山形県鶴岡市の海辺に建つ「加茂水族館」は、子どもから大人まで多くの人を虜にする今話題のスポットです。水族館としてのスケールは小さいものの、他に類を見ない独自の展示とイベントでファンを集めています。

そんな加茂水族館で一番の人気者は、海水中を気持ち良さそうに浮遊する「クラゲ」です。不思議な魅力で人々を引き寄せる加茂水族館の歩みと、一度は見ておきたい注目のイベントを紹介します。

成功まで辛酸をなめてきた加茂水族館

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(写真=PIXTA)

水族館の老舗ともいえる加茂水族館が開館したのは1930年。人々の生活が豊かになりつつある時代のことでした。当時、民間の水族館として開館しましたが、1955年に鶴岡市が買い取り、1964年には山と海に囲まれた現在の場所へ移転します。

移転時、加茂水族館の入館者数は毎年20万人で安定していましたが、経営が市から第三セクターへ移ると経営が悪化し、とうとう経営していた第三セクターが倒産をしてしまいました。

2002年、経営は再び鶴岡市へ戻りますが入館者数は振るわず、10万人を下回るようになってしまいます。水族館の活気を取り戻そうと、当時の館長は古代魚やナマズなどの変わった魚を展示に加えますが効果はなく、魚を購入するたびに負債が増えていくだけでした。

脇役を主役に!クラゲを重点にリニューアル

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(写真=Nishizaki T/Shutterstock.com)

そんな何をしても思うようにならない水族館経営のなかで、一筋の光となったのが「クラゲ」です。サンゴ礁の水槽内で偶然見つけたクラゲに目をつけ、地元の海からクラゲを採集し展示をはじめると、加茂水族館に訪れる人は徐々に増え、2012年に「クラゲの展示数世界一」でギネスブックにも認定されました。そのとき、入館者数は27万人に達します。

ここで、老朽化が進んでいた加茂水族館は新水族館の建設を決定。原資となったのは、住民も参加できる公募債「クラゲドリーム債」でした。市と市民が一体となって、加茂水族館は「クラゲドリーム館」として2014年、念願のリニューアルオープンを果たします。

これまでの水族館の隣に建設された新水族館は年々入館者数を伸ばし、新館オープン年は71万人、翌年2015年には61万人と順調に推移。2017年6月には、累計入館者数が200万人に達しました。

加茂水族館の見どころ

加茂水族館がなぜここまで人気となっているのか、その秘密はクラゲの美しさだけではなく、その展示方法や独自イベントにあります。ここからは、加茂水族館の見どころを紹介します。

●クラゲドリームシアター

「クラネタリウム」と名付けられたクラゲの展示スペースを進むと、直径5メートルの巨大水槽があらわれます。これがこの水族館1番の見どころ「クラゲドリームシアター」です。水槽の中では、約2,000匹の水クラゲが優雅に浮遊しています。

薄暗い通路の中でひときわ輝く水槽とミズクラゲ。クラゲドリームシアターの前には椅子も用意されており、この美しい光景をのんびりと心ゆくまで楽しむことができます。

クラネタリウムにはクラゲの解説コーナーもあり、ショーの時間には貴重なクラゲの給餌も解説付きで見られます。

●音楽イベント

上記のクラゲドリームシアターでは、毎月音楽イベントを開催。ゆらめくクラゲと音楽、そして「夜の水族館」という特別感もあり、大人の癒しタイムを演出しています。

●宿泊体験

夏には水族館の屋外でテント泊、冬には水族館内で宿泊体験が行われています。水族館内の宿泊体験では、魚やクラゲの水槽前で朝まで過ごせるだけではなく、水族館のバックヤードも見られると大人気。夏のテント泊では、近郊の花火大会を見ることもできます。

●クラゲの学習

加茂水族館では、クラゲと水槽、海水を貸し出し、クラゲの理解を深める学習の手伝いもしています。個人が借りることはできませんが、幼稚園や学校などは1週間程度、クラゲを間近で観察できます。

加茂水族館の独自路線に今後も注目を

加茂水族館が再興したのは、単なる偶然ではありません。市と市民が力を合わせて新館をオープンしたこと、入館者がいつ来ても楽しめるよう、水族館職員が一体となり魅力的なイベントを精力的に行ってきたことが、「入館者数」という結果にあらわれたのです。

入館者数が減少し続けても諦めずに取り組んできた加茂水族館。これからも、他に類を見ない独自路線でコアなファンを獲得し続けていくのか、その進化に注目していきましょう。(提供:JIMOTOZINE)