(本記事は、吉田裕子氏の著書『会社では教えてもらえない 人を動かせる人の文章のキホン』すばる舎、2018年3月26日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

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会社では教えてもらえない 人を動かせる人の文章のキホン
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

この3つの要素が入っているか

依頼や指示、報連相、企画書、広告など、ビジネスには多くの文章があります。いずれの文章にも、共通する「文章力」が求められています。それは次のような力です。

あなたの文章は、この3つの力を備えられているでしょうか?

ひとつ目は情報を的確に伝える「伝達力」。

ビジネスでは、曖昧な部分があったり、相手の想像力に任せるような部分があったりする文章は避けなければなりません。こちらの意図通りに、読み手に伝えるための文章が求められているのです。

ふたつ目は、根拠があって納得できる、あるいは、心を動かされるという「説得力」。

仕事ではとにかく相手に「動いて」もらわなければなりません。ささいな業務のお願いでも、頼みづらい重い仕事でも、自分の文章で相手の心を動かし、納得してもらい、実際に行動に移してもらう必要があります。ダイレクトメールなどの広告では、いっそうこの力が必要です。

最後は、相手や状況に合わせて、文体や伝え方を工夫できる「調整力」。

ビジネスの文章は、目上の方に読んでもらうこともあれば、それぞれ特性の違う不特定多数の人に読まれることもあります。読み手にどこまで寄り添って、受け取りやすい文章を書くことができるかが求められています。

これら3つの力が組み合わさって初めて、あなたの考えは、正確かつ効果的に相手に伝わり、相手の行動を促すものになります。

ビジネスでは、企画書の1文や、メール1通の文章で、評価や成功の可否が変わってしまうことも大いにありえます。

上記の3つが揃った文章を書くには、文法・表現・構成が重要です。しかし、それらは、学校でも会社でも教えてもらえません。ほとんどの人が、訓練をせずに文章を書いています。

抵抗なく目を通せる文字量

実用的な文章が上手くなる一番のコツは、「読み手の気持ちになって考える」ことです。素朴な原則ですが、結局これができていない人が多いのです。

あなたは文章を読むとき、どのように読んでいますか?

私の教えている受験生たちは、シャーペンを片手に、接続語に印をつけたり、重要な部分に線を引いたりしながら読んでいます。あなたは普段そうしていますか?

実際、大人で、そのように手間をかけて文章を読んでいる人はあまりいないのではないでしょうか。

ビジネスの現場では、メールでも何でも、多くの文章は読み流されています。ぱっと見で重要性を判断し、大事そうな部分だけを読んでいる人が多いのではないでしょうか。スマートフォンでメールなどを読む機会も多い現代、軽く流し読みしても概要が伝わる、という文章の書き方がますます求められています。

具体的に言えば、件名や見出しを工夫することや、文章の冒頭に結論を持ってくることなどが欠かせないのです。

マイクロソフト社が2015年に発表した研究によると、現代人の集中力は、なんと8秒程度しか持続しないのだそうです(2000年の実験結果では秒だったそうですから、情報の氾濫するインターネット社会で、気が散りやすくなっていることがわかります)。

多くの人にとって、8秒で読めるのはせいぜい150字。ですから、ひとつの段落は最大でも150字以内に収めると良いでしょう。これはちょうど、ツイッターの最大文字数(140字)程度です。

ただし、150字程度の段落が、切れ目のないひとつの文になっていると、理解しにくく、読むのに抵抗感が生まれます。

よほど文章が巧みな人以外は、1文は50字程度が限界だと考えると良いでしょう。50字というのは、ワードの初期設定の状態で、A4縦の用紙に横書きすると、1行と少しに当たります。

文は50字程度、段落は150字程度。抵抗なく読めて、一読して意味がわかる。

これが現代のビジネスで求められている文章です。

吉田裕子(よしだ・ゆうこ)
国語講師。塾や予備校を利用せずに東京大学文科III類に現役合格。教養学部超域文化科学科。NHKEテレの「Rの法則」「テストの花道 ニューベンゼミ」に講師として出演。10万部を超えるベストセラーになった『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)の他、『大人の言葉えらびが使える順でかんたんに身につく本』(かんき出版)、『大人の文章術』(枻出版社)、『大人の常識として身に付けておきたい語彙力上達BOOK』(総合法令出版)など多数。産業能率大学総合研究所の人気通信講座『文章力を磨く』『これだけは知っておきたい正しい日本語』のテキストも執筆。