書店に行けば不動産投資の新刊書籍が数多く並ぶ。やれサラリーマンで1億稼ぐとかアパート1棟所有が理想とか、さまざまである。

ただ、どれも不動産投資物件の買い方を指南する本ばかりで、しかも著者の大半は不動産会社のオーナーばかりであることは覚えておいた方がいい。買うとこんなにメリットがあるという話が多く、デメリットの話はあまり解説されていない。つまり、不動産会社のオーナーが本を出すことは自分らが取り扱う不動産投資物件を買わせるというポジショントークがある。

マイホーム投資
(画像=Webサイトより)

ポジショントークにご用心

ポジショントークの例としてはこんな感じだ。戸建てを買おうかマンションを買おうか迷っている人がいるとしょう。そこで、マンションのモデルルームを見学に行くと、マンションの販売会社はマンションのメリットしか語らない。

防犯性は戸建てよりいい
鍵1本で外出できる
耐震性に優れている
利便性が高い場所にある
など、など…

また、戸建てのモデルハウスに行けば戸建てのメリットしか話をしない。

マンションより広い家になる
管理費とか修繕積立金・駐車場代や駐輪場代がかからない
土地がある
など、など

このように、その置かれた立ち位置によってそこにいる人たちはそのポジンショントークになってしまう。これは、仕方のない話だ。 マンションや戸建てを売ってナンボの世界である以上、買ってもらうためにはそういった話になる。

このように考えると、不動産投資も同様に投資物件を買ってもらいたいがためのポジショントークになる。儲からないと売り手がわかっていても、何らかの小さいメリットを見つけてそれを大きく話すわけだ。毎月3万円の持ち出しでも、30年後には家賃が年金替わりになりますと…しかもサブリースの家賃保証だから問題ありません、なんて感じだ。

最近では、シェアハウスの「かぼちゃの馬車」で問題になっているサブリース。ローンで買った不動産投資物件は家賃が返済の原資になるわけだが、その家賃はサブリースしているから安心とは言えない時代だ。

区分マンションを販売している不動産投資会社の一部には、今後、こうしたケースが増える可能性が高い。「かぼちゃの馬車」は新規の物件を販売することでサブリースの原資を稼いでいたから、ひとたび新規物件が売れなくなるとサブリース賃料が支払えなくなる。

その結果、多くのオーナーが賃料未払いとなって大きな問題となった。これは区分マンションを販売している業者でも同様のことが言える。ここ最近の区分マンションを販売している業者は、物件の仕入れができないと厳しくなる。

中古のマンションを市況値で買い、概ね2割強増しで第三者に転売する。いわゆる中間省略の形態で不動産取引を行い、自社では所有権を持たずに転売するスキームだから手元資金が過少でもビジネスができる仕掛けだ。

例えば、市況値が1500万円の区分マンションを手付金30万円で業者が買う契約をしたとしよう。その後、自社が営業マンを使い、この買ったマンションを2割増しの1800万円で第三者に転売するのである。

結果、手付金30万円だけ自社で準備し、仕入れ残金の1470万円は転売先の第三者に支払わせ、儲けの2割は簡単に自社に入るという流れである。その際には第三者との間にサブリース契約が取り交わされる場合が多く、概ね3年から5年間はこのサブリース契約が付いて回る。

そんな中味であるから、「かぼちゃの馬車」同様に、サブリース契約がこけると区分マンションのオーナーもローン返済の原資が得られなくなり、最悪は返済の滞りや自己破産になりかねない。

そうなると、出口が非常に取りにくい不動産投資となってしまい、やる意味合いがないと言っていいだろう。こうした側面から、同じ投資をするならばマイホームの投資をした方がよほどいいと感じる。

不動産投資の前にマイホーム投資を

マイホームであれば、超低金利の住宅ローンも使えるし、税金の優遇措置も多い。したがって、自分で居住することを踏まえて、マイホームに投資した方が多くのメリットがある。

独身者で自分の住まいは賃貸住まいながら、区分マンションを買って5,000万円以上借金している人がいるが、まずは自宅を購入しておいた方が得策だろう。昔はマイホームを手に入れて、定年を迎えるまで一つの会社を勤め上げるというのがサラリーマンのスタンダードモデルであった。

年功序列と終身雇用がセットになっていて、退職金をたくさんもらってローンを完済して、老後は年金で悠々と暮らすというのが理想とされていた。ところが、時代は様変わりし、定年まで一つの会社にいる人がどれだけいるでしょうか。

働く人の意識も変わったし、会社も中高年を雇用するのは負担になっており、副業は当たり前になるだろうし、定年という概念すらも崩れようとしている。これからの時代、マイホームは定住ではなく住み替えていくものであり、マイホーム取得はゴールではなく資産運用の観点が必須な時代になっている。

マイホーム投資で老後の準備を

自宅は所有と賃貸のどちらの方がいいかという論争は永遠のテーマでもある。自宅を購入するのも、他人が建てた賃貸マンションやアパートに住むのも、土地代と建築費は同じコストがかかっているということは理解できるだろう。

しかしながら、双方の違いはどこにあるかというと、所有に対する税制の優遇と、ここ近年の住宅ローン低金利にあることを気づくべきだ。住宅建設が増えれば関係業種に大きな経済波及効果をもたらすので、国は景気対策として必ず住宅取得を推進し、そのための優遇税制政策を取る。

例えば、住宅ローンの控除や固定資産税の優遇など、持家の所有にはさまざまな税制の優遇措置が継続的になされているが、賃貸住まいには何ら優遇はない。加えて、住宅ローンの金利はマイナス金利の影響もあり、借金の中でも金利はダントツで低いのはご承知の通りだ。

このため、所有でも賃貸であっても同じ物件に住むという前提に立った場合、賃貸ではなく所有を選んだ方がトクだということが言えるだろう。なかなかこの議論が終わらないのは、多くのポジショントークが氾濫しているからだ。持ち家を買ってもらわないと困る不動産会社にとっては、賃貸住まいのデメリットを述べて所有に視点を向かわせるし、賃貸住宅を建てる住宅メーカーや賃貸管理の会社は所有のデメリットを並べる。

そこで、苦肉の策で所有か賃貸かを比較する場合には、立地条件や面積などが違うものを前提にしてそれぞれに有利なポジショントークに仕立てている。

特に、老後も賃貸に住み続けるとなれば、家賃を支払い続けていけるかがポイントになり、年金だけで生活するとなった場合には家賃は大きな負担となる。賃貸で一生暮らすとなると、家賃を永久的に払うので住居費がいつまでたっても安くならないので、よほどの貯蓄がない限り、老後の家計が赤字になるリスクが高いと言えるだろう。

こう考えると、若い世代のうちにマイホームを買っておく方が得策だ。しかも、転売が利く不動産を買うことで、そのまま住み続けるのもよし、売却してコンパクトな住居を探すもよし、老人ホームに入るのもよしで、選択肢がいくつか出てくるものだ。こうした観点から、まずはマイホームに投資をしておいて老後の準備をしておくべきだろう。

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寺岡 孝(てらおか たかし) Takashi Teraoka
1960年東京都生まれ。アネシスプランニング株式会社代表取締役。住宅コンサルタント。住宅セカンドオピニオン。 大手ハウスメーカーに勤務した後、2006年にアネシスプランニング株式会社を設立。住宅の建築や不動産購入・売却などのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行っている。これまでに2,000件以上の相談を受けている。 東洋経済オンライン、ZUU online、スマイスター、楽待などのWEBメディアに住宅、ローンや不動産投資についてのコラム等を多数寄稿。著書に『不動産投資は出口戦略が9割』(クロスメディア・パブリッシング)がある。