つまり、資産は持っているだけでは増えないのです。

活用して働かせて、毎月毎月収入を生み出せるようにすれば、自分の代わりに働いてくれる資産になります。

土地ではなく、宝石2000万円分を持っていたとします。家にその宝石があれば、資産価値として2000万円ありますが、ただ単に家にあるだけで、そこから収入を生み出してくれていません。

またその宝石を売ってしまい2000万円の現金に替えて、自宅に2000万円の現金があったとしても同じです。

ただ単に現金2000万円があるだけです。そのままではお金は増えません。これでは資産が寝ている状態です。

保有しているだけで活用していない資産のことを「寝ている資産」と呼んでいます。寝ているのはもったいない。資産にはどんどん自分の代わりに働いてもらいましょう。

その2000万円の価値ある宝石を、例えばモデル事務所にレンタルして、毎月毎51月レンタル料金20万円の収入が入ってくるような状態になれば、「寝ていた資産が自分の代わりに働いてくれる状態」になります。

資産は持っているだけでは増えません。働いてもらうのです。

土地のようなわかりやすい資産だと、寝ていることに気づきやすいのですが、もっとわかりにくい「目に見えない資産」も本来活用すれば自分の代わりに働いてくれるのですが、寝かせている人が多いのが事実。

例えば、昔学んだ得意なこと、プロとして収入を得られるレベルではないが、人よりも相当上手で得意なことは、形を変えれば、自分の代わりに働いてくれる資産になることがあるのです。

資産の棚卸しをしよう

資産の棚卸しをしよう、と聞いてどんなことが思い浮かびますか?会社の資産でいえば、現金、売掛金、商品、仕入れ在庫、店舗、機械などがあります。

私が推奨しているのは「自分自身の資産の棚卸し」です。

資産を棚卸しするときには、まず自分の分を書いてみます。次に配偶者の方がいれば配偶者の方の分も追記します。

例えば、旦那様の両親が所有している土地なども追加していきます。資産づくりはできるだけ自分ひとりではなく、家族全体分を考えていきます。

次に書き出しが終わったら、活用できていない資産に着目します。

旦那様の両親が住んでいた元自宅が空き家になってそのまま誰も住んでいないな、とか、親戚がボート所有しているけれど、あまり使っていないって言っていたなとか、自分が昔取得した資格や知識、使っていないななど、活用できていない資産にマークをします。

すぐに、どうやってこれを活用すればいいか、活用方法が思いつかなくても、まずはいったん、寝ている資産が何かを脳に刻んでおきます。

本当に使える資産の再認識

資産の棚卸しを書き出して、自分の使える資産をじっくり眺めてみましょう。

資産の活用をするときに、大切なのは、それをどこで、どこの収益分野を構築するために活用するのか、活用する場所を考えるのが大切です。

例えば、実家の母が顔が広くて、人脈をたくさんもっているとします。会社員の職業をしているとき、この「実家の母の人脈」という資産は活用する機会が少ないです。

しかし、自分が自営業・ビジネスオーナーとして仕事をしてみたいと思ったら、「実家の母の人脈」を活用して、プレリサーチをすることも可能です。

自分がやってみたい仕事をすでに取り組んでいる人に、開業の方法などを教えていただくこともできなくはないのです。

また、不動産賃貸経営をしてみたい、しかし、会社員をしていて、まったく周りに大家をしている人など聞いたことがないという場合でも、「実家の母の人脈」という資産をまずは活用してみるのも手です。

家族・兄弟・親戚・そのまた友人、身内つながりの人脈は、自分が持っている最大の社会的資産として、活用することができます。

しかし、いままで活用できていなかった、活用する必要がなかったのは、会社員という属性枠の中だけで生きていこうと思っていたからです。枠を飛び出し、新しい収入を得ようとするときには、使える資産は思いっきり活用して、使うことをお勧めします。

「不動産」と「人間の担保価値」とは

資産の中で、身近な不動産の担保価値について説明します。

私は元々は、不動産について詳しいわけではなかったのですが、担保価値の存在に気付いてから、資産づくりという意義に目覚めました。

資産価値について、簡単な概念を解説します。概念であるので、詳細な数値よりも、物事の仕組み、世の中の仕組みはこうなっているのだという点に着目してください。

自宅を購入するときの例で考えてみます。

4000万円ぐらいで住宅ローンを組んで自宅を購入する場合です。

20坪の土地付きの3LDK65平米の築5年の一戸建てと、3LDKの区分マンション70平米のマンション、どちらが資産価値としていいか?を考えてみます。

区分マンションは、区画された専有部と共有部を共同で使う権利と、マンション全体の比率配分された共有の土地の権利を購入することになります。

つまり、4000万円で購入するのですが、土地〇〇〇〇円+専有部〇〇〇〇円に分かれています。

同じように、一戸建てを購入した場合も、土地と建物の権利を購入することになり、4000万円で購入しても、内訳として、土地〇〇〇〇円、建物〇〇〇〇円に分かれます。これは固定資産税の評価を見ているときに理解しました。

土地の価値は減価しません。一方で、建物は、一般的には時間の経過等によってその価値が減り、減価償却資産として国税庁が定めているとおり、建物の耐用年数は建物の構造によって定められていて、木造は22年です。

従って、木造の一戸建てを購入して、土地が2000万円、建物が2000万円だとしたら、23年後の価値は、土地が2000万円、建物は0円になります。

区分マンションの場合には、構造がコンクリート造であれば、耐用年数は47年。土地が500万円、専有部が3500万円だった場合、23年後の価値は、土地の500万円+3500万円が22年間で減価した金額になり、48年後には0円になります。

減価償却については、詳しい計算方法や細かい決まりがありますが、ここで理解してほしいのは、買ったものの価値が下がるものと下がらないものがあるということです。

価値が下がらないのであれば、再度、資産として活用できますが、価値が下がるのであれば、どのように下がるのか、いつのタイミングだったら資産価値はいくらなのかを把握しておく必要があります。

これが、資産づくりの一番の大きな概念です。

次に、人の担保価値について。人にはお値段がついています。

人の価値は無限であり、それぞれの人がそれぞれに良いところがある、と私は考えていますが、一方で、お金を貸す、保証をする、という点になると、シビアに数字評価をしなければなりません。

生産年齢である15歳以上65歳未満の人は、社会における生産活動をしている年齢帯という定義がされています。従って、生命保険に加入するときも年齢が重要で、また万が一の死亡保障などがでるときにも年齢が大きくかかわってきます。

このように、人には値段がついている、その値段が担保価値であり、見えない資産を持っているのであるということを認識していただきたいのです。

大きな考え方の一つですが、担保価値は、年収と年齢で決まります。

年収500万円の40歳の人と年収2000万円の40歳の人とでは、当然ながら後者のほうが担保価値が高く、金融機関からお金を借りたいというときの評価が高くなります。

自分自身を「時価総額を換算」する

前の項目では、自分自身に見えない資産価値があることを解説しました。しかし金融機関や保険会社が数値的に評価する見えない価値以外にも本来はもっともっと見えない自分の資産価値をたくさん持っているのです。

まずは、時価換算する上で、プラス評価できる材料を探します。

例えば、「人づき合い力」。人づき合い力って数値化するのは難しいのですが、人づき合いが上手な人と下手な人がいます。

人づき合いが上手な人は、先天的に上手な人もいますが、いろいろと社会経験を経て努力したり、配慮したり、教えてもらって覚えたりすることで、人づき合い力を能力として高めている人もいます。

この人づき合い力は、数値化できないのですが、こういう能力が必要な場面では絶大な効果を発揮します。これを価値換算するのです。

また、仕事で培った能力を分解すると、他でも活用できる能力になります。

例えば、エクセルがすごく得意、パワーポイントがすごく得意、プレゼンテーションが得意、会議室の並べ方を作るのが得意、受付が得意、飲み会の場所確保が得意、飲み会のときの席決めが得意、カラオケが得意、お茶出しが得意、会議の裏方準備が得意、スタッフのとりまとめが得意、スタッフの気持ちを汲んでいくのが得意、若いスタッフの管理が得意、高齢のスタッフの管理が得意、とにかく分解してみると実はいろいろな得意能力があります。

気づいていないし、本人は得意だと思っていなくて、当たり前にやっているだけかもしれませんが、苦手な人からみたら、それはスキルなのです。自分の得意なスキルはプラス材料です。

他には、「経験」ですね。経験値は、その物事を長年やっていればやっているほど価値があがります。前の項目で、建物は減価償却すると書きましたが、常に目減りする資産です。

一方で、あなたに備わっている経験は、やればやるほど、価値がずっと向上する減らない資産、増え続ける資産価値なのです。

例えば、流通業界での経験、製薬業界での経験、広告業界での経験、医療業界での経験……。様々な業界での経験値はプラス材料です。ブラック企業にお勤めだった経験だったり、風俗業界にお勤めだった経験だって、立派な経験です。あなたの経験はすべて価値があります。

更に、熱中できる詳しいこともプラス材料です。できるだけオタク並みに詳しければ詳しいほどプラス材料です。

例えば、国内だけでマイルをどんどん貯める方法を誰よりも詳しく知っている国内マイラー。コンビニのアイスを全制覇しているというコンビニアイスオタク。アイドルオタク。ふわとろオムライスの美味しいお店を100店知っていて食べ歩いた人。携帯アプリのことならなんでも詳しい人。自撮りをものすごく簡単に上手にとれる方法を知っている人……。

オタク並みに詳しくなくても、知らない人から見たら、知っている、できる、詳しい、熱中するほど好き、というものはあなたの資産です。プラス材料です。

プラス材料を出し尽くしたらレイティングして、一覧表にまとめます。

評価はAが仕事になるぐらいできる、Bが周りの人の中では一番上手、Cが他よりも上手など、三段階ぐらいで分けてください。

想定年収も、もし仮に自分がいなくて誰かに任せたらいくらコストがかかるか、あるいは自分がいくらで収入が得られそうかなど、これが収入化したらいくらになりそうか、という想定年収を書き出してみます。

自分の能力の中でプラス材料を探す→材料を評価する→材料を年収化する

これで、自分の時価総額がさらに上がります。

目標設定のための人生時計

人生時計という考え方をご存知ですか?

人生が仮に80年だとして、その人生が24時間の中でいま何時にいるのだろうか、と考えるやり方です。

人生80年、これが24時間だとしたら、30歳の人は午前9時、40歳の人は正午、ちょうど折り返し地点、50歳の人は午後3時、60歳の人は夕方6時。

日本では20歳をすぎると成人として扱います。30歳ぐらいともなれば社会にでて数年たち、立派な社会人です。でも人生時計の中では、まだまだ朝9時。

そして、40代、会社にいたら、定年まであと20年、けっこうベテランの立場になっていると思いますが、人生時計でいえば、お昼の12時。まだまだ人生の半分です。

つまり、自分ではもう大人だし、オジサンだし、オバサンだし、と新しいチャレンジをあきらめてしまう年齢になっていても、人生時計の中でいえば、まだまだ活躍できる時間がたくさんあるのです。

人生時計の午後後半、40〜60歳になるまでの間は、60歳以降のライフスタイルを充実させるためにも、十分な時間と十分な収入の柱を育てるための資産づくりができる絶好の時間なのです。

自分のすべてを使って稼げ

自分には資産がないと思い込んでいた人でも、見えない資産や、スキルの棚卸しをすることで、実はいろいろとやれることがあることに気づいたのではないか。

収入構造の違い、雇われ人(時間を使って稼ぐこと)、自営業(スキルを使って稼ぐこと)、ビジネスオーナー(組織を使って稼ぐこと)、投資家(お金を使って稼ぐこと)を意識して、自分のすべてを使って稼ぎ、ビジネスオーナーになれるチャンス、投資家になれるチャンスを狙うのです。

多くの人は、時間を使って稼ぐことを中心に生計をたてています。

スキルを使って稼いでいる人も、結局かなり時間を使って稼いでいることと同じです。

自分の代わりに働いてくれる収入を持つのであれば、組織を使って稼ぐことか、お金を使って稼ぐことの仕組みづくりを勉強し、上手になる必要があります。

そのためにも、まずは自分のすべてを使って稼ぐのです。

自分の能力をマネタイズ化する。自分の使える資産はすべて活用する。親・兄弟・親戚・友達みんなから協力してもらえる人間関係を良好に活用する。

紀村奈緒美 (きむら・なおみ)
千葉県出身、東京都中央区在住。1児のシングルマザー。県立千葉東高校卒、明治大学農学部農芸学科卒。大学卒業後は大手食品会社の研究所に入社するも1年半で結婚。専業主婦に耐えられず、IT分野で起業。妊婦・子育てのコミュニティ「プレママ」を創設。仕事に注力する中で専業主婦であることを求める夫との間に溝が生じ、離婚。3歳の子供を引き取り、シングルマザーとなり会社経営に尽力するもITバブル崩壊の影響で事業を譲渡し再就職する。一部上場IT企業、外資系広告代理店、外資系製薬会社、国内大手製薬会社と渡り歩く中で、営業能力、管理能力、英語力を身につけていく。40歳直前から大家業・オーナー業の魅力を学び実践。6年間で総資産8億円・家賃および給与収入で年収9,000万円を達成する。