2018年4月11日に開催された社会保障に関する財政制度分科会で、財務省が厚生年金の支給開始年齢を現行の65歳から68歳に引き上げる提案をしたことが物議を醸している。年金の支給年齢は、いずれ70歳に引き上げられるともいわれており、いつまで制度を維持できるか分からない。公的な社会保障に頼れない自己防衛の時代、老後資金を増やすための資産運用手段として利用したいのが、iDeCo(イデコ)だ。
iDeCoの仕組みや概要
iDeCoは、個人型確定拠出年金と呼ばれるもので、掛け金を自分自身で運用しながら積み立て、原則60歳以降で受け取る仕組みのことだ。掛け金は毎月5,000円からで、1,000円単位で選ぶことができる。しかし、国民年金の被保険者種別やほかの企業年金の加入状況により掛金額の上限が異なるため、注意が必要だ。例えば、第1号被保険者と呼ばれる自営業者の場合は、月額6万8,000円、年額にして81万6,000円が上限となる。
会社員など第2号被保険者の場合、企業年金の有無などで条件が異なるが、最高で月額2万3,000円、年額だと27万6,000円だ。公務員は、月額1万2,000円、年額で14万4,000円が上限である。第3号被保険者(専業主婦など)は、月額2万3,000円、年額27万6,000円が上限になる。掛け金は、毎月定額のプランと、月ごとに金額を指定するプランがあり、金額は年1回変更することができる。
2018年1月より、年単位などでまとまった金額の拠出が可能になった。月ごとに指定するプランや年単位の拠出を選べば、ボーナス月にまとめて拠出することもできるだろう。iDeCoで積み立てた資金は、原則60歳以降に年金(分割受取)または一時金(一括受取)で受け取ることになる。60歳までは解約できないことになるが、障害給付金や死亡一時金、やむを得ない事情での脱退一時金としての支払いも、オプションとして用意されている。
iDeCoを開始するなら40代までに
iDeCoでの運用を考えている場合は、できるだけ早い時期に開始するのが賢明といえるだろう。20~30代で開始すれば、それだけ受取開始年齢までに積み立てられる元本が多くなるからだ。逆に、50代で始めようと考えている場合は、積立期間が10年に達しないときに受取開始年齢に制限が出ることに留意したい。加入期間に応じた受取年齢の制限は、以下の通りだ。
受取開始可能年齢 | 加入期間 |
---|---|
60歳 | 10年以上 |
61歳 | 8年以上10年未満 |
62歳 | 6年以上8年未満 |
63歳 | 4年以上6年未満 |
64歳 | 2年以上4年未満 |
65歳 | 2年未満 |
例えば、55歳でiDeCoを始めた場合、60歳までの積立期間は5年間だ。上の表に従うと、受取年齢は63歳まで据え置かれることになる。iDeCoでの運用でメリットを得られるのは、40代までと考えたほうがよいだろう。
iDeCoでの収益を最大化するコツ
iDeCoの最大メリットは、さまざまな税制優遇が受けられる点だ。まず、投資時の掛け金は全額所得控除になる。また、分配金などの運用益は非課税だ。さらに、受取時にも一時金の場合は退職所得控除、年金として受け取る場合は公的年金等控除が利用可能。自営業者は、月額6万8,000円まで積み立てが可能と、ほかの職業よりも優遇されているため、節税効果もそれだけ大きくなる。
国民年金での不足分を補うためにも、ぜひ利用すべきだ。iDeCoの運用商品は、保険や定期預金などの「元本確保型」、投資信託などの「元本変動型」の2種類がある。元本確保型は安定感がある一方で、資産形成目的であれば少々物足りないかもしれない。
すでに定期預金などである程度の資産を形成している方であってもiDeCoのメリットはうまく生かしたい。多少のリスクはあったとしても、iDeCoは分配金などの運用益が非課税であるというメリットは大きいだろう。そのため、元本変動型の商品を中心に運用したほうが資産を増やせる可能性は高いといえる。
iDeCoで「守りながら増やす」
iDeCoは、「いくら積み立てるか」「どのような商品で積み立てるか」「どのように受け取るか」をすべて自分でデザインすることができる。ライフタイルにあわせて柔軟な投資が可能な一方で、収益を最大化するための戦略も重要になる。「守りながら増やす」を鉄則に、iDeCoで長期的な資産形成に取り組んでみてはいかがだろうか。(提供:百計オンライン)
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