1月23日に2万4124円の高値を付けた日経平均や、26日に2万6616ドルの過去最高値を付けたNYダウは、円高や米長期金利の上昇をきっかけに2月に急落した。その後、NYダウは2月8日の安値2万3860ドルから26日の高値2万5709ドルまで反発し、日経平均も14日の安値2万1154円から27日の高値2万2389円まで反発した。しかし、3月に入ると米中貿易戦争に対する懸念から再び株安が進み、トランプ大統領が22日に、中国が知的財産権を侵害しているとして最大600億ドルの中国からの輸入製品に関税を課す制裁措置を正式に表明すると、翌23日の日経平均は2万0617円の年初来安値を付け、同日のNYダウも2万3533ドルの年初来安値を付けた。また、円相場は26日に1ドル=104円56銭の年初来高値を付けた。ただし、その後も米中貿易戦争に関するニュースは続いたが、日経平均やNYダウは反発し、円相場は反落した。米中貿易戦争に対する懸念を背景とした日米株安のボトムは3月23日で、円高のピークは26日だった可能性が高い。

米中貿易戦争は回避する可能性が高い

日本株,見通し
(画像=PIXTA)

4月3日にUSTR(米通商代表部)が中国からの輸入製品約1300品目に25%の関税を課すという原案を公表すると、翌4日に中国は報復関税を準備する米国産の大豆、牛肉、自動車、飛行機など計106品目を発表した。さらに、翌5日にはトランプ大統領がUSTRに追加関税を検討するよう指示した。

その後、10日に中国の習近平国家主席が講演で、国内市場を外資にさらに開放する方針を示し、自動車などの関税を下げて輸入を拡大する方針も示した。また、米国などが問題視する知的財産保護を強化する考えも強調した。すると、トランプ大統領はツイッターに「関税や自動車障壁、知的財産に関する習氏の寛大な言葉にとても感謝している。我々はともに大きな進展を成し遂げるだろう!」と投稿した。

さらに、12日にトランプ大統領は農業州の共和党知事及び議員との会合で、中国政府が米国への一段の市場開放に前向きなら、米国は中国との貿易戦争を回避できるかもしれないと述べた。米中双方の経済のみならず世界経済全体にも悪影響を及ぼしかねない米中貿易戦争は、米中による今後の交渉で最終的には回避されると見て良いだろう。

目先の東京市場では海外投資家の買い戻しが続く可能性も

ところで、東京証券取引所と大阪取引所が発表した4月第2週の投資部門別株式売買動向によると、海外投資家は現物・先物合計で日本株を2週連続で買い越した。海外投資家は1月第2週から3月第4週まで13週連続で売り越し、売越金額は累計で約8兆6500億円に達したが、4月第1週と第2週で約1兆円買い戻したに過ぎず、買い戻し余地は大きい。目先の東京市場では海外投資家の買い戻しが続く可能性もあろう。

日本企業の決算発表と「日米のハイテク株」の値動きに注意

東京市場では4月末から企業の決算発表が本格化した。大和証券エクイティ調査部では、1ドル=110円、1ユーロ=135円を前提に、金融を除く主要上場企業200社の2018年度の経常利益を8.6%増と予想している。

ただし、3月調査の日銀短観によると大企業・製造業の2018年度の想定為替レートは1 ドル=109円66銭で、経常利益計画は3.2%減だったことから、実際の決算発表では輸出企業を中心に1ドル=100~105円を前提に減益予想を示す企業が目立ち、株式市場で嫌気される可能性に注意が必要だ。

また、今後は日米のハイテク株の値動きにも注意が必要だ。米国市場ではフェイスブックによる個人情報の不正流用問題に関連してインターネット関連企業に対する規制強化の懸念が続いており、トランプ大統領はアマゾン・ドット・コムが不当に安い料金で商品を配達させていると繰り返し主張している。また、4月19日にはIMFのラガルド専務理事が、アマゾンやフェイスブックを念頭に「ごく少数の企業の手に市場が集中することは中長期的には(世界経済に)有益ではない」と述べ、IT企業への政治的な圧力が世界的にも高まる可能性が示唆された。さらに、アップルについては最新スマートフォン「iPhoneX(テン)」の販売が低迷しているとの観測が広がっている。アップルは5月1日に2018年1〜3月期の決算及び業績見通しを発表するが、既に半導体受託生産の世界最大手であるTSMC(台湾積体電路製造)は4月19日に発表した2018年12月期の業績予想で、iPhone向け半導体の需要低迷を主因に売上高予想を下方修正した。また、日本でもアップルやアジアのスマートフォンメーカーの販売不振を背景に、電子部品大手6社(村田製作所 <6981> 、TDK <6762> 、京セラ <6971> 、日本電産 <6594> 、アルプス電気 <6770> 、日東電工 <6988> )の2018年1~3月期の受注額の伸びが鈍化したと伝えられている。

上記を加味すると、目先の東京市場ではハイテク株に対する買いは手控えられ、原油高や世界的な金利上昇を背景に資源関連株や銀行株などの非ハイテク株が買われる可能性もあるとみている。

野間口毅(のまぐち・つよし)
1988年東京大学大学院工学系研究科修了後、大和証券に入社。アナリスト業務を5年間経験した後、株式ストラテジストに転向。大和総研などを経て現在は大和証券投資情報部に所属。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定証券アナリスト。