「部下がいつまでたっても仕事ができるようにならない」「チームが思うように動いてくれない」こうした悩みを抱えているリーダーもいるのではないでしょうか。しかし、部下が育たないのも、チームが機能しないのも、上司である自分のせいかもしれません。ここではソフトバンクグループを一代で築き上げた孫正義氏と、プロ経営者として日本ゼネラル・エレクトリックなどで活躍してきた藤森義明氏の言葉を引用しつつ、上司としての責任とは何かを考えます。
「すべての責任はリーダーにある」という覚悟
責任転嫁をしてはならない。全ての責任は己の中にある。その様に覚悟を決めるだけで物事は前進する。
孫正義
孫氏は「全ての責任は己の中にある」と言い切ります。これはつまり会社の業績も、部下が育たないことも、チームが思うように機能しないことも、全てリーダーである自分の責任だということです。この覚悟ができているかどうかでリーダー自身の行動も変わり、それが部下やチームの行動を変えて、最終的に物事を前進させてくれます。
例えば入社5年目にもなるのに、いまだに上司に指示を仰ぎ、自分で仕事の方針や進め方を決められない部下がいたとします。「全ての責任は己の中にある」と考えられないリーダーなら、「お前はいつまでたっても半人前だな!いい加減に成長してくれよ」などと言ってしまうでしょう。
しかし、上司が部下の仕事のやり方に逐一口を出したり、言わなくてもわかるだろうと考えて部下の目標を曖昧なままにしていたりするかもしれません。結果ではなくプロセスに口を挟むと、部下は自分なりの仕事のやり方を考えるのがバカらしくなって指示を仰ぐようになりますし、目標が曖昧だと何をどうすればいいか迷ってしまうので、上司に指示を仰いで動くほかなくなります。「全ての責任は己の中にある」と考えられるリーダーなら自分のこうした行動を反省し、方向を修正できます。その結果部下も育ち、チームも機能するというわけです。
迅速な決断がチームを変える
決断する、方向性を決めるのはリーダーだから、のんびりはしていられないんです。取捨選択して結論をどんどん出し、自分で責任を持つと伝える。これが、いいチームの動きにつながるんです。
藤森義明
日本ゼネラル・エレクトリックの取締役兼社長兼CEO、東京電力ホールディングス社外取締役、リクシルグループ相談役、武田薬品工業社外取締役……多くのトップ企業のエグゼクティブを務めてきた藤森氏。そんな藤森氏の言葉からは、「迅速な決断こそがリーダーの仕事であり、それこそがチームを変えていく」という考え方が見てとれます。
チームが機能しなくなるのには色々な理由がありますが、そのうちの一つは「仕事への迷い」です。例えば10年以上取引を続けているA社の製品と、取引実績はないけれどもコスト面で優れているB社の製品、どちらを仕入れるかで迷ったとき、取引先との関係を大切にするべきか、もしくは利益を最優先に考えるべきかの判断は、一営業マンにはできません。ここで上司が会社として、もしくは営業チームとして「何が正しいか」という結論を迅速に出し、かつ結果の責任は自分が持つと確約していれば、部下たちは迷いなくリーダーの決断を実行に移せます。仕事に迷いがなくなれば、仕事に対する集中力も仕事のスピードも向上します。その結果、チームの動きが良くなるというわけです。
上司としての責任は「チームに関する全て」に及ぶ
上司としての責任は、部下の成長やチームのパフォーマンスなど、チームに関する全てに及びます。なぜならチームの方向性を決めるのはリーダーである上司であり、その決断から生まれた結果ならば上司が責任を取るべきだからです。「責任感を持って欲しいから」と部下に決断させるのは、上司としての責任放棄でしかありません。自分の責任範囲をしっかりと認識し、そのうえでどう動くべきかを考えるようにしましょう。(提供:マネジメントオンライン)
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