東京株式市場では、日経平均株価が2月に急落する前の水準を回復するなど、概ね堅調な推移となっています。米国株の安定や円安の進展に加え、3月決算企業等の決算発表の進捗でリスクが取りやすくなってきたことが要因と考えられます。

そんな3月決算企業等の決算発表も、一部の例外を除き5/18(金)までに終了しました。今期(2019年3月期)の新しい業績予想がほぼすべて出揃ったことになりますので、その分銘柄間の比較がしやすくなると考えられます。また、アナリストによる決算発表後の訪問取材や分析も進み、株式市場では選別物色が本格化してくる可能性もありそうです。

そこで「日本株投資戦略」では、仮に「選別物色本格化」となった場合も、投資家の関心を集めやすいとみられる「今・来期大幅増益予想銘柄」にスポットを当て、株価上昇が期待できる銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。

「選別物色本格化」で株価上昇に期待したい「今・来期大幅増益予想銘柄」はコレ!?

日本株投資戦略,来期大幅増益予想銘柄
(画像=PIXTA)

それではさっそく、「今・来期大幅増益予想銘柄」にスポットを当て、株価上昇が期待できる銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみたいと思います。

(1)東証1部に上場する3月決算銘柄であること
(2)時価総額が1千億円超(3/30現在)であること
(3)広義の金融を除くセクターに属していること
(4)業績予想を公表(Bloomberg)しているアナリストが3名以上いること
(5)決算発表日が5/16(水)までの銘柄であること
(6)前期(2018年3月期)の営業利益が黒字で、かつ増益(対2017年3月期)の銘柄であること
(7)今期(2019年3月期の)予想営業増益率が会社予想、市場予想ともに10%以上の銘柄であること
(8)来期(2020年3月期)の予想営業増益率(市場予想)が10%以上の銘柄であること
(9)ほぼ決算発表シーズンに相当する4/20(金)~5/17(木)の株価上昇率が20%未満の銘柄であること

上記のすべての条件を満たす銘柄を、今期(2019年3月期)の予想営業増益率(会社予想・対前期比)が高い順に10銘柄並べたものが表1になります。

このスクリーニングでポイントとなるのはやはり、(7)と(8)であると考えられます。2019年3月期が「今期」、2020年3月期が「来期」となり、ともに予想増益率の条件を10%以上とし「大幅増益予想銘柄」が抽出されるようにしています。なお、会社予想の業績数値を公表していない企業は当然のことながら、選ばれないことになります。また、「来期」(2020年3月期)については、会社予想数値が公表される制度はありませんので、市場予想のみとなります。

なお、前期(2018年3月期)の営業利益が減益等で低い水準になると、その分2019年3月期の予想増益率は高くなりやすいという問題があります。その結果、2019年3月期の予想増益率が高くなった銘柄を「好業績」と表現することは妥当とは言い切れないでしょう。そのため、(6)の条件を付けています。

また、今期(2019年3月期)の予想営業増益率(会社予想・対前期比)が高い銘柄の多くはすでに、株式市場で高評価を得て、大きく株価が上昇しているケースもあります。それらの銘柄はむしろ、当面は利益確定売りが増えるリスクを警戒した方が良いかもしれません。そこで(9)の条件を付けていますが、株価上昇率の制限を何%にするのか、絶対的な条件がある訳ではないので注意が必要です。

日本株投資戦略,来期大幅増益予想銘柄
(画像=SBI証券)

表1:「選別物色本格化」で株価上昇に期待したい「今・来期大幅増益予想銘柄」はコレ!?

コード / 銘柄名 / 株価(5/17) / 騰落率4/20~5/17 / 営業増益率18/3実績 / 営業増益率19/3市場予想 / 営業増益率19/3会社予想 / 営業増益率20/3市場予想
<9064> / ヤマトホールディングス / 3,049 / +5.3% / 2.3% / 75.1% / 62.5% / 29.0%
<6104> / 東芝機械 / 673 / -7.4% / 3.7% / 52.3% / 48.7% / 25.9%
<6967> / 新光電気工業 / 939 / +16.4% / 49.9% / 22.3% / 44.9% / 30.7%
<6754> / アンリツ / 1,488 / +12.3% / 16.0% / 33.1% / 34.4% / 37.9%
<7012> / 川崎重工業 / 3,490 / -1.3% / 21.7% / 34.8% / 34.1% / 13.9%
<7518> / ネットワンシステムズ / 1,819 / +16.2% / 43.4% / 16.5% / 33.5% / 23.7%
<7717> / ブイ・テクノロジー / 26,310 / -8.3% / 131.7% / 28.3% / 31.5% / 18.0%
<9783> / ベネッセホールディングス / 4,045 / +1.6% / 64.3% / 29.9% / 26.7% / 39.9%
<7974> / 任天堂 / 46,580 / +1.5% / 504.7% / 73.8% / 26.7% / 32.5%
<7732> / トプコン / 2,052 / -4.1% / 26.4% / 30.0% / 24.2% / 17.8%

※会社公表データおよびBloombergデータを用いてSBI証券が作成。「市場予想」はBloombergの集計した市場コンセンサス。

抽出された銘柄の投資ポイント

ここでは表1でご紹介した銘柄の一部について、投資ポイントや値動き等についてご説明します。

ヤマトホールディングス <9064> は5/1(火)に決算を発表しました。同社は2017年春から法人顧客と本格的な値上げ交渉を始め、同年10月からは個人向けの運賃も15%値上げしましたが、2019年3月期はその効果がフルで効いてきそうです。 2020年3月期からは宅配荷受けを再び増やす方針と伝えられていますので、増益維持が期待されます。

株価は5/1(火)終値の2,806.5円から5/9(水)に一時3,047円まで8.6%上昇し、その後は利益確定売りに追われました。しかし5/11(金)以降は切り返し、5/16(水)には年初来高値3,058円を示現しています。

日本株投資戦略,来期大幅増益予想銘柄
図1:ヤマトホールディングス(9064)・日足チャート(画像=SBI証券)

東芝機械 <6104> は5/9(水)に2018年3月期の業績を発表し、営業増益を確保しましたが、会社予想を確保できなかったため、翌日5/10(木)に株価は104円安と急落し、5/14(月)には600円の年初来安値を更新しました。

ただ、2019年3月期の予想営業利益は大幅増益の予想です。前期赤字だった「工作機械」が黒字になる予想で、その影響が大きいとみられます。5/16(水)に売買単位の変更や株式併合等を発表。株価はやや戻り歩調にあります。

新光電気工業 <6967> は4/27(金)に決算を発表しました。営業利益は2018年3月期の49億円弱(前期比49.9%)から2019年3月期は71億円(同44.9%増)とさらに拡大する見通し(会社予想)になっています。株価は5/1(火)に103円高と急伸し、翌日には975円の年初来高値を付けましたが、その後は上値が重くなっているようです。

Bloombergデータによると、世界的半導体大手であるインテル向け販売額が売上高に占める比率が大きい企業として当社の他にはイビデン <4062> や東京エレク(8035)等があり、どの企業も今期営業増益予想になっています。世界的なクラウド市場の拡大を背景に、データセンター向けCPUで9割のシェアを有する米インテル社の業績が拡大傾向となっており、その影響を受けていると考えられます。

日本株投資戦略,来期大幅増益予想銘柄
図2:新光電気工業(6967)・日足チャート(画像=SBI証券)

ベネッセホールディングス <9783> は顧客情報漏洩事件の影響で会員数が2016年に243万人(ピーク時の6割)まで落ち込みましたが、その後回復に転じました。拡販の主力戦略について、ダイレクトメールに「原点回帰」したことが要因です。語学事業のリストラにもメドがついてきたようです。

今期(2019年3月期)の会社予想営業利益は160億円(前期比26.7%増)ですが、中期計画の最終年度である2021年3月期には350億円まで拡大させる計画です。

任天堂 <7974> は4/26(木)に決算を発表しました。営業利益は2017年3月期の約294億円から2018年3月期は1,776億円と急拡大。「Nintendo Switch」 のヒットでハードウェア、ソフトウェアともに増加しました。2019年3月期も業績拡大が続く見通しとなっています。

2019年3月期、会社予想の営業利益は2,250億円(前期比26.7%増)ですが、市場予想は3,085億円(同73.8%増)とかなり大きなかい離になっています。「Nintendo Labo」 の発売による小学生を中心としたファミリー層への 「Nintendo Switch」 の普及が見込まれそうです。

株価は年初から「三角保ち合い」の形成に向かうかのような動きになっています。スマートデバイスビジネスの拡大等を通じたさらなる成長シナリオを市場が確認できるか否かが、保ち合い放れの鍵になりそうです。

日本株投資戦略,来期大幅増益予想銘柄
図3:任天堂(7974)・日足チャート(画像=SBI証券 ※図1~図3は当社チャートツールを用い、SBI証券が作成)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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