近年、中小企業の事業承継の選択肢として、事業譲渡や会社買収などのM&Aが広く認知されるようになってきました。ただ、M&Aには税務や法律面の知識が必要とされるため、二の足を踏んでしまう経営者も多いのではないでしょうか。今回は、買収する側の企業から見たM&Aの4つのプロセスについて考えてみましょう。

M&Aアドバイザリーの起用


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(画像=PIXTA)

法務・財務上の専門知識が要求されるM&Aを円滑に進めるためには、専門家であるアドバイザーの協力が欠かせません。

近年、M&Aに対する認知や需要が高まる中で、アドバイザーには専門事業者のみならず、地方銀行・メガバンク、証券会社といった金融機関、会計事務所などの異業種からの参入も増えています。それぞれの事業者によって、サービス内容や専門分野の違いなどがあるので、自社のケースに向いたアドバイザーであるかを慎重に見極める必要があります。

買い手企業から見たM&Aのプロセス

では、具体的に買い手企業から見たM&Aのプロセスを見ていきましょう。買い手企業は、主に次の5つのプロセスごとに、M&Aアドバイザーや法務の専門家とともに手続きを進めます。

1.現状の経営課題・事業戦略の分析

まず、買い手企業は自らの現状の経営課題を整理・分析します。その上で、企業を成長に導くためのM&A戦略立案を開始し、実行プロセスを計画策定します。この段階で、M&Aの買収手続きをサポートする専門家のM&Aアドバイザーを起用した場合、M&Aアドバイザーは経営者の希望をもとに買収対象企業をリスト化していきます。

2.売却・買収手続きの実行

M&A対象企業の概要をまとめた匿名の「ノンネームシート」をもとに、買収対象企業を選定します。関心がある企業が現れた場合は、秘密保持契約を締結した上で詳細を開示します。さらに大まかなスケジュールを決定し、実際の売却・買収手続きの実行に移ります。

また、ここではM&Aアドバイザーによって、さまざまなM&Aの種類から最適なものを選定したストラクチャー(手法、手順)の設計が行われます。

3.デューデリジェンスの実施

買収対象となる企業に潜在するリスクを調査する「デューデリジェンス」を実施します。買収後に、相手先企業が莫大な負債や訴訟などを抱えていることが発覚すると、買収企業にとって大損失となるため、デューデリジェンスは重要なプロセスです。

また、M&Aアドバイザーは、第三者の視点から対象企業の価値を算定し、バリュエーション(企業価値評価)を行います。買収金額に見合うキャッシュフローやシナジー(相乗効果)が期待できるかどうか、この段階で精査していきます。

4.契約交渉・取引実行(クロージング)

デューデリジェンスの完了を受けて、いよいよM&A案件のクロージングに移ります。ここでは法務の専門家とともに、売手側・買手側それぞれが最終契約の書面を作成します。最終契約で規定した諸条件への対応、実行後の財務諸表作成、譲渡価格の決定などを行います。

M&Aは買収して完了ではない

M&Aは、企業を買収・売却して完了というわけではありません。特に、売却された企業の役員・従業員は処遇や雇用条件が変わることが多いため、時には双方の企業関係者の間で利害がぶつかることもあります。

M&Aによって企業成長を図るには、経営、業務、意識の3つの意味合いで統合することが必要です。ときには、この段階からM&Aが成立した後のマネジメントを担当するPMI(Post Merger Integration)専門のコンサルティングファームからの支援を受ける企業も少なくありません。

M&Aには多くのプロセスが存在する

今回は、買収する側の買手企業から見たM&Aの手続きについて見てきました。M&Aの完了までには多くのプロセスが存在します。M&Aの交渉には長い時間を要することもあるため、M&Aを検討している場合は早めの行動が大切です。そのため、金融機関を始めとした専門家の意見を聞き、不備なく進めるのが肝心だといえるでしょう。(提供:企業オーナーonline


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