渡航ビザ不要で渡航できる国の数を比較した「パスポート・ランキング」の2018年版が発表され、ドイツに代わって日本とシンガポールが1位に輝いた。日本は2017年の5位から、シンガポールは4位から順位を上げた。

ランキングは移住・市民権分野を専門とする国際コンサルティング企業ヘンリー・アンド・パートナーズが世界199カ国・地域のパスポートと219カ所の渡航先を対象に、IATA(国際航空運送協会)の旅行情報データに基づいて作成したもの。世界各国・地域への渡航の際、国籍によって課されるビザ制限の範囲を指標化している。

上位の顔ぶれに変化はないが、韓国も2017年の7位からトップ3入りを果たしたほか、マレーシア、香港、台湾も順位を上げるなどアジアのパスポートの自由度が拡大している。対照的にドイツ、ベルギー、ニュージーランドは順位を下げた。

トップ10の22カ国・地域をみてみよう。

渡航ビザ不要で渡航できる自由度が高い22カ国・地域

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(画像=its_al_dente/Shutterstock.com)

10位(2017年順位12位) ラトビア ビザ不要で渡航可能な国・地域数170

9位(10位) ハンガリー 171

8位(8位) アイスランド 172

7位(10位) マルタ 173
7位(9位) チェコ共和国 173
7位(5位) ニュージーランド 173

6位(4位) ベルギー 174
6位(7位) オーストラリア 174
6位(6位) ギリシャ 174

5位(6位) カナダ 176
5位(5位) スイス 176
5位(5位) アイルランド 176
5位(5位) 米国 176

4位(6位) ポルトガル 177
4位(4位) オーストリア 177
4位(4位) ノルウェー 177
4位(4位) 英国 177
4位(4位) ルクセンブルク 177
4位(4位) オランダ 177

3位(4位) フランス 178
3位(3位) フィンランド 178
3位(3位) イタリア 178
3位(7位) 韓国 178
3位(2位) スウェーデン 178

2位(1位) ドイツ 179

1位(5位) 日本 180
1位(4位) シンガポール 180

「経済的に豊かなアジアの発展国」として認識された日本、シンガポール

首位は日本とシンガポール。日本はビザ不要で入国できる渡航先が2017年より8つ、シンガポールは7つ増えた。韓国も8つ増えて3位となった。ウズベキスタンが2018年2月に日本とシンガポールの国籍保有者に対して渡航ビザ制限を解除したほか、シンガポールに関しては2017年、パラグアイへの渡航ビザも免除になったことなどが、順位を押し上げた。

シンガポール国立大学の上級研究員パラッグ・カーンナ氏は、「(両国の)国民がビジネスと投資活動に関心のある、平和的な商業大国とみなされている」と分析している。今後も両国に対して、渡航ビザの規制を解除する国・地域が増える可能性が高い。

ポルトガル、チェコ共和国、マルタ、ハンガリー、ラトビア、オーストラリアも順位を上げている。

ウクライナ、ジョージアが大きくランクアップ

一方4年連続で1位を維持していたドイツは2位に降格。ベルギーやニュージーランドも順位を下げた。

米国は5位を維持したものの、トルコや中央アフリカ等が米国籍保有者によるビザの発給を停止したため、ビザ不要で渡航可能な国・地域の数が4つ減った。しかしトルコに関しては2017年10月に一旦発給を停止したものの、12月には完全再開を発表したため、このまま何事もなければ米国の入国ビザ不要で渡航できる国・地域は、少なくとも1つ増えることになる(ロイター2017年12月28日付記事)。

カーンナ氏は米国の移民規制強化について、「必ずしも移民の数を減らすものではない」とコメントしている。

トップ10以外で順位を大きく上げたのは16ランクアップのウクライナ(42位)、14ランクアップのジョージア(54位)。コスタリア(21位)も10ランクアップ。アラブ首長国連邦(27位)は過去10年で合計34も順位を上げており、中国やアイルランドへのビザなしの渡航が可能になった2017年だけでも、11ランクアップしている。(CNN2018年3月6日付記事 )。

ロシア(45位)も3ランクアップ、モナコ(15位)やチリ(17位)は各1ランクアップ、イスラエル(22位)、メキシコ(24位)という結果だった。

マレーシア、香港、台湾がトップ30入り アフガニスタン、イラクなどが最下位に

アジア圏からは他にマレーシア(11位)や香港(16位)、台湾(28位)がトップ30に。マレーシアは2ランクアップ、香港は6ランクアップ、台湾は3ランクアップとなった。

上位の欧州圏は順位に変動なし、あるいは後退が目立つ。ブリュッセル自由大学の調査機関Institute for European Studies フローリアン・トローネ教授は、「2018年、欧州の自由化はさらに政治色が強まる」と予測している。

ランキング最下位となったのはアフガニスタン、イラク、シリア、パキスタン、ソマリア、イエメン、ネパール、リビア、エリトリア、レバノンなど、治安や政治情勢の不安定な国・地域ばかりだ。アフガニスタンのパスポート所有者がビザ不要で入国を許されているのは、わずか24カ国・地域。日本やシンガポールの7分の1以下である。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)